身も心も踊りだす!森公美子&朝夏ま
なとがWキャストで贈るとびきりハッ
ピーになれるミュージカル『天使にラ
ブ・ソングを~シスター・アクト~』
観劇レポート

ミュージカル『天使にラブ・ソングを〜シスター・アクト〜』が2022年11月13日(日)に初日を迎え、東京・東急シアターオーブにて絶賛上演中だ。
ウーピー・ゴールドバーグ主演の大ヒットコメディ映画『天使にラブソングを…』(1992年)を基に、アラン・メンケンが全曲書き下ろしでミュージカル化した本作。日本では2014年初演、2016年、2019年、そして今回の2022年と再演を重ねながら着々と作品ファンを増やしてきた。
日本初演から演出を務めるのは、『ダンス オブ ヴァンパイア』『ラ・カージュ・オ・フォール』などミュージカルコメディで手腕を発揮する山田和也。主演のデロリスは初演から続投の森公美子と、前回公演から続投する朝夏まなとのWキャスト。カーティスは大澄賢也と吉野圭吾のWキャストとなる。強力な新キャストも続々加わりパワーアップした本作は、日本全国にシスター・アクト旋風を巻き起こすに違いない。
本記事では、2022年11月14日(月)夜(森公美子&大澄賢也)と11月15日(火)昼(朝夏まなと&吉野圭吾)の公演の模様を合わせてレポートする。
舞台は1977年のアメリカ・フィラデルフィア。自由奔放に生きるデロリス・ヴァン・カルティエは、いつかスター歌手になることを夢見て今日もクラブで歌う。ところがある晩、デロリスはギャングのボス・カーティスが部下を銃殺する現場を目撃。自身の愛人でもあるカーティスに命を狙われることになってしまった彼女は慌てて警察へ駆け込み、そこで高校時代の同級生 “汗っかきエディ”と再会する。エディ巡査の提案により、カトリックの修道院でシスター・メアリー・クラレンスとして身を潜めることになるデロリス。しかし、シスターとしての生活はこれまで彼女が生きてきた自由な日々とは程遠いものだった……。
全編を通して笑いあり涙ありのハートフルな物語。価値観の異なる人間同士が、互いに少しずつ歩み寄ることで絆が生まれる過程が実に丁寧に描かれている。物語を紡ぐのは、ディスコミュージック全盛期を彷彿とさせるソウルフルなナンバーの数々。観客はたちまち物語に引き込まれ、気付けばシスターたちと共に身も心も踊りだしてしまう。
そんなとびきりハッピーなミュージカルでデロリスを演じ続けるのは、森公美子。森は唯一無二の存在感で人情味溢れるデロリスを体現。ゴスペルナンバーをはじめとする大迫力の歌唱も聴き応えたっぷりだ。法王パウロ6世の前で歌うことが決まり、緊張で眠れなくなってしまったシスターたちをあたたかく包み込む姿は頼もしいの一言。チャーミングで包容力のある森のデロリスは、時折見せるあっけらかんとした表情さえ愛嬌があり、持ち前のコメディエンヌっぷりを惜しみなく披露していた。
今回で二度目のデロリス役に挑む朝夏まなとは、舞台上に現れるやいなやスターオーラ全開。眩しい笑顔と躍動感溢れる美しいダンスで客席を魅了する。一幕後半、デロリスが聖歌隊に加わりみるみるシスターたちをまとめあげる見せ場では、底抜けの明るさを振りまきながらダイナミックな脚上げで本領発揮。歌声も前回公演から確実にパワーアップしており、ここぞというときに突き抜ける高音が爽快だ。感情表現豊かで姉御肌なデロリスを、心に響く飾らない芝居で真摯に演じきっていた。
修道院で慎ましく暮らす個性豊かなシスターたちからも目が離せない。
谷口ゆうな演じる好奇心旺盛なシスター・メアリー・パトリックは、朗らかな笑顔がキュートな中堅シスター。初対面のデロリスにも物怖じせず歩み寄り、デロリスとシスターたちが会話をするきっかけを作ってくれる存在だ。

