岸田劉生や仏像、ゆるキャラ、ホラー
、ネコ好きにはたまらない、今関西で
しか観れないおすすめアート展覧会5

2022年も2月を迎えた。皆さんのアート鑑賞は捗っているだろうか。さて、今月も関西で開催中の展覧会から、おすすめのものを独断と偏見でピックアップする。新収蔵記念、開館記念、2022年の寅年だからこそ開催されるものなど、まさに「今」しか見れない貴重な展覧会が揃い踏み。アートにハードルを感じていても足を運びやすいものばかりなので、ぜひこの機会に訪れてみてほしい。
『新収蔵記念:岸田劉生と森村・松方コレクション』 ポスタービジュアル
1.『新収蔵記念:岸田劉生と森村・松方コレクション』/京都国⽴近代美術館
京都国⽴近代美術館では、1月29日(土)から3月6日(日)まで『新収蔵記念:岸田劉生と森村・松方コレクション』が開催中だ。2021年3⽉、あるひとりのコレクターから岸⽥劉⽣の作品42点を⼀括収蔵(うち29点購入、13点寄贈)した同美術館。これにより油絵24点、⽔彩画6点、⽇本画9点を含む約50点の岸⽥劉⽣作品を所蔵することとなった。彼の画業の初期から晩年まで各時期の画⾵が揃い、その流れをたどるだけでなく、⾃画像、肖像画、宗教画、⾵景画、静物画、⾵俗画(芝居絵)といった各領域を網羅、版画や彫刻をも含めた、岸田劉生の創作活動全体を展望できるコレクションが出来上がったのだ。
岸田劉生 「エターナル・アイドル」 1914(大正3)年、京都国立近代美術館
新収蔵を記念して開催する同展は、既に収蔵していた作品8点、寄託作品等5点も合わせ、京都国⽴近代美術館が所蔵している岸⽥劉⽣作品をまとめて全公開するとともに、岸田以外の関連作品を含む、約80点を展⽰する。
「外套着たる⾃画像」や「舞妓図(舞妓⾥代之像)」、「⼤連星ヶ浦⾵景」などの旧蔵者だった森村義⾏と、その弟で「壜と林檎と茶碗」旧蔵者の松⽅三郎、岸田の最⼤の⽀援者であった芝川照吉にも着⽬し、岸田の功績を世に知らしめた、コレクションの役割も振り返る。
みどころ1:新収蔵作品の全42点を初お披露⽬
岸田劉生 「大連星ヶ浦風景」 1929(昭和4)年、京都国立近代美術館
初期の代表作「外套着たる⾃画像」や静物画の名作「壺」を描いた三部作の最後の作品「壺」、京都の南禅寺草川町に移り住んでいた時期の名作「舞妓図(舞妓⾥代之像)」、晩年の明るい⾊彩が印象的な作品「⼤連星ヶ浦⾵景」など、あらたに所蔵した全42点(うち1点は表裏2⾯からなるため画⾯数は43⾯)を初公開する。
みどころ2:画業を⼀望する⼤コレクション
今回のコレクションが加わったことで、岸田劉生の幅広い活動領域を網羅するだけではなく、彼の初期の「銀座時代」「代々⽊、⽟川時代」から「鵠沼時代」を経て「京都時代」、最晩年の「鎌倉時代」まで、画業全体を展望できる。
岸田劉生 「麗子裸像」 1920(大正9)年、京都国立近代美術館
学生の頃、誰しも教科書で必ず見たであろう「麗子裸像」も展示。岸田劉生の作家活動を濃密に体験できる貴重な機会をお見逃しなく。
特別展『国宝 聖林寺十一面観音 ―三輪山信仰のみほとけ』/奈良国立博物館
『国宝 聖林寺十一面観音 ―三輪山信仰のみほとけ』 メインビジュアル
続いて2月5日(土)〜3月27日(日)まで奈良国立博物館にて開催される、特別展『国宝 聖林寺十一面観音 ―三輪山信仰のみほとけ』は、仏像ファン必見の展覧会だ。国宝4点を含む31点が展示される。
国宝 「十一面観音菩薩立像」 奈良時代・8世紀 奈良・聖林寺蔵
奈良県桜井市にある聖林寺の国宝「十一面観音菩薩立像」は奈良時代に作られた天平彫刻の名品で、日本を代表する仏像のひとつ。 江戸時代までは他の仏像とともに桜井市の大神神社の境内にあった大御輪寺に安置されていたが、明治時代の神仏分離政策によって、聖林寺に移された。
