「ここではミラクルが起こる!」~ミ
ュージカル『天使にラブ・ソングを~
シスター・アクト~』初日前会見&ゲ
ネプロレポート

観る者を幸せにする最高にハッピーなミュージカル『天使にラブ・ソングを〜シスター・アクト〜』。老若男女に愛されるコメディ・ミュージカルが、2023年11月5日(日)に東急シアターオーブで開幕する。
映画『天使にラブソングを・・・』で主人公を演じたウーピー・ゴールドバーグが、自らプロデューサーを務めミュージカル化に至った本作。物語の舞台設定をディスコミュージック全盛期の1970年代へと移し、巨匠アラン・メンケンが極上のミュージカルナンバーを書き下ろしたことでも話題となった。2009年にロンドンで世界初演、その後世界各地で上演され、日本版は2014年に帝国劇場で初演を果たす。長きにわたり大勢の人々から愛される本作は、今回でいよいよ5度目の上演を迎える。
演出は日本版初演から山田和也が続投、主人公のデロリス・ヴァン・カルティエは森公美子と朝夏まなとがWキャストで務める。森は初演から5度目、朝夏は3度目となるデロリス役だ。本公演では廣瀬友祐(エディ役)や梅田彩佳(シスター・メアリー・ロバート役)といった初参加のフレッシュなキャストが加わり、さらに2019年公演ぶりに林翔太(パブロ役)が再参加するなど新たな座組となった。
11月4日(土)に東急シアターオーブで開催された初日前会見とゲネプロ(デロリス:朝夏まなと、エディ:廣瀬友祐 出演回)の模様をレポートする。
ミュージカル『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』フォトセッションより
フォトセッションにはカンパニー全員が大集合。壇上に上がるまでも賑やかで、カンパニーの仲の良さが伝わってきた。会見に登場したのは舞台衣装に身を包んだ森公美子、朝夏まなと、廣瀬友祐、梅田彩佳ら4人のキャスト陣だ。
ーー開幕に向けて、まずデロリス役のお二人から意気込みをお願いします。
森:私はもう去年で引退だと思っていたんです。歌は大丈夫なんですけど、どうも膝の具合が〜とかね。けれど1年もしないうちに再演となって「やるやるやるやるやる!」と。やり残したことがたくさんあったので、やらせてくださいという気持ちでいっぱいでした。まぁちゃん(朝夏)にも稽古でいろいろ教えてもらいながらたくさんお世話になり、舞台に立てる幸せを今本当に感じております。みなさんお誘い合わせの上ぜひ来ていただきたいなと。私「これが最後じゃないか」と毎回思っているのですが、今回は本当にその最後感がとてもありまして。一つひとつもっと丁寧に歌おうと思いますし、『シスター・アクト』という作品に出会えたことの幸せを感じております。
(左から)森公美子、梅田彩佳
朝夏:私は2019年から参加させていただいていますが、前回公演は半分くらい止まってしまって。「観に行きたい」と言ってくれていた友達がいて、何度かリスケしたのですが結局観ることができず、今年やっと観に来られることになったんです。それも含め去年のリベンジでもありますし、こんなに短いスパンで再演させていただくことはなかなかないなって。「覚えていないかもしれない、どうしよう」と思っていたのですが、実際に動いてみると体の中に自分のデロリスがまだ残っている感じがしました。お稽古をしながら発見もあり、新キャストのお二人からいろんな刺激をもらいながら、また新たなデロリス像が作り上げられてきたんじゃないかなと。お客様と一緒に2023年度版の『シスター・アクト』を作れたらいいなと思います。私自身は今年21周年を迎えさせていただき、これからますます頑張っていかなきゃなと思っているときにこの作品・役に出会えたことに感謝しています。千穐楽まで頑張りたいと思います!
森:(朝夏さんの)代表作になりますよね。
朝夏:いやいやいや!
