可愛くって腹が立つ。『ポプテピピッ
ク展-しょーがねーだろ赤ちゃんなん
だから-』レポート

自称「クソ4コマ」「クソアニメ」の『ポプテピピック』が、初の展覧会を開催! 同作の誕生から今日までの軌跡を振り返る初の展示会『ポプテピピック展-しょーがねーだろ赤ちゃんなんだから-』は、2022年10月14日(金)から11月6日(日)まで、東京アニメセンターにて開催中だ。
本作はショートアニメの連続で構成されており、各コーナーの冒頭には製作者のクレジットが入る。若手の映像作家やクリエイターが積極的に登用され、ちょっとしたクリエイター見本市、デザインフェスティバル、もっと言えば文化祭のようなごった煮感が漂っている。ネタの大部分はアニメやゲーム、時事のパロディが占めているので、鑑賞時間の何割かはポカン……と口を開けることになるのだけれど、好き勝手に積み重なっていく表現を見ていると「そっちがその気ならこっちだって……!」といった心持ちになる。登場人物のポプ子とピピ美はキービジュアルなどでしばしば手の指を立てて見せるが、これはまさに作り手と受け手のケンカに近い渡りあいなのだ、と思う。地上波でこういった作品が放送されているのは、表現という行為そのものにとって大きな希望のはずだ。そして、当の『ポプテピピック』はこんな大袈裟な感想やゴタクなどは全く求めちゃいないだろうというのが作品の端々から感じられるのも、また笑える。
顔ではなく、腕をはめ込む撮影用パネルを発見。表紙でお馴染みのあのポーズをしてみるのも一興……?
本展のチケット料金は、税込で中学生以上:1,414(イーヨイーヨ)円、小学生:797(ナクナ)円という、衝撃のキリの悪さ。すでに『ポプテピピック』のペースである。
そして音声ガイドを務めるのは、会期前半は日笠陽子(ポプ子)、佐藤聡美(ピピ美)。10月26日(水)以降の後半は中村悠一(ポプ子)、杉田智和(ピピ美)だ。アプリをダウンロードの上、自身のスマホなどで再生するタイプの音声ガイドなので、使用する場合はイヤホンの持参をお忘れなく。
※音声の再生にはHoloModels®のダウンロードが別途必要です。
※前半と後半の台本は同じです。
記憶に刻まれる名シーンや迷シーン
「竹書房」にちなんで背景は竹林。同社への愛が溢れている。
『ポプテピピック』は、竹書房の『まんがライフWIN』にて2014年に連載開始した4コマ漫画だ。展示の冒頭では、その選りすぐりのエピソードをコミックス表紙イラストらとともに振り返る。同時に、作者・大川ぶくぶが連載開始前に竹書房と交わしたやり取りメモの複製も展示されており、それを見ると「ポプテピピック」は現在「POP TEAM EPIC」と表記されているが、当初は「POP TEEN EPIC」の案もあったことがうかがえて面白い。
アニメ1期のハイライトを集めたコーナー。天井にぶら下がるミニパネルも可愛い。
続いて、アニメ1期のコーナーへ。右手のピンクの壁には各話ごとの名場面がポートフォリオ風に用意されており、手にとってパラパラと眺めることができる。そして左手のブルーの壁にずらりと並んでいるのはアニメ1期に登場した声優陣の名前だ。本作は1話ごとに前半・後半で演者が変わるので、とにかく数が多い。
立ち入り禁止を示す三角コーンも、赤&青のポプテピピックカラーで。
奥の大スクリーンではアニメ1期のオープニングなどが放映されている。画面の両サイドにクチャっ……と置かれているのは、2018年に幕張メッセで開催されたイベント用に制作されたという、空気で膨らますポプ子とピピ美の人形。なんでこの状態で展示? という疑問は、音声ガイドと併せて鑑賞することで解決するだろう。
クリエイターさんいらっしゃい!
クリエイター諸氏の紹介パネルはタイトルの「しょーがねーだろ赤ちゃんなんだから」にちなんでか、幼少期の写真入り。
ここからはアニメ1期に参加したクリエイター紹介のコーナーだ。期待を裏切らない密度の高さで、個人的にはここが本展のハイライトと言ってもよいと思う。ノリに乗って楽しそうな人、うっすら戸惑いながらの人、クリエイターたちの個性がはっきりと現れたコメントの数々にきっとニヤニヤしてしまうはずだ。
