内海啓貴「“王道”の中に、いい意味
で“異色の華やかさ”があるミュージ
カルです」 ~『ラ・カージュ・オ・
フォール』インタビュー

1993年から市村正親の当たり役のひとつとして、2008年からはジョルジュ役に鹿賀丈史を迎えて上演が重ねられてきたブロードウェイ・ミュージカル、『ラ・カージュ・オ・フォール』。鹿賀がクラブオーナーのジョルジュを、市村がゲイクラブの看板スター“ザザ”ことアルバンを演じる本作で、20年にわたって事実上の夫婦として生活してきたふたりの息子、ジャン・ミッシェル役に今回初めて挑むのが内海啓貴だ。近年進境著しく、『グリース』での好演も記憶に新しい内海に、名作参戦への意気込みやミュージカルに対する思いを聞いた。
大先輩の懐に、うまいこと入り込んでいけたら(笑)
ーーまずは、ご出演が決まった時の率直な思いをお聞かせください。
多くの方に愛されている歴史ある作品に、鹿賀丈史さん、市村正親さんという素晴らしい先輩方と共演させていただけるなんて夢のようでした。そして楽曲を聴いたら本当に素敵な曲ばかりでますます「出演したい!」という気持ちになり、それから作品を観たらとっても華やかな世界が広がっていたので、決まった時は本当に嬉しかったです。初めて日生劇場の舞台に立たせていただけることや、偉大な先輩方がたくさんいらっしゃること、それに演じる役柄も含めて、自分にとって新たな挑戦がたくさんある作品。今からとっても楽しみです。
ーーこの作品が、こんなにも長く愛されている理由は何だと思われますか?
この作品が持っている“愛”だと思います。楽曲にも台詞にもダンスにも色んな“愛”がちりばめられていて、観終わったあと、とっても幸せな気持ちになれるんです。ハッピーエンドで終わる“王道ミュージカル”ですが、その中にいい意味で異色な華やかさがあるところも、この作品にしかない魅力だと思います。
ーー鹿賀丈史さんと市村正親さんの、俳優としての印象は?
鹿賀さんは『生きる』、市村さんは『モーツァルト!』や『オリバー!』などを拝見したのですが、本当に衝撃的でした。立っているだけで、役の歴史がにじみ出ているようなところがすごいな! と。台詞を言わずとも、歌わずとも、そこにいるだけでその役が存在している感じがしたんです。そんなおふたりと共演できることになり、とっても緊張していますが、若さとガッツでなんとかこう、うまいこと懐に入り込んでいけたらなと(笑)。僕はこれまでにもたくさんの偉大な先輩方と共演させていただいてますが、ベテランの役者さんって舞台の上はもちろん、稽古場での姿もかっこいいんです。かっこつけてるのではなく、かっこいい。今回もおふたりから、色々なことを学ばせていただきたいと思っています。
ーーおふたりのほかに、特に気になる共演者の方はいらっしゃいますか?
全員です! メインキャストの方は、皆さん初共演なんです。小南満佑子さんだけはビジュアル撮影の時にお会いしたんですが、緊張しちゃって首の角度の話くらいしかできなくて(笑)。稽古が始まったら、皆さんと色んなお話ができたらと思います。特に森公美子さんは、初演からずっとダンドン夫人役を演じてこられた方。何回も何回も演じられている方ならではの思いや考え方など、お話を聞くのが楽しみです。
素直さと、“普通”に悩む思いを役に重ねて演じたい
ーー演じるジャン・ミッシェル役については、今の時点でどんなふうに解釈していますか?
まだ台本をいただいていないので細かく作れてはいないんですが、素直に育った子だなと感じています。それはきっと、ザザが誰よりも愛情深く育ててくれたから。ただやっぱり、両親ともに男の人ということで、自分が思っている“普通”と同年代の友達の“普通”が違うことが引っかかっていたりはすると思います。僕自身、周りと比べて“普通”がいいなと思った時期もあったので、昔の自分とリンクさせながら作っていけたらなと。それに僕もけっこう素直なほうだから、そこも似てるんじゃないかなって思います(笑)。
『ラ・カージュ・オ・フォール』
ーージャン・ミッシェルには、社交ダンスを踊るシーンもありますね。
はい、もう基礎レッスンを始めています。僕は今まで、踊るシーンがある時は運動神経とリズム感でカバーしちゃっていたんですよね(笑)。でも、今回はそれじゃいけないなと思って練習を始めて。相手役との距離感とか、そういう細かいところまでダンスで表現できたらいいなと思っているところです。
ーー舞台上で歌やダンスをする際、特に大切にしていることは?