同展みどころは、1998年の特別展『天平』以来24年ぶりに奈良国立博物館で展示される、国宝「十一面観音菩薩立像」を360°観覧できること。威厳のある顔つき、八等身のすらりとしたプロポーション、表情豊かな頭上の面(当初は11の面があったが、現在は仏面1面、菩薩面2面、怒った表情の瞋怒面3面、口から牙が突き出した牙上出面2面が残る)、本物のような柔らかい衣、美しいしぐさ、蓮の花をかたどった華やかな台座。最高峰の表現をあらゆる角度からじっくりと鑑賞できる。展覧会に出る機会は少ないため、見逃し厳禁だ。
また、かつて「十一面観音菩薩立像」とともに、大御輪寺に祀られていた国宝「地蔵菩薩立像」や「日光菩薩立像」「月光菩薩立像」も展示される。これら3体が一堂に会すのは、なんと約150年ぶりだ。
国宝「地蔵菩薩立像」 平安時代・9世紀 奈良・法隆寺蔵
「日光菩薩立像」(部分) 平安時代・10〜11世紀 奈良・正暦寺蔵
「月光菩薩立像」(部分) 平安時代・10〜11世紀 奈良・正暦寺蔵
大神神社は御神体を持たず、三輪山そのものを信仰する、自然信仰。他に同展では、三輪山信仰や神仏習合に関連する遺宝や三輪山禁足地の出土品なども展示する。

三輪山絵図 室町時代・16世紀 奈良・大神神社蔵 展示期間:2/5〜2/27
「大国主大神立像」 平安時代・12世紀 奈良・大神神社蔵
音声ガイドのナビゲーターは天海祐希。ぜひ音声ガイドも借りて、比類なき美しい仏像を楽しみたい。
開館25周年記念『みうらじゅん マイ遺品展』/アサヒビール大山崎山荘美術館
開館25周年記念『みうらじゅん マイ遺品展』
2022年3月6日(日)までアサヒビール大山崎山荘美術館にて開催されている『みうらじゅん マイ遺品展』もおすすめだ。同館は、登録有形文化財であり築100年を超える大山崎山荘(本館)、安藤忠雄設計の地中館の山手館からなる。1996年に開館し、2021年に25周年を迎えた。
開館25周年記念『みうらじゅん マイ遺品展』ヤシやん
同展は、開館25周年を記念して行われるもの。「マイブーム」「ゆるキャラ」などの命名者であり、イラストレーター、漫画家、エッセイスト、ミュージシャンなど、様々な分野で幅広く活躍するみうらじゅんが、長年にわたり収集、制作し、自ら「マイ遺品」と名づけた品々を、出身地である京都の地で一挙に公開する。
喫茶室では「カフェ企画」として、みうらじゅんのトレードマークとなっているイラストを焼印した特製どら焼きや、「スイーツ・ドリンクセット」の選べるメニューに、上質な原料を数種ブレンドしたオリジナル焙煎の宇治ほうじ茶を、味わうことができる。
開館25周年記念『みうらじゅん マイ遺品展』 ツッコミ如来立像
なお、みうらじゅんは同展について「ごちゃまんと溜ってしまったこれらのものをある時から『マイ遺品』と、呼ぶようになりました。それは何も後世に残す企みではありません。これから先(グレイト余生)も、まだまだ溜ってしまうであろうことからの言い訳として考えついたネーミングです」「これから御覧になるみな様は、単なるコレクションだと思わずに「へぇー、みうらじゅんはこんな人だったんだ」と、気持ちを盛ってその品々に思いを馳せて頂くようお願いします。あくまで「プレイ」で構いませんので」とコメントを寄せている。
『横尾忠則の恐怖の館』/横尾忠則現代美術館
『横尾忠則の恐怖の館』 ポスター(デザイン:横尾忠則)
現代美術家横尾忠則の作品を収蔵、展示する横尾忠則現代美術館では、2月27日(日)まで『横尾忠則の恐怖の館』が開催されている。これまでも同美術館では、美術館を温泉施設や病院にするなど面白い企画を行ってきたが、今回はお化け屋敷に変身している。
「白昼夢」 1969年頃 『江戸川乱歩全集』(講談社)挿画
横尾忠則は、見えるものや科学で説明できる領域外のものにも、一貫して関心を寄せてきた。幼少期にふるさとの兵庫県西脇市で体験した、都会ではありえない深い闇や、神秘的な体験の数々が大きく関わり、作品にも色濃く反映されている。彼の多彩な作品を通じて「芸術」と「恐怖」との関係性について考察する展覧会となっている。