ーー続いて、今回新キャストのお二人も意気込みをお願いします。
廣瀬:学生時代の夢がったと言いますか、アフロになることで僕は初日を迎える前に大満足しております。モリクミさんが「最後」だとおっしゃっていましたけれど、今自分がこの場所にこの役として出演できるのは、これまでこの作品をたくさん愛し、お客様と共に育んで培ってきてくださったみなさんがいるから。場当たり中に客席から観ていても、この作品が持っている楽曲の素晴らしさとエネルギーにいつも感動していました。この感動をお客様に新しいエディとしても届けたいですし、カンパニー一同、最後まで一生懸命頑張りたいと思っています。よろしくお願いします。
梅田:シスター・メアリー・ロバートがすごく好きで、演じてみたいなと思っていました。実は昔オーディションを受けて落ちてしまったんですけれども、今回こうしてお声掛けいただき演じさせていただけるのが本当に幸せです。大好きな曲「♪私が生きてこなかった人生」を歌わせていただけるのもすごく嬉しくて。1年前にシアターオーブに観に来ていたので「このセットに立てるんだ、この衣装を着れるんだ」と一つひとつが感動で、初日を迎えるのが本当に幸せです。頑張ります!
ーー見せ場だらけの作品だとは思いますが、「私のここを見てほしい」というおすすめのシーンを教えてください。
森:デロリスは教会に来るまで人の愛を知らずに生きてきた人間なんですけれども、しいていうなら教会に来たばかりの頃のあの“ずべ公さ”。(修道院で)「タバコの火ない〜?」と言ってしまうような人間が、シスターたちと出会ってどんどん変わっていく姿を、作品を通してみなさんに感じてほしいなあと思っております。
朝夏:このミュージカルの主役でもあるシスターたちにも、新しいメンバーが増えたり戻ってきたメンバーもいたり。そのシスターに出会ってデロリスが変わっていくというストーリーでもあるので、デロリスがシスターのみんなに歌を教えて一緒に盛り上がる1幕ラストのシーンはぜひ観ていただきたいです!
廣瀬:全部なんですけど、エディが歌うナンバーは見応えのあるナンバーになっていると思うんです。デロリスのお二方が言ったように、この作品は殻を破る瞬間や人を想って一歩踏み出す瞬間といった感動が詰まっています。エディ的には、物語後半でシスターたちを助けに来るシーンで銃を打つ瞬間。下手側のお客様にしか見えないんですけど、その瞬間はエディにとってひとつの成長でもあるので、そこですかね。
(左から)廣瀬友祐、朝夏まなと
梅田:ロバートが初めて大きい声が出せるところは、ロバート的にすごく観てほしいです。そのときに周りのシスターたちがすごく喜んでくれているのが、とっても愛があって素敵だなと思うので。
ーー2023年も残り2ヶ月となりましたが、今年はご自身にとってどんな年でしたか?
梅田:夢だったロバートを演じられることになった、本当に幸せな年でした。来年もそんな風にひとつ夢が叶うように頑張りたいと思います!
廣瀬:俳優としてというより、ひとりの人間として、男として、大きな出来事(結婚)があった1年になったので、たくさん覚悟を持って来年も頑張りたいです。まずは今年『シスター・アクト』を幕開けから最後まで頑張って、さらなる成長に繋げたいなと思っています。
朝夏:私も今年1年いろんな役に出会うことができて、今までやってこなかった挑戦もできたんです。一番大きなトピックスは、21周年ということで自分のコンサートをさせていただいたこと。自分がここまで来られたのは、本当にたくさんの方の愛や応援があってこそだなと改めて実感する年になって、すごく背中を押してもらいました。なので、これから年内は『シスター・アクト』、そして来年も努力をし続けて、これからももっと成長していきたいと思っております。
森:私は芸歴が42年ということでございまして、(朝夏さんと比べて)ちょうど倍なんですね。とにかく毎日を楽しく生きるということ、それだけを目標にしてきました。今年はたくさんの作品に関わらせていただき、私事ではございますがジャズを歌うようになりました。私、ジャズ歌手になるのが夢だったんですね。64歳になるんですけれども、ひとつずつ夢を叶えさせていただいてきたのかなあなんて思っております。また新しい作品やいろんなことにどんどん挑戦していける心を持つような、そんな風に歳を取っていきたいなと思っております。
『シスター・アクト』という作品に出会えなかったら、他の作品にも出会えていないような気がするんです。この作品の素晴らしさ、愛の深さ、シスターの優しさ、目に見えない神様を信じる熱い気持ち……それらをぜひ劇場で体験していただきたいなと思います。ここではミラクルが起こります! ですので、ぜひ『シスター・アクト』を観に来ていただきたいです。お待ちしております!