最終的に辿り着くのはやっぱり、役の思いです。ミュージカルの歌とかダンスって結局、台詞の延長なので。もちろん最初は、音を取ったり振りを覚えたりっていう“事務作業”みたいなことが多いんですが(笑)、最終的にいちばん大切にしているのは役の気持ちです。
ーー“家族の絆”を描くこの作品にちなんで、内海さんご自身が最近“絆”を感じた出来事を教えてください。
出演していた『グリース』で、共演者との絆を日々感じました。舞台にはハプニングがつきもので、それをいかにみんなでカバーし合って、何もなかったかのように見せられるかが大事。そういう絆はどの舞台でも感じますが、特に『グリース』はダンスが激しくて、リフトに失敗して落っこちちゃったりもあるので……本当に、絆で成り立ってる作品なんです(笑)。
どんな状況下でも、心に明るい光をともせるのがミュージカル
ーーこのところ大きなミュージカルへの出演が続いていますが、内海さんにとってミュージカルの魅力とは?
自分でも、こんなにミュージカルを好きになるとは思っていませんでした。僕は元々歌が好きで、路上ライブをしたりしてたんですが、初めてミュージカルに出させていただいた時、「こんなに楽しい世界があるんだな!」って。観客として衝撃を受けたのは『キンキーブーツ』で、初めて拝見して「なんだこの華やかで素敵な作品は!」「こんなにメッセージ性の強いエンターテインメントがあるんだ!」と思った時、僕も役者としてそういう作品を届けたい思いが強くなりました。こういう状況下になっても、心に明るい光を絶対にともせるのがミュージカルだと思っているので、これからもこの世界で頑張っていきたいです。
ーーコロナ禍で何か、舞台に対する取り組み方が変わったようなことはありますか?
コロナ前は、板の上のみんなの頑張りがひとつになっているのが舞台だと思ってたんですが、そうじゃなくて、お客さんあっての舞台なんだって改めて気付かされました。『グリース』でもそうでしたが、皆さんが毎公演マスクや手指消毒を徹底的にやった上で観劇してくださってるのを見ると、お客さんと僕らとでこの作品を作っているんだなって。マスクをしてても、皆さんの反応ってけっこう分かるんです。たぶんここ、本当は声出したいんだろうなとか(笑)、そういうことまでちゃんと伝わっています。
ーー役者として今後どうなっていきたいか、ビジョンのようなものがあれば教えてください。
まず30才になった時にどんな俳優になっているかということを一つ目標にしているので、それまで地道に努力して、色んな役ができる役者になっていきたい。ミュージカルを観劇すると、生で感じるビートであったり心が震える感じであったり、劇場じゃないと味わえない、ゾワっという感覚があるじゃないですか。それを生み出す役者になりたいです。
ーーやってみたい役は、具体的には言いたくない感じですか……?
たくさんあり過ぎて​(笑)。自分と同年代の役柄はもちろん全部やりたいですし、同世代の俳優が演じている役も、全部可能性があるならば、色んな役をやりたいなと思っております!
ーー最後に改めて、『ラ・カージュ・オ・フォール』観劇を楽しみにされているお客様にメッセージをお願いします!
先ほども言った通り、この作品は異色の愛がテーマの王道ミュージカル。今はとにかく、皆さんに楽しんでいただきたい思いでいっぱいです。すでにこの作品を愛している方がたくさんいらっしゃると思うので、僕もこれからもっとこの作品を知って、愛して、先輩方の胸を借りながら頑張っていけたらいいなと。劇場でお待ちしております!
取材・文=町田麻子

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