シリーズディレクターなどを務めた梅木葵のパネルを見ると、ポプ子とピピ美のキャラ表には驚くほど細かく「ココお気をつけ下さい」と作画班へのコメントが入っている。あの“非の打ちどころのないかわいさ”はこうやって生まれていたのか……と深く納得である。
白衣がぶら下がる「AC部」の紹介コーナー
さまざまな表現が入り乱れる本作の中でも、特に異彩を放つのがクリエイターユニット「AC部」だろう。キャラ造形・声ともに全く原型を留めていないポプ子とピピ美の活躍する「ボブネミミッミ」のコーナーのほか、白衣を着たクリエイターふたりが突然実写で登場し、スケッチブックを仕掛け絵本のように使って高速紙芝居を上演するパフォーマンスには、度肝を抜かれた視聴者も多かったのではないだろうか。
後ろのモニターで実演の様子も見られるので、未見の方はぜひ!
紙芝居「感動ドキュメンタリー ヘルシェイク矢野」の大量のスケッチブックの展示。残念ながらめくって見ることはできないけれど、いちファンとしてはぜひ、文化財としてこのまま良い状態で時を超えてほしい気もする。
右から、大張正己、ことぶきつかさ、ティボ・トレスカの紹介。ちなみにティボ・トレスカのコメントは作中どおり全文フランス語(日本語訳無し)である。
「バリってる」「スシってる」というネットスラングで一部に知られる、アニメーターの大張正己(彼の得意とするロボットアニメのツヤっとした作画→バリってる)、ことぶきつかさ(ことぶきの手がけた90年代アニメ風のキャラクターデザイン→スシってる)の一角も。両氏から寄せられたお茶目なコメントはもちろん、90年代風のポプ子とピピ美のイラストがとても可愛いので必見だ。
フェルト人形のポプ子とピピ美、手前はクトゥルフ。いずれもよく踊る。
そして『ポプテピピック』といえばフェルト人形も外せない。「UchuPeople(ウチューピーポー)」のふたりによる「POP TEAM DANCE」のコーナーは、画面からそのままふんわり抜け出てきたようなフェルト人形のポプ子&ピピ美が歌い踊る、それはそれは精緻なコマ撮りアニメーションである。生で見ると、ポプ子とピピ美の再現度の高さに改めてじんわり感動する。
ポプテピピック流、あの手この手のおもてなし
左手「どうしたんだぁ〜い⁈」のセリフに、蒼井翔太登場時のインパクトが蘇る。
さらに奥へ進むと、数々の撮影スポットが用意されている。こちらは本編で実際に使用された蒼井翔太の衣装だ。右側はアニメ2期のオープニングに登場するもので、解説によれば目の部分が『ポプテピピック』らしい“あるもの”を象ったデザインになっているのだそう。ぜひ確かめてみてほしい。
マジックインキを使って描かれたという大々的な落書き。
2022年8月、渋谷マルイの取り壊しに際して開催された落書きし放題のイベントで、大川ぶくぶがダイナミックに落書きを施した壁も再現されている。なお切り抜いて保管されたその壁は、このあと2026年オープン予定の新しい渋谷マルイに設置されるという。
ミラーボールがまばゆいダンスフロア。
展示の最後には「CLUB PPTP」と銘打たれたダンスフロア(?)が。写真には写りきらなかったが、ポプ子とピピ美の大きなバルーン人形も、ここではプリッと膨らんだ姿で迎えてくれる。壁にさりげなく「EISAI HARAMASUKOI」とあるので、作中で「流行るかな?」とネタになっていたオリジナル舞踊「エイサイハラマスコイ踊り」をする場所……なのかもしれない。
壁一面をタペストリーで飾った、ミュージアムショップのコーナー。
会場を出たら、物販コーナーに立ち寄ってみるのを力強くオススメする。なぜなら、商品につけられたポップが面白い! ここでまで笑わせにくるとは、『ポプテピピック』ってこう見えて実はすごくサービス精神が旺盛なのかもしれない。
『ポプテピピック展-しょーがねーだろ赤ちゃんなんだから-』は2022年10月14日(金)から11月6日(日)まで、東京アニメセンターにて開催。奔放なネタの数々とそれを裏打ちする職人魂を、その目で目撃してみてほしい。

(c)大川ぶくぶ/竹書房、(c)大川ぶくぶ/竹書房・キングレコード
文・写真=小杉 美香

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