思わず守ってあげたくなる“小さな天使”のような見習い修道女のシスター・メアリー・ロバートを演じたのは、真彩希帆。狭い世界の中で自分を信じることを知らなかった彼女が、デロリスとの出会いを通じて新たな人生への一歩を踏み出す姿はグッとくるものがある。随所で見られる小動物のような愛くるしい仕草や、物語後半での圧倒的な歌声に心掴まれた人は少なくないだろう。
お局的存在のシスター・メアリー・ラザールスは、春風ひとみに代わり桜雪陽子が見事に代役を務め上げた。新入りのデロリスに聖歌隊の指揮者の座を渋々明け渡すものの、その後は激しいロックンロールやラップを披露するなど意外な才能を発揮して客席を大いに盛り上げてくれる。
本作の要となるのは、日本初演から修道院長を演じ続けてきた鳳蘭だ。修道院長は伝統と規律を重んじ、堕落した俗世界を毛嫌いしている。しかし彼女の言葉にはユーモアが溢れ、そのあまりに的確な台詞の間合いに客席ではクスクスと笑い声が漏れる。飄々としていて抜け目ないオハラ神父(太川陽介)とのやり取りも微笑ましい。鳳は、デロリスのことをなかなか受け入れられない修道院長の心の機微を的確に表現し、人間味のある人物を構築していた。
それぞれの思惑でデロリスを追いかけ続ける男性陣も紹介したい。
高校時代にデロリスに想いを寄せていた純情な警察官エディを演じるのは、石井一孝。周囲から“汗っかきエディ”とからかわれ続ける彼だが、「愛する人のためならトラボルタにだって俺はなれる」と情熱的に歌い上げる哀愁漂うナンバーには思わずホロリときてしまう。少々頼りないところはあるが、彼なりに全力でデロリスを守ろうとする姿は応援したくなる。
殺人現場を目撃したデロリスを殺そうと執拗に追いかけ回すのは、冷徹なギャングのボス・カーティス。初演から続投の大澄賢也は鋭い眼光をギラギラとさせながら、キレのある身のこなしや時々見せるお茶目な動きで観客を引き込む。一方、ヒール役に定評のある吉野圭吾はドスの利いた声や深く甘い声を使い分け、色気たっぷりのセクシーなカーティス像で魅せた。
カーティスの子分3人組は愛すべきおバカっぷりを発揮。カーティスの甥っ子でもあるTJ(泉見洋平)は末っ子気質の甘えん坊だが、ソロ歌唱では美しいハイトーンボイスを響かせる。リーダー格のジョーイ(KENTARO)は強面なのにどこか抜けているところがあって憎めない。彼のどっしりとした重低音が3人のハーモニーをさらに心地良いものにしてくれる。甘いマスクのパブロ(木内健人)は一見イイ男なのだが、口を開くと出てくるスペイン語訛りのためにどうしてもかわいさが勝ってしまうのが悩ましい。
大盛りあがりの観客参加型のカーテンコールでは、パブロとジョーイがダンスレクチャーをしてくれる。勇気を出して踊れば「みんなセクスィーだよ!」とパブロが褒めてくれるかもしれない。
上演時間は約3時間(25分の休憩含む)。東京公演は東急シアターオーブにて12月4(日)まで上演される。その後は大阪、広島、愛知、福岡、長野と全国を巡り、2023年1月22日(日)にホクト文化ホールにて大千穐楽を迎える予定だ。
デロリスとシスターたちが絆を育み成長する姿に胸打たれながら、同時に音楽の歓びを全身で浴びることができる極上のエンターテインメントをぜひ劇場で体験してほしい。
取材・文=松村 蘭(らんねえ) 写真提供=東宝演劇部

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