圧倒的に素晴らしい音楽で殴ってくる
、中川晃教ら出演のミュージカル『D
EVIL』が開幕 舞台写真&オフィシャ
ルレポートが公開

2023年6月22日(木)大阪・シアター・ドラマシティにて、ミュージカル『DEVIL』が開幕し、舞台写真、オフィシャルレポートが届いた。
【STORY】
暗闇と光は一つ。光が強い時暗闇は消え去り、暗闇が深いなら光が眠っている。善良な人間は暗闇を長く耐え切れずに結局光に向かうだろうから……
「人間の心の中の暗闇が光を超えた瞬間世の理は新たに並び替えれなければならない」光と暗闇は本来一つの存在X−WhiteとX-Black。彼らは人間を賭けて勝負を繰り広げる。賭けの対象になった人間ジョン・ファウスト。彼はウォールストリートの前途有望な株式ブローカーで、彼にはいつも彼のそばを守るグレッチェンがいる。しかし株価が大暴落したブラックマンデーの後。すべてが変わることになり・・・すべてを失い、墜落するようなジョンが失意に陥った隙を狙って、彼に接近して誘惑の手を伸ばすX−Black。グレッチェンが引き止めるのにもかかわらずジョンはX-Blackの提案を受け入れ、次第に彼に侵蝕されていく。ジョンが堕ちるほどグレッチェンの心身は疲弊していき最後の善の意志であり、彼の最も大切な存在であるグレッチェンまで無視しようとするジョンの姿を通じて、X−Blackは自分の勝利を確信するようになるが……
韓国で熱狂的な人気を誇るクラシックとロックを融合したミュージカル『DEVIL』日本再演がいよいよ開幕。ミュージカルファンが使う表現で、「音楽で殴る」という言葉がある。これは、圧倒的に素晴らしい音楽が、圧倒的に素晴らしい歌唱で歌われることを指すのだが、まさにこの作品は“音楽で殴ってくる作品”だ。6月22日、大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで開幕したミュージカル『DEVIL』。2014年に韓国で誕生し、その後形態を変え再演を繰り返してきた人気のロック・ミュージカルで、日本では2021年にプレビューコンサートと銘打ち初演。その音楽性の高さに公演直後から“本公演”の実現を望むファンの声が上がっていた作品だ。プレビューコンサートでも好評を博した中川晃教に加え、韓国版オリジナルキャストであるマイケル・K・リー、ハン・ジサン、イ・チュンジュが参加するというスペシャルな形で実現した日本版『DEVIL』、その初日公演の模様をレポートをお届けする。
ウォールストリートで働く株のブローカー、ジョン・ファウストは若いながら多くの顧客を抱え仕事は順調、グレッチェンという恋人もいて人生を謳歌していた。しかしブラックマンデーで世界は一変してしまう。善良な人々が苦しむ状況に絶望するジョンを、X-WhiteとX-Blackという二つの存在が見つめる。X-Blackはジョンに一つの提案を持ちかけるが……。ジョンに手を差し伸べる存在は神か悪魔か、そしてジョンが救いを求める相手はX-WhiteかX-Blackか? ゲーテの『ファウスト』をベースに、人間の内なる善と悪、神と悪魔といったテーマを、ロックとクラシックが融合する音楽の中に描き出していく。
ロックサウンドがガンガン鳴り観る者の気持ちを高揚させたかと思えば、宗教音楽のような崇高な音色が穏やかに流れる。どの曲も技巧的でありながら美しく、耳に残るキラーソングばかり。その多彩な音楽が観客を酔わせる。楽曲は大まかにはロックとクラシックに分けられ、これは物語のモチーフである善と悪、明と暗といった二面性を音楽面でも表現していることが、頭ではなく体感として伝わってくる。畳みかけてくる良質な音の洪水に、斜めにそびえたつ大きな十字架が印象的なゴシック調の舞台美術、鋭く鮮やかに照らす照明があわさり、ミュージカルでありながらライブやコンサートのような熱狂が生まれている。
そしてそれを歌いこなすキャストの実力よ! 初日キャストはX-Whiteに中川晃教、X-Blackにイ・チュンジュ、グレッチェンにAKANE LIV、ジョンに大山真志、ジョンの影に東山光明。圧倒的な“聖性”を持つ中川の声はまるで天から降り注ぐかのように神々しく、X-Blackのイ・チュンジュは魔性たっぷりに惑わせたかと思いきやロックスターのようなギラつきで客席を沸かせる。ジョンの大山はよく伸びる声でロック歌唱をカッコ良く決め、AKANE LIVはX-Blackに賭けの対象にされるグレッチェンの不安定さを、乱高下する音の芯を捉え確実に表現していく。また、今回の日本版では“ジョンの影”という役どころが新しく増え、ジョンの内心の葛藤や欲望を見せていくのが面白いところ。これにより、物語のテーマである“二面性”がより強調された。東山のパッション溢れる歌唱も気持ち良い。
さらに全編を通して音楽を支えているシンガーたち(山野靖博、石川新太、伊藤広祥、ラリソン彩華、町屋美咲、橘未佐子、久保佳那子)が素晴らしい。正直なところ歌の上手さに定評のある韓国ミュージカル界から、しかもトップクラスの人気俳優たちが来日するとあって、日本勢大丈夫か……? と思ったりもしたが、それはまったくの懸念であったし、その音楽のクオリティの高さを支えているのは、確実にこのシンガーたちの存在である。
物語は欲望と理性のバランスや、正義とは何かといった人間をとりまく普遍的テーマに、哲学やキリスト教の教義といった角度から迫ったものであり、心に刺さる深淵な台詞に満ちている。あるいはシェイクスピアのモチーフなども物語の随所に読み取ることもできそうで、いくらでも深掘りできそうな奥深さがある。だがまずは存分に“音楽に殴られる”経験を味わってほしい。それはあなたにとって、幸せな体験になるだろう。
キャストはほか、X-White(Wキャスト)にマイケル・K・リー、X-Black(トリプルキャスト)にハン・ジサンとチェ・ミヌ、ジョン(トリプルキャスト)に東山光明とチェ・ミヌ、ジョンの影(Wキャスト)に大山真志。大阪公演は同劇場にて、6月29日(木)まで。その後7月8日(土)・9日(日)にところざわサクラタウン、7月11日(火)から16日(日)までヒューリックホール東京にて上演される。チケットはいずれも発売中。
取材・文:平野祥恵

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