KIRITO

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【KIRITO インタビュー】
表現者としての充実感は
今までで一番大きかった

KIRITOという器に細胞が移ったことで
ストーリーは続いていく

『NEOSPIRAL』の前半に入っている「ANTI-MATTER」や「Discord」「VICTIM」などはヘヴィであると同時に美しさを湛えていることが印象的ですが、ヘヴィチューンの中で印象の強い曲を挙げるとしたら?

サウンド的には1曲目の「テロメア」から聴いている人にひっくり返ってもらおうかなという意識がありましたね。いきなり重いパンチを浴びせるみたいな。「テロメア」は歌詞もストーリー的な面でいろいろなことが暗示されているし。実は“テロメア”という言葉は『CIRCLE』の1曲目の「COUNTDOWN」という曲に入っていて、ストーリーはそこからつながっているんです。生き物は細胞分裂を繰り返して歳をとっていくわけですけど、テロメアは“細胞の時限爆弾”と呼ばれていて、細胞分裂の限界が訪れた時に肉体は死を迎えるんですね。だけど、今回の「テロメア」はひとつの肉体が死ぬ時に細胞自体が次の宿主を探して肉体から離れてしまったということを言っていて。ちょっとSF的な話だけど、それは僕にとってはAngeloという器からKIRITOという器に細胞が移ったことによってストーリーは続く…ということを表しているんです。『CIRCLE』というアルバムは、上から見たら平面的な円なんですよ。当時は“円の起点と終点はぶつかるわけではなくて続くんだ”ということを言っていたけど、それがどういう意味かというと、その円を立体にして横から見ると螺旋だったということ。ストーリーは円を描きながら続いていくし、螺旋は人間の染色体であって、細胞である。そういう意味で、アルバムのタイトルを“NEOSPIRAL”にしたんです。

いつもながら深いですね。歌詞に関しては「テロメア」は“神の思惑によるブラックアウト”という黙示録的な雰囲気があって、そんな世界観のアルバムなのかなと思いましたが、曲によっていろいろなテーマで書かれていますね。

過去の作品もそうだけど、自分の中の普遍的なテーマとして、どこかで聖書だったり、黙示録だったり、運命的なものだったり、神という存在だったりといったものがあるんです。大きな流れみたいなものが決まっていて、自分はそこに乗っかっていると思う部分と、そういう流れは全部無視して自分の力で決めるという両極の考え方が僕の中では常に同居している。だから、アルバムも最初は黙示録的なものとか、逃れられない流れみたいなものを描きつつ、最後にはそれすらも自分の力で壊すといった意思が出てきたりするんです。

ここ数年はパンデミックが起こったり、戦争があったりして、“大きな流れ”のようなものを肌で感じている人は多いと思います。

コロナ禍に関しては、何をどうしようにもどうにもならない状態になったじゃないですか。もう地球上の誰もが平等に逃れることができない災難みたいなものを経た中で感じることがあって、それが歌詞に反映されている部分もあります。どうにもならない、逃げることができないものがあるという絶望感の中で、どうにか生き延びる術を人間は見つけるものですよね。生活のスタイルが変わったり、生き方が変わったり、それまで当たり前のように続いてきたもの…それこそ僕にとってはバンドがそうですけど、そういった変化があっても生き延びるのが人間だし、それが本能だと思っているんです。僕が音楽を発表していくかたちで言うと、PIERROT、Angelo、そしてソロという流れがあって、今の在り方が自分の最終形態だと思っているんですよ。今回はその第一歩という感覚が強いからこそ、もともとの自分の価値観みたいなものを分かりやすく収めたい想いがあったんですね。じゃあ、僕の考え方の本質はどういうものなのかというと、さっきも話したように大きな流れに放り込まれているんじゃないのかという気持ちと、人間というのはそんな中にあっても自分の力で自分の生き方を決めていくものなんじゃないかと思う気持ちがあって。もっと言えば、人間は頭で考えていることと身体の動きすら違うものだったりしますよね。頭では“死にたい、死にたい”と思っていても身体は勝手に細胞分裂を繰り返すし、食べようとするし、眠くなる。要は生きようとする。そんな物理的、化学的な人間というものと黙示録的なもの、そして大きな流れを打破して前に進もうとするポジティブな意味での人間の力強さや希望みたいなもの、大きく言うとその3つくらいが僕の中では同居しているんです。だから、今回のアルバムの流れは3つのグラデーションとして分けられると思います。

