「こんな奇跡を見させていただけるこ
とが本当に幸せです」Survive Said
The Prophet、万感のツアーファイナ
ルをレポート

Survive Said The Prophetの全国ツアー「Hateful Failures Tour」が12月20日、東京・EX THEATER ROPPONGIにてファイナルを迎えた。今回のツアーは10月12日にリリースされた6枚目のアルバム「Hateful Failures」を携え、10月21日の金沢・EIGHT HALLを皮切りに全国11会場で実施。現在進行形で進化を続けるサバプロの旬な姿を見届けようと、会場には大勢のオーディエンスが集結した。
オープニングSEとして「Hateful Failures Pt.1」が流れる中、メンバーが1人、また1人とステージに姿を現し、最後にYosh(Vo)が登場して腕を高く掲げると同時に、ギターのフィードバックノイズがけたたましく鳴り響く。そしてYoshの「東京、ブチ上げていこうかー!」を合図に「Mary」からライブをスタートさせた。前のめりなバンドアンサンブルを前に、フロアの熱気も急上昇。シンガロングパートでは一緒に歌えないものの、代わりに拳を上げるなどしてバンドの熱に応えていく。
そのまま最新アルバム「Hateful Failures」同様、「Drive Far」「Beauty Queen」と新たなキラーチューンを連発されると、会場の盛り上がりはさらに加速。観客もクラップや腕を上下にバウンスさせるなど、思い思いのアクションでグルーヴィーなバンドサウンドに身を委ねていく。バンドとオーディエンスの信頼関係が伝わるこの光景を前に、たった3曲ながらもこの日のライブが成功だと確信した者も少なくなかったはずだ。

「しっかりルールを守って、やれることをやって帰れよ!」と観客を労うYoshの言葉に続いて、バンドは初期のナンバー「I don't care」を繰り出す。ザクザクとしたギターリフの切れ味の気持ちよさとキャッチーなメロディラインの即効性は抜群で、改めてこの時期の楽曲も最新作と地続きであることに気付かされる。その後も、激しく点滅する照明演出が楽曲の魅力を増幅させた「Win / Lose」、軽やかなピアノリフにTatsuya(Gt)&Ivan(Gt)のギターフレーズが絡み合う「The Happy Song」、ヘヴィなビートを叩き出しながらも激しいスクリームも交えるShow(Dr)の姿が印象的な「Papersky」、Yoshのエモーショナルなボーカルとカオティックなバンドアンサンブルが唯一無二の世界観を描き出す「found & lost」と、新旧の人気曲を立て続けに演奏して、ステージとフロアの距離をどんどん縮めていった。
ライブ中盤になると、Yoshの「ロックにはいろんなスタイル、いろんな形があって、それがロックの素晴らしさだと思っています」という言葉とともにアコースティックパートに突入。アコースティックギターの繊細さが新たな魅力を引き出す「S P I N E」、歌詞のメッセージ性がより強く響く形に進化した「Mukanjyo」は観客からも好意的に受け入れられ、サウンドに乗せて体を揺らせるなど、リラックスしながら楽しんでいる様子が伺えた。
そんなゆったりした空気感も、続く「Hopelessly young」で一変。ダイナミックなバンドサウンドで再び熱量を高めると、Yoshの「東京、踊る準備はできているかい?」の呼びかけに続いて「HI|LO」に突入。リズミカルなビートに浮遊感の強いギターフレーズ、そしてキャッチーなメロディが重なることで、独特のグルーヴ感が生み出され、フロアは熱狂の渦に包まれていく。さらに、大きなノリを持つ「Right and Left」ではビートに合わせて、オーディエンスが飛び跳ねる一幕もあった。

そんな盛り上がりを見せるも、アルバム「Hateful Failures」でもクライマックスに配置されたインスト曲「 Hateful Failures Pt.2」が流れ出すと、再び場の空気がひんやりとしたものに変化。すると、力強くタイトなビートがそれまでの荘厳な雰囲気を断ち切り、ドラマチックな「624」でエモーショナルさが再加速する。静と動の対比が印象的な演奏と、闇と光を効果的に使い分けた照明演出と相まって、会場の熱量は徐々にピークへと近づいていく。そこから「Fool’ s gold」を経て、Yoshが「東京、ファッキンジャップぐらいわかるよな?」と煽ると、次に何が演奏されるのか理解したオーディエンスは腕を力強く上げ、豪快さと爽快感が共存する「T R A N S l a t e d」でクライマックスを迎えた。
最後の曲に入る前に、Yoshは今年1年を振り返りながら「僕らに拍手という形でご褒美をいただけて、何より幸せです」と感謝の言葉を口にすると、客席からは盛大な拍手が湧き起こる。そして、「こんな奇跡を見させていただけることが本当に幸せです。皆様の人生に引き続き祝福があることを願って」というメッセージに続いて、アルバム「Hateful Failures」のラストを飾る「Prayer」を披露。Tatsuyaが弾く繊細なピアノとともに、Yoshのシンガー/表現者としての力量を再認識させられる「Prayer」は、曲が進むにつれてShowの豪快なドラム、Ivanの情熱的なギターが重なっていく。こうした曲構成と、最初は薄暗い照明が徐々に明るさを増していく演出は、闇の中から明日に向けて手を伸ばして希望を掴み取るようなイメージと重なる。そんなポジティブな空気を漂わせながら、ライブ本編は叙情的なピアノフレーズとともに終了した。

ライブ定番曲を交えながらも、最新アルバム「Hateful Failures」を軸にひとつの物語を紡いでいくような本編を経て、アンコールではポジティブな空気に満ち溢れた「When I」で、バンドとオーディエンスがこの空間を共有できる喜びを再確認して、ツアーファイナルは終了。しかし、バンドがステージから去ってもアンコールを求めるクラップは鳴り止まず、むしろどんどん大きくなっていく。これに応えるようにステージに再登場したYoshは、「ガチャガチャする準備はいいか?」と「Network System」をプレゼント。フロアからはもちろん、ステージ上の4人からも自然と笑みが溢れ、最高の一体感が得られたところで「Hateful Failures Tour」最終公演は大成功のうちに幕を下ろした。
文/西廣智一 Photo by 西槇 太一

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