(左から)廣瀬友祐、朝夏まなと、森公美子、梅田彩佳
ゲネプロレポート
ミュージカル初心者にも玄人にも自信を持っておすすめできる懐の深い作品、それが『天使にラブ・ソングを〜シスター・アクト〜』だ。
物語の舞台は1977年のフィラデルフィアにあるカトリック修道院。厳粛な修道院だからといって肩肘張ることはない。劇場で待っているのは、破天荒なクラブ歌手デロリス、個性豊かなシスターたち、気弱な警察官、癖の強いギャングたちといった、いずれも愛すべきキャラクターばかりなのだから。
冒頭、盛り上げ上手なマエストロがオーケストラピットから客席に手拍子を促し、手拍子の音が鳴り響く中で華々しく幕が開く。ステージ中央から眩い光が差し込んできたかと思いきや、クラブシンガーデロリスの登場だ。ド派手な衣装を着こなし、長い手脚を使った華麗なダンスとエネルギッシュな歌声で客席を瞬く間に魅了する。脇を固めるミッシェルとティナのコーラスとキレのあるダンスも見逃せない。
実はこのシーンはクラブのオーディション。デロリスはスターの座を掴むべく、極悪非道のギャングのボスであるカーティスと付き合っており、彼のクラブで歌うためにオーディションを受けていたのだ。しかしカーティスは当然のようにデロリスに不合格を言い渡し、さらにクリスマスプレゼントとして本妻が着ていたコートを与える。これを機に目を覚ましたデロリスは「自分自身の力で世に出てみせる」と意気込むが、ひょんなタイミングでギャングたちの殺人現場を目撃。元恋人カーティスから命を狙われるハメに……。
警察に身を寄せたデロリスは、高校の同級生だったエディと偶然再会する。当時デロリスに惚れていたというエディは、全力で彼女を守ると宣言。デロリスを匿うためにエディが用意した場所、それはカトリック修道院だった。厳しい規律に従い清く正しく生きる修道女たちが慎ましく暮らす神の家。デロリスを一目見た修道院長は嫌悪感を顕にするものの、警察から多額の寄付を受けると聞いて渋々彼女を受け入れることに。価値観が全く異なるデロリスと修道院長の二人。相容れない彼女たちが一体どのような変化を辿っていくのかが、本作の見所のひとつでもある。
シスター・メアリー・クラレンスとして一時的に修道院で生活をすることになったデロリスだが、自分の常識が一切通じないシスターたちに最初は頭を抱える。シスターたちはお祈り大好き、懺悔大好き、断食さえも喜んで受け入れる。シスターになることがいかに素敵なことかを説く姿に、思わず圧倒されるデロリスであった。
そんなシスターたちとデロリスの距離がグッと近づくきっかけは、音楽だった。デロリスは“言葉にできない”程の歌声である聖歌隊の歌唱指導を任されたのだ。彼女の持ち前のカリスマ性と熱心な指導により、聞くに耐えなかった聖歌隊の歌声はどんどん良くなっていく。シスターたち一人ひとりが歌う楽しさを知り、互いの成長を喜び合う姿のなんと幸せそうなこと。さらに魅力的なのは、シスターたちと共に歌うデロリスの活き活きとした姿だ。舞台上からの溢れんばかりの愛とエネルギーが客席へと広がり、劇場全体に多幸感が満ちていく。こんなに幸せなミュージカルが他にあるだろうか。
物語が進むにつれ、デロリスナイズされていく聖歌隊のパフォーマンスも痛快だ。地味な修道服を脱ぎ捨てギラギラと輝く衣装に身を包み、指を加えて腰を振り、天まで届くほどパワフルで美しいコーラスを響かせる。シスターたちによるパフォーマンスはもはやミサではなく、ライブと化していた。一方、この事態を修道院長が嘆き続けていたのは言うまでもない。
我々を『シスター・アクト』の世界に誘い、心揺さぶる名シーンの数々を鮮やかに彩るのはミラーボールのように煌めく音楽だ。ディスコサウンド、ソウル、ファンクといった1970年代を彷彿とさせる魅惑的な音楽を中心に構成され、どのナンバーも無条件で心が踊ってしまう。とあるシーンでは、オーケストラピットの中央に立つあの人が劇中の人物を演じる場面も!? 舞台上と一体となって極上の音楽を奏でるオーケストラにもぜひ注目してほしい。
