【藤川千愛 インタビュー】
どの曲もシングルカット
できるくらいの気持ちで作った
照れ臭くて言いにくいことでも、
嬉しい声はどんどん言っていきたい
「面倒な女」はスタイリッシュかつ透明感のある楽曲にシニカルな歌詞と歌を乗せて、少し尖りも感じさせるという独自の世界を作っていることに衝撃を受けました。藤川さんはお洒落な曲だからお洒落な歌詞にしようという思考ではないんですね。
これも詞先なんです。だから、すごいのは私じゃなくて、曲を作ってくださった竹田祐介(Elements Garden)さんです(笑)。最初に曲を聴いた時は“こう来たか!”と思いましたね。だけど、このアルバムの中で一番自分らしい曲だと思っています。
順序立ててお訊きしますが、まず最初に歌詞を書かれたんですね?
はい。最近の若者たちの何でも形容詞で完結させようとする会話とか、何でも肯定しよう、とりあえず肯定して距離を詰めようとすることとかに、ちょっと違和感を感じていて。ネガティブな言葉とか、普通だったら言い合えないようなことでも口に出すことで、むしろそのほうが分かり合えると思うんですよ。
“喧嘩するほど仲がいい”というのは、お互いに腹を割っているからですよね。何でも肯定する関係性は平和ですが、腹は割っていないと思います。
そういうのって寂しいですよね。思っていることがあるなら本人に言えばいいと思う。でも、今はそういう考え方はなかなか受け入れられない時代で、こういう話を友達にした時に“面倒だね”と言われたんです。生きづらそうだって。確かに生きづらくはあるけど、もったいないと思うんです、上辺だけのコミュニケーションの仕方は。だから、時間がかかってもいいから心に一番近い言葉で距離を縮められたらいいなと思っていて、「面倒な女」はそういうことを歌っています。
それを説教口調で訴えたりするのではなく、少しシニカルかつあっけらかんと書くことで、“いえ、正しいのはあなたです!”と感じる歌詞になっています。では、この曲の歌に関してはいかがでしたか?
楽曲と歌がミスマッチという話が出ましたけど、私はこういう曲は苦にならないんです。この曲はこういうふうに歌いたいと最初に思って、そこから変わっていなくて、録るのも早かったですね。今回の中では、この曲が一番早かったです。
すごい…。こういう表情の歌にしようと思って作り込むのではなく、フラットな感覚でこういう歌が歌えるというのは大きな武器ですね。そして、続く「スローモーション」はまたカラーが違っていて、アッパー&クールなロックチューンという。
この曲が一番迷いました。Elements Gardenの藤永龍太郎さんが私のライヴに来てくださった時に、“次回のアルバム曲にも盛り上がる曲が欲しいですね”という話になり、会場のみんなと一緒に歌ったりできるような曲が欲しいということで作っていただいた曲なんですけど、ちょっと今までにない感じなので歌い方について結構悩みました。
クールな歌中と浮遊感を湛えたサビの取り合わせが絶妙です。歌に加えて、意味よりも言葉の響きや語感、リズムなどを重視した感のある歌詞も新鮮です。
そういうことを意識していたし、サビもみんなで歌うことを想定して作ったので、ライヴでみんなと完成させたい曲になりましたね。ライヴで演奏するのが楽しみです!
サビの《結果はどうあれ我を誇れ/果てない悩みは笑い飛ばせ》といった言葉を大声で歌うと気持ちが上がることは間違いないです。さて、今作は藤川さんの個性やセンスが色濃く反映された一作になりました。センスと言えば、スタイリッシュかつ陰りを帯びた世界観のアルバムに、“嬉しい声をほんのちょっと”という柔らかみのあるタイトルをつける辺りにもセンスの良さを感じます。
2曲目の「君の匂いは鎮静剤」に《嬉しい声をほんのちょっと》というフレーズがあって、そこから持ってきたんですけど、この言葉が今の自分の気分にぴったりだと思ったんです。例えば美味しいものを食べた時に黙々と食べるよりも、“美味しい!”って言って食べたほうが一緒に食べている人も作ってくれた人もハッピーな気持ちになりますよね。そういうところから、照れ臭くて言いにくいことでも、嬉しい声はどんどん言っていきたいと思って。言葉であったり、音であったり、みんながそれでハッピーになればいいと思って、このタイトルにしました。
アルバムタイトルも、ご自身で決められたんですね。プロデューサーやディレクターなどに言われるままに歌うようなパターンではなく、細部までこだわることで藤川さんの個性が味わえると同時に、非常に良質な作品に仕上がっています。
ありがとうございます。作品を作る時に“こんなもんでいいでしょう”みたいな姿勢というのは、私の中ではあり得ないですね。音楽に関しては妥協できない。でも、いいと言っていただける作品を作ることができるのは藤永さん、竹田さん、近藤さんのおかげです(笑)。
もちろん彼らの力もありますが、藤川さんが膨大なエネルギーを費やしたことはアルバムを聴くと伝わってきます。そして、同作のリリースを記念して4月29日に新宿BLAZEでワンマンライヴを開催されることもアナウンスされています。
『嬉しい声をほんのちょっと』の全曲を披露します。私自身はめっちゃ大変ですけど(笑)。でも、コロナ禍も明けてきて声出しができると思うので、アツいライヴにしたいですね。みんながいないと成立しない曲も作ったから、お客さんと一緒に一体感にあふれた空間を作ることを楽しみにしています。
取材:村上孝之
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ミニアルバム『嬉しい声をほんのちょっと』2023年4月12日(水)発売
日本コロムビア
- 【初回限定盤】(CD+Blu-ray)
- COZP-1982~3
- ¥5,000(税込)
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- 【通常盤】(CD)
- COCP-41986
- ¥2,000(税込)
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『FujikawaChiai LIVE 2023 「嬉しい声をほんのちょっと」』
フジカワチアイ:1995年6月6日生まれ。日常の鬱憤や葛藤から恋心までを独自のユニークな視点で歌う岡山県出身のシンガーソングライター。19年5月に1stアルバム『ライカ』をリリースし、20年1月にはBUCK-TICKトリビュートアルバムに“minus(-) featuring 藤川千愛”として参加。また、19年11月より4カ月連続でシングルを配信し、20年4月にそれらを収めた2ndアルバム『愛はヘッドフォンから』を、22年4月にはミニアルバム『ちょっとそこまで昨日を迎えに』を発表。23年4月にはTVアニメ『マホームヒーロー』オープニングテーマを含むミニアルバム『嬉しい声をほんのちょっと』、 同年11月にフルアルバム『内の臓 が愚痴をこぼすもので』をリリース。藤川千愛 オフィシャルHP
「愛の歌」MV
「ちゃんとした人不適合者」LyricVide
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ミニアルバム
『 嬉しい声をほんのちょっと』
全曲紹介