KIRITO

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【KIRITO インタビュー】
表現者としての充実感は
今までで一番大きかった

感動できる作品というのは、
そこに必ず思想的な一本の線がある

もうひとつ印象的なことがありまして、11曲目に入っている「NEOSPIRAL」はヘヴィな曲でいながらアルバム前半の曲とはテイストが違っています。前半の“引き込み系”に対して、「NEOSPIRAL」は気持ちを駆り立てるものになっていますね。

それは自分にとっては自然なことというか。もともと僕の中には見せ方だったり、ストーリーのつなげ方だったりといったものがあって、常にそれがかたちを変えるやり方でアルバムにしてきたし、ストーリーを変えてきたんです。20何年も音楽をやってきた中でたくさんの作品を作ってきたけど、根本は一緒なんですよ。根本が一緒なところが人から褒められる時は“芯がぶれないですね”と言われるけど、ぶれようがないというか。変わることがない絶対的な考え方がある上で、いろんなストーリーを作りたいと思って取り組んでいるから、一枚のアルバムの中でも表情が変わっていくんです。芯の部分がぶれてしまうと、映画でも、本でも、人は感動できないと思うんですよ。例えば映画だったら最初にグロかったり、ものすごく残酷なシーンとかから始まってドキッとするけど、そこからハラハラするようないろいろな展開があって、最後に感動できる作品があるじゃないですか。ハッピーエンドであろうとバッドエンドであろうと感動できる作品は、そこには必ず思想的な一本の線があるはずなんです。それがないと残酷な表現とハッピーな表現は共存できないので。

確かに作り手に揺らぐことのない思想がなければ、人に感動を与えることはできないと思います。それにしても、楽器を演奏しないヴォーカリストでいながら、ここまで作曲スキルが高いのは大きな強みと言えますね。

もともと僕はギタリストで、ヴォーカルに変わることでPIERROTが始まって今に至っているから、ヴォーカリストらしくない曲の作り方だったり、サウンドプロデュースをずっとしてきているんです。僕は曲を作って、歌詞も書くけど、今回のアルバムで一番こだわったのはドラムとベースなんですよ。“ヴォーカルなのにそこにこだわるのか!?”っていう(笑)。ギターのアレンジ面でも、今回はバンドでもやってこなかったような実験的なツインギターの重なり方とかをいっぱい発明したんです。今回ギターを弾いてくれたJOHNというギタリストも僕が“こういうふうにやってね”と言ったら、その発想はギタリストからは絶対に出てこないと言われたことが何度もありました。“この刻みにこんな動きのリフが乗っかるのは初めてです”みたいな感じで。僕は表現者として欲張りだと思うんですよ。歌も、歌詞も、ギターも、ベースも、ドラムも、もう全部を聴かせたたくて。全部にこだわりがあって、全部が大事だから、結果的にそうなるんですよね。TDもやるし、マスタリングもやるし、最初から最後まで全部にこだわって作る。僕はそうじゃないと作品が作れない人間なんです。

そうなると作品を作るのに相当なエネルギーが必要になりますが、それを厭わないことが分かります。

物理的な面で言うと今回は本当に大変だったけど、表現者としての充実感は今までで一番大きかったです。僕はバンドが好きでこの世界に入ってきて、バンドの素晴らしさは誰に言われるまでもなく一番分かっているんです。だからこそ、自分の脳で考える可能性を制限してでもバンドで表現したかった、そのための努力を惜しまなかったんだということを言葉で言うんじゃなくて、今回のアルバムで伝えたかった。僕がどういう状況で、どういう思いでバンドをやってきたのかを、このアルバムを聴いて察してほしいと。口に出すんじゃなくて、作品で理解してほしいという意地みたいなものはありましたね。

くどくど言わずに“バシッ!”と作品を提示する姿勢は本当に魅力的ですし、KIRITOさんが目指したとおり『NEOSPIRAL』は必聴と言えるアルバムになりました。さらに、同作を携えた全国ツアーも11月から来年の1月にかけて行なわれますね。

Twitterか何かに“過去イチ凶暴なツアーになる”と予言しているんですけど、まさにそうなると思います。僕は今50歳で、バンドでデビューしてもう25年近く経つんですが、いろんな意味でそう見えないと言われるんですよ。ビジュアル的にもそうだし、やっていることの攻め具合とかも、いわゆるキャリアを積んで50歳になったミュージシャンがやることではないことばかりやっていると。そうだとしたら、11月に始まるツアーはそれの最たるものになると思う(笑)。これまでの自分の人生の中で一番攻めていることが伝わりやすいツアーになるだろうし、50歳になってそういうことをちゃんとやる人はいない気がするんですよ。僕は人が持っている固定観念だったり、既成概念みたいなものを全部ぶっ壊したい想いのもとに人生を歩んできていて、だからこそ“年齢的に普通はこうなるよね”というのと真逆のことばかりやってやろうと。本当に人生で初めて、自分で勝手に失神するみたいなことがあるかもしれない(笑)。今度のツアーはそれくらいの気持ちで臨みます。

取材:村上孝之

アルバム『NEOSPIRAL』2022年11月9日発売 blowgrow
    • 【初回生産限定盤】(CD+DVD)
    • IKCB-9583~4
    • ¥4,730(税込)
    • 【通常盤】(CD)
    • IKCB-9585
    • ¥3,300(税込)

ライヴ情報

『KIRITO Tour 2022-2023「THE CREATING REAL WORLD」』
11/12(土) 神奈川・YOKOHAMA Bay Hall 
11/13(日) 神奈川・YOKOHAMA Bay Hall 
11/19(土) 神奈川・CLUB CITTA'川崎 
11/24(木) 東京・新宿BLAZE
11/25(金) 東京・新宿BLAZE
12/03(土) 北海道・札幌PENNYLANE24
12/08(木) 宮城・仙台Rensa 
12/10(土) 大阪・umeda TRAD
12/11(日) 愛知・名古屋ボトムライン
12/18(日) 福岡・DRUM LOGOS
12/25(日) 東京・Spotify O-EAST(FC限定)
[2023年]
1/07(土) 東京・Spotify O-EAST
1/08(日) 東京・Spotify O-EAST

KIRITO プロフィール

キリト:PIERROTで1998年にシングル「クリア・スカイ」でメジャーデビューを果たし、06年4⽉12⽇に解散する。同年10⽉4⽇にPIERROTのメンバーであるKOHTA、TAKEOとともにAngeloを結成。また、ソロとしては05年にシングル「DOOR」をリリースし、バンド活動と並⾏しソロ活動を始動。22年1⽉に代々⽊第⼆体育館2デイズ公演をもってAngeloが無期限の活動休⽌に入ったことを機に、本格的にソロ活動を展開している。KIRITO オフィシャルHP

「Discord」MV

「RAID」Lyric Video

「INTO THE MIRROR」MV

「ANTI-MATTER」MV

『NEOSPIRAL』全曲ダイジェスト

OKMusic編集部

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