後半にかけてはまるでジェットコースターのようにストーリーが展開する。デロリスはギャングたちに見つからずに済むのか? 修道院長とデロリスの関係に進展は? 密かに生まれた恋心の行方は? 続きは劇場でご堪能あれ。
ここで改めて魅力的なキャスト陣を紹介したい。
3度目のデロリス役を演じた朝夏まなとは、磨きがかかった台詞回しと持ち前の太陽のような笑顔で愛すべきキャラクターを表現。奔放なデロリスらしさを持ちつつも、シスターたちと出会ってからの気持ちの変化の過程を丁寧に演じていた。中でもドラマチックなソロナンバー「♪シスター・アクト」で響かせる芯のある歌声は、胸に深く刺さるものがある。
一見弱々しい見習い修道女のシスター・メアリー・ロバートを演じたのは本作初参加の梅田彩佳。デロリスと出会って自分の殻を破り、初めて自らの意志で人生を切り開こうと「♪私の生きてこなかった人生」で希望に満ち溢れた歌声を響かせる。聖歌隊の指揮を務めていたシスター・メアリー・ラザールスを演じるのは、ベテランの春風ひとみ。客席をあっと驚かせるパワフルな歌とダンスは健在だ。シスターのひとりとして本作に参加していた経験を持つ柳本奈都子は、朗らかな笑顔で愛嬌たっぷりにシスター・メアリー・パトリックを演じていた。他のシスターたちも個性たっぷりで、一人ひとり見ていて飽きることがない。
デロリスを守ろうと奮闘する警察官のエディ役は、初参加の廣瀬友祐。何事も真面目で一生懸命なのだが、謎の言動が多くツッコミどころ満載な新しいエディ像を作り上げていた。哀愁漂う瞳で歌い上げる「♪いつか、あいつになってやる」の切々とした歌声は、胸にジーンと染み渡る。
ストーリーを動かすキーマンであるギャングたちは、この作品になくてはならないスパイスだ。カーティス役を極めた大澄賢也は怖さと甘さを兼ね備えた低音ヴォイスと俊敏な動きで、ギャングのボスとして強い印象を残す。カーティスの子分を演じるのは、TJ役の泉見洋平、ジョーイ役のKENTARO、パブロ役の林翔太。肝心なときにお人好しで、それ故にワルになりきれない何かが惜しい3人組。どこか抜けているのだけれど歌とダンスはキレッキレ。そのアンバランスさが堪らない。
劇中で最も頭を悩ませ葛藤しているのは、鳳蘭演じる修道院長かもしれない。自分にも人にも厳しいけれど、ポロポロと本音をこぼしてしまいがちなところが憎めない修道院長を魅力的に演じていた。鳳の神々しいほどの佇まいと歌声の説得力が本作を支えていると言っても過言ではないだろう。
修道院長を慰めつつ、テキパキと物事を進めていくオハラ神父を演じるのは太川陽介。デロリスの歌の力を信じて経営難の修道院を救おうとするのだが、誰よりもこの予想外の展開を楽しんでいるお茶目さが微笑ましい。
舞台と客席の一体感が楽しいカーテンコールも本作の醍醐味だ。初めての人もパブロとジョーイによるレクチャー付きなので心配ご無用。難しいことは一切考えず、日常を手放し、笑って泣いて全力で楽しんでほしい。
上演時間は1幕75分、休憩25分、2幕30分の計3時間。東京公演は東急シアターオーブにて11月29日(水)まで。その後は大阪公演が12月6日(水)〜10日(日)梅田芸術劇場メインホールにて、静岡公演が12月23日(土)〜24日(日)静岡市清水文化会館マリナートにて上演される。
観る度に愛と勇気をもらえる最高のハッピー・ミュージカルを、どうぞお見逃しなく。
取材・文・撮影=松村 蘭(らんねえ)

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