映画『ホットロード』公開直前!! 三
木孝浩監督インタビュー
原作は、1986~87年にかけて、『別冊マーガレット』(集英社)で連載された同名漫画。複雑な家庭環境の下で、母親に反発し非行に走る少女・宮市和希(能年)と、不良チームの少年・春山洋志(登坂)との純愛を瑞々しく描いたこの作品は、全4巻での累計発行部数が700万部を超え、当時の少女たちに絶大な人気を博した。
本作のメガホンをとったのは三木孝浩監督。これまでにも『ソラニン』(2010年)、『僕等がいた』(2012年)などで、揺れる若者の青春を描いた作品を世に送り出し、高い評価を得てきた。
三木監督は、原作が内包する恋愛や家族といったテーマを、どのように描こうと思ったのだろうか。今回、その思いに迫った。
――三木監督は、『ホットロード』の原作が連載されている時は読まれていましたか?
当時から、まわりの女子たちに絶大な人気の漫画ということは聞いていたんですが、今回の映画を撮るまでは読んだことがなかったんです。周りにいる同世代の女性陣に「今度ホットロードの映画をやるんだよ」と話した時、「本当に? ホットロードやるの!?」と、これまでとは全く違う熱量のリアクションがあって驚きましたね。当時の「バイブル」だというのはそういうことかと、実感しました。「これはすごい」と思うと同時に、期待の高さに「まずいな」と言う気持ちも生まれて(笑)、身が引き締まる思いでしたね。
――今回、映画を撮影するにあたって原作を読まれた感想はいかがでしたか?
凄くフレッシュに感じましたね。携帯電話がない時代のコミュニケーションの取り方だったり、会えないからこそ相手を思う強さだったり。現代の子たちの恋愛も撮ってきましたけど、当時だからこそあった2人のあり方が、新鮮でしたね。
それに、和希と春山の恋愛もそうですけど、和希と母親のコミュニケーションが丁寧に描かれていて、母親が母親になるまでの物語でもあるし和希が娘になるまでの物語でもあるんですよね。それは僕が親世代になったからだということもあるかもしれませんけど、そこにすごく魅力を感じました。
――作中では、2人の恋愛と合わせて、和希と母親のシーンも濃密に描かれていますが、ここには監督の思いもあったのでしょうか
そうですね。今なぜ『ホットロード』を映画化するのかと考えた時に、僕は当時読んでいたファンの方も大事な部分を占めていると思うんです。ちょうど連載当時に原作を読んで和希に共感した10代の女の子が、いま子供を持つ母親の世代になっています。この物語を改めて見直すときに、和希側はもちろん、母親側からもリアルに見えて来ると思うんです。その意味で、母と娘のシーンを濃く描いた部分はあるかもしれません。原作を読んでいた母親とその娘さんが一緒に見てくれたら嬉しいですね。
――今回、脚本・監修には原作の紡木たく先生が関わられていますね
紡木先生とは、原作の舞台でもある江の島でお会いした時に、「ここが春山たちが喧嘩した場所で」とか「和希がよりどころにしていた堤防はここで」というように、一緒にロケ地めぐりをして説明してくれたんです。そこで、場所そのものにすごく思い入れがあって、物語が成立しているんだと分かったことで、その風景や空気感を大事にしたいという思いが生まれましたね。
――主要キャストを演じる能年玲奈さんと登坂広臣さんが、公開前から注目を集めました
2人のキャスティングに関しては、紡木先生もお墨付きだったそうです。僕はこの企画を頂いたのが『あまちゃん』が始まる前だったので、まだ映像作品にそれほど出演していなかった能年さんと、演技をしたことがない登坂さんに和希と春山を任せたいという先生の思いに、当初驚きました。
――撮影に当たって、演技についてお二人に伝えしたことはありましたか?
