イラストレーターYUGO.、自身初作品
集『NEW DESTRUCTION』と振り返る13
年間の価値観や手法の変遷

大阪では音楽イベント『MINAMI WHEEL』『MEET THE WORLD BEAT』のメインビジュアルを担当するなど、アートとエンタテインメント業界を繋ぐ活躍を見せているイラストレーターYUGO.​。2015年から本格的に活動を開始し、現在ではSuchmossumikago!go!vanillasなどのアートワークや、adidas、Levi’ s®などのアパレルブランドのデザインなどを手掛けている。4