「業」 1985年頃 横尾忠則現代美術館蔵
同展は4つのセクションからなる。最初のコーナー「乱歩迷宮」は、『江戸川乱歩全集』の挿絵のイラストレーションが展示されている。「あの世からこの世を見て描く」という独特の表現をする横尾が、作品において扱い続けてきた「死」にまつわる展示がされた「あの世とこの世」。そして、ポートレート作品群を遺影のように演出、構成した「葬列」、展示室全体を廃墟のように装飾した「闇について」。横尾忠則といえば、カラフルでビビッドな表現を思い浮かべるかもしれないが、一方で闇の表現も多く手がけている。
《霊骨》 2000年 横尾忠則現代美術館蔵
また2021年3月から、4Fに新設されたコレクションギャラリーでは、『YOKOO TADANORI COLLECTION GALLERY 2021[後期]』も鑑賞できる。『恐怖の館』に連動した恐怖のイメージの原画や、書籍、広告など、長年作家の手元にあった多彩なコレクションも併せて見てみよう。怖いけど見たい、という人間の恐怖に対しての好奇心をくすぐり、横尾忠則の芸術を通して、肌で恐怖を感じられる展覧会。会期終了は間近に迫っている。
『トラ時々ネコ 干支セトラ』/福田美術館
円山応挙「虎図」福田美術館蔵(前期)
2022年は寅年である。京都嵐山の福田美術館では、2022年1月29日(土)から4月10日(日)まで、トラとネコ、そして干支にまつわる展覧会『トラ時々ネコ 干支セトラ』が開催中。
与謝蕪村や円山応挙など、江戸時代中期に活躍した画家や、竹内栖鳳や大橋翠石ら明治から昭和にかけて活躍した有名画家が描くトラの絵を中心に、他の干支の動物を描いた作品なども、福田美術館のコレクションから厳選して展示される。また、2022は「ニャーニャーニャー」と読めることから、愛らしいネコを描いた絵画も「時々」並べて展示している。
竹内栖鳳「猛虎」 福田美術館蔵(後期) 
トラは古くから、中国や朝鮮半島で武勇や王者の象徴とされてきた生き物。日本でも霊獣とされ、絵画や工芸品などのモチーフに用いられてきた。江戸時代の画家たちは、中国などから輸入された毛皮や絵画を参考にトラを描いたため、頭のすぐ後ろで肩が盛り上がっているなど、不自然な描写が見てとれる。分からない部分は実際に観察できるネコを参考にしていたそうで、ネコのようなトラ「ネコトラ」が多く描かれたそうだ。
大橋翠石「仔虎図」 福田美術館蔵(後期)
明治時代にトラが動物園で飼育され始めると、竹内栖鳳や大橋翠石をはじめ多くの画家が写生に通い、写実的なトラを描くようになった。同展では、江戸時代に描かれたネコのような虎図、明治時代以降の画家が実物を観て描いた虎図とともに、江戸から昭和に描かれた猫図も展示される。時代によって変化する描かれ方に注目してみるのも面白いだろう。

菊池契月「松明牛」 福田美術館蔵(前期)
第2展示室とパノラマギャラリー第3展示室では、子(ね)、丑(うし)から始まる干支のいきものを描いた絵画を通して、その生態や人との関わりを知ることができる。さらに、「干支に選ばれなかった」ネコの絵も展示される。
速水御舟「白兎図」 福田美術館蔵(前期)
ネコ科やネコ、動物好きにはたまらない展覧会。前期(1月29日(土)〜3月7日(月))と後期(3月9日(水)〜4月10日(日))で、一部展示替えも行われる。寅年にあやかり、可愛らしくユニークな動物たちに会いにいってみてはいかがだろうか。
川合玉堂「紅梅猫児」 福田美術館蔵(前期) 
その他、2月26日(土)からはSPICEで担当学芸員にインタビューを行なった『挑む浮世絵 国芳から芳年へ』が京都文化博物館で開催される。こちらもぜひチェックしてほしい。
文=ERI KUBOTA

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