SEなどを挟んで雰囲気を変えるパターンではなく、楽曲だけで流れを作っていることも含めて、『NEOSPIRAL』の構成は素晴らしい出来です。

『NEOSPIRAL』は黙示録的なものと人間の細胞分裂という生理物理学的なものが同居している「テロメア」から始まるけど、最後は「I BRESS YOU」という曲で終わるんです。“GOD BRESS YOU”ではなくて“I BRESS YOU”なんだという意思が込められていて、“神の祝福ではない。あなたを祝福するのは俺なんだ。人間なんだよ”ということを伝えたかったんです。神に何かを求めるんじゃなくて、僕が君を祝福するからそれでいいじゃないかと、極めて人間的な終わり方になっている。人間の心はそんなに強いものではないから、何かにすがったり、何かを指標にして生きることを、常に探しているところがあると思うんですよ。それは宗教だったり、政治的な思想だったり、いろいろありますよね。だけど、もうちょっとライトなもの…それこそ自分が好きなエンターテイメントだったり、音楽だったり、本だったりといったもので生きる活力みたいなものを得ている人もいる。だから、誰かが作る音楽、誰かが書く本、ストーリーといったものは、大きい枠で言うと宗教や政治思想と同じようなものとしてカテゴライズされるのかもしれないと思うんですよ。自分の音楽を宗教や政治思想と同列に考えたことはなくて、もっとライトなエンターテイメントだという感覚で取り組んでいるけど、大きいカテゴライズの中で同居し得るものだとしたら、自分が作るものには責任を持ちたいし、聴く人に間違った影響を与えたくない。だからこそ、何が本当に自分が思う正解なのか、何が美しいことなのかを、本当に自分の身を削ってでも、命を削ってでも追究した上で、作品を作らないといけないと思っています。それが待ってくれている人へのせめてもの誠意だと思うから。

『NEOSPIRAL』を聴くと、そういうKIRITOさんの想いも伝わってきます。「I BRESS YOU」の話が出ましたので、アルバム後半のエモーショナルな楽曲たちについてはいかがですか?

後半では「雫」という曲はバラードで、アコースティックライヴで先にアコースティックバージョンで発表したんです。原曲のかたちを誰も知らないのに、いきなりアコースティックアレンジで聴かされているという順番が変な曲です(笑)。今回のアルバムではずっとハードな曲が続くから、「雫」で聴き手はまた違う世界に放り込まれるという流れになっていて。そういう意味で大きなポイントではありますね。ただ、すでにアコースティックライヴで演奏していたりするし、アルバムのダイジェストバージョンをYouTubeにアップしたので、なんとなく聴き手の人にしてみたら「雫」は泣けるバラードのイメージがあると思うんですよ。でも、自分の中では「雫」のあとに入っている「Storyteller」のほうが、客観的な耳で聴くと泣きそうになるんです。

分かります。ただ、「Storyteller」に行く前に、「雫」の話をもう少し。「雫」は切ない曲ですし、歌詞も別離がテーマになっていますが、最後を《荊棘立ちはだかる先へ また一人道を拓こう》という前向きな意思で締め括っていますね。

それが「Storyteller」につながっていて、自分の中では「雫」と「Storyteller」はふたつで一曲みたいな感覚があるんです。映画に例えると「雫」が前半で、「Storyteller」が後半で。「雫」の透き通った世界のあとに、あまりに透き通りすぎていて痛いくらいな「Storyteller」がくることで、自分自身の気持ちの変化や覚悟といったものが表現できていると思っていて。“Storyteller”という言葉自体が、僕は肩書で言えばヴォーカリストだけど、別の肩書は何かと言われたら、まさにストーリーテラーなんです。ずっと自分で作ったストーリーを自分で歌うことで表現してきたストーリーテラーだから、この「Storyteller」は僕自身なんですよね。ここまで赤裸々に自分を曲にして、なおかつ納得のいくものになったから誰よりも僕自身が泣きそうになる。それに、「Storyteller」の歌詞のポイントとして言っておきたいのは、いきなり「テロメア」で“俺はなぜ、ここに立っているのか?”という疑問を投げかけているんです。“突然止まってしまった世界”というのはコロナによって強制的に止められた世界のことも含まれているけど、突然止まった世界で“俺はなぜ、まだここに立っているのか?”という疑問をぶつけていて。それに対して「Storyteller」では“選択肢はいくつも与えられた中で自分が選んだのは、ここに立つことなんだ”と歌っているんです。そんなふうに同じアルバムの中で疑問と答えの両方を提示するということをしました。

OKMusic編集部

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