紡木先生が「そのままの二人で良い」とお話しされてたので、僕は変に色付けするのではなく、本来持っている良さを引き出したいなと思いましたね。
印象的だったのが、能年さんは、『あまちゃん』で活発なイメージがありますけど、お会いしてみるとすごく大人しくて、じっと人を見据える瞳の奥底に世界がある感じなんですね。内に秘めたものが大きい人だなと。紡木先生は彼女の「まなざしを撮ってほしい」とおっしゃってたので、そこに引かれた部分が大きいんだろうなと思いましたね。
――作中では、二人の掛け合いも魅力ですが、実際の現場はいかがでしたか?
そうですね、面白かったのは、まだ経験の浅い二人なので、最初のリハーサル辺りはお互い照れながらだったことですね(笑)。でも、そんな二人のお芝居的な成長となぞらえて映画が取れたのは凄く良かったなと思います。原作も出会いでいきなりぶつかって、次第に関係が深まっていきますが、実際の撮影でも、お互いの表情や瞳がだんだん変化し、柔らかくなっていったので、物語と連動しているなと思いましたね。
――実際、能年さんが髪の毛を茶髪に染めるという外見上の変化もありましたが、現場のみなさんはどんな反応でしたか
本人が一番ドキドキしてましたね(笑)。今まで1回も染めたことがなかったので、「どういう気持ちで染めるんだろう」と、色々想像したみたいです。今は反抗心とかでもなく、髪を染めますよね。なので、初めて染める能年さんだからこそ感じる抵抗や、そこで生まれてくる感情は良いなと思いましたね。
――本作では、主題歌として尾崎豊さんの『OH MY LITTLE GIRL』がとても印象的ですね。尾崎さんを選んだ経緯はどのようなものだったのですか
今の10代とあの頃の10代を「音楽で貫く」にはどうすればよいか、同じ曲を聞いて同じ気持ちになれるアーティストは誰か、と考えたとき、尾崎豊さんしか思いつかなかったですね。ともすると、昔の曲はただの懐メロに聞こえてしまうこともあるんですけど、今の10代の人たちが初めて尾崎さんの曲を聞いた時にも、当時の僕らが初めて聞いた時と同じように感じられる普遍性があると思ったんです。
――それでは最後に、読者へ向けてメッセージをお願いします
この映画は、和希と春山の物語であるとともに、和希の母親も含めた親子の物語でもあります。そのトライアングルの中で、感じ取ってもらえるものがあると思います。是非、映画をご覧になって見てください!
本作のメガホンをとったのは三木孝浩監督。これまでにも『ソラニン』(2010年)、『僕等がいた』(2012年)などで、揺れる若者の青春を描いた作品を世に送り出し、高い評価を得てきた。
三木監督は、原作が内包する恋愛や家族といったテーマを、どのように描こうと思ったのだろうか。今回、その思いに迫った。
――三木監督は、『ホットロード』の原作が連載されている時は読まれていましたか?
当時から、まわりの女子たちに絶大な人気の漫画ということは聞いていたんですが、今回の映画を撮るまでは読んだことがなかったんです。周りにいる同世代の女性陣に「今度ホットロードの映画をやるんだよ」と話した時、「本当に? ホットロードやるの!?」と、これまでとは全く違う熱量のリアクションがあって驚きましたね。当時の「バイブル」だというのはそういうことかと、実感しました。「これはすごい」と思うと同時に、期待の高さに「まずいな」と言う気持ちも生まれて(笑)、身が引き締まる思いでしたね。
――今回、映画を撮影するにあたって原作を読まれた感想はいかがでしたか?
凄くフレッシュに感じましたね。携帯電話がない時代のコミュニケーションの取り方だったり、会えないからこそ相手を思う強さだったり。現代の子たちの恋愛も撮ってきましたけど、当時だからこそあった2人のあり方が、新鮮でしたね。
それに、和希と春山の恋愛もそうですけど、和希と母親のコミュニケーションが丁寧に描かれていて、母親が母親になるまでの物語でもあるし和希が娘になるまでの物語でもあるんですよね。それは僕が親世代になったからだということもあるかもしれませんけど、そこにすごく魅力を感じました。
――作中では、2人の恋愛と合わせて、和希と母親のシーンも濃密に描かれていますが、ここには監督の思いもあったのでしょうか
そうですね。今なぜ『ホットロード』を映画化するのかと考えた時に、僕は当時読んでいたファンの方も大事な部分を占めていると思うんです。ちょうど連載当時に原作を読んで和希に共感した10代の女の子が、いま子供を持つ母親の世代になっています。この物語を改めて見直すときに、和希側はもちろん、母親側からもリアルに見えて来ると思うんです。その意味で、母と娘のシーンを濃く描いた部分はあるかもしれません。原作を読んでいた母親とその娘さんが一緒に見てくれたら嬉しいですね。
――今回、脚本・監修には原作の紡木たく先生が関わられていますね
紡木先生とは、原作の舞台でもある江の島でお会いした時に、「ここが春山たちが喧嘩した場所で」とか「和希がよりどころにしていた堤防はここで」というように、一緒にロケ地めぐりをして説明してくれたんです。そこで、場所そのものにすごく思い入れがあって、物語が成立しているんだと分かったことで、その風景や空気感を大事にしたいという思いが生まれましたね。
――主要キャストを演じる能年玲奈さんと登坂広臣さんが、公開前から注目を集めました
2人のキャスティングに関しては、紡木先生もお墨付きだったそうです。僕はこの企画を頂いたのが『あまちゃん』が始まる前だったので、まだ映像作品にそれほど出演していなかった能年さんと、演技をしたことがない登坂さんに和希と春山を任せたいという先生の思いに、当初驚きました。
――撮影に当たって、演技についてお二人に伝えしたことはありましたか?
紡木先生が「そのままの二人で良い」とお話しされてたので、僕は変に色付けするのではなく、本来持っている良さを引き出したいなと思いましたね。
印象的だったのが、能年さんは、『あまちゃん』で活発なイメージがありますけど、お会いしてみるとすごく大人しくて、じっと人を見据える瞳の奥底に世界がある感じなんですね。内に秘めたものが大きい人だなと。紡木先生は彼女の「まなざしを撮ってほしい」とおっしゃってたので、そこに引かれた部分が大きいんだろうなと思いましたね。
――作中では、二人の掛け合いも魅力ですが、実際の現場はいかがでしたか?
そうですね、面白かったのは、まだ経験の浅い二人なので、最初のリハーサル辺りはお互い照れながらだったことですね(笑)。でも、そんな二人のお芝居的な成長となぞらえて映画が取れたのは凄く良かったなと思います。原作も出会いでいきなりぶつかって、次第に関係が深まっていきますが、実際の撮影でも、お互いの表情や瞳がだんだん変化し、柔らかくなっていったので、物語と連動しているなと思いましたね。
――実際、能年さんが髪の毛を茶髪に染めるという外見上の変化もありましたが、現場のみなさんはどんな反応でしたか
本人が一番ドキドキしてましたね(笑)。今まで1回も染めたことがなかったので、「どういう気持ちで染めるんだろう」と、色々想像したみたいです。今は反抗心とかでもなく、髪を染めますよね。なので、初めて染める能年さんだからこそ感じる抵抗や、そこで生まれてくる感情は良いなと思いましたね。
――本作では、主題歌として尾崎豊さんの『OH MY LITTLE GIRL』がとても印象的ですね。尾崎さんを選んだ経緯はどのようなものだったのですか
今の10代とあの頃の10代を「音楽で貫く」にはどうすればよいか、同じ曲を聞いて同じ気持ちになれるアーティストは誰か、と考えたとき、尾崎豊さんしか思いつかなかったですね。ともすると、昔の曲はただの懐メロに聞こえてしまうこともあるんですけど、今の10代の人たちが初めて尾崎さんの曲を聞いた時にも、当時の僕らが初めて聞いた時と同じように感じられる普遍性があると思ったんです。
――それでは最後に、読者へ向けてメッセージをお願いします
この映画は、和希と春山の物語であるとともに、和希の母親も含めた親子の物語でもあります。そのトライアングルの中で、感じ取ってもらえるものがあると思います。是非、映画をご覧になって見てください!
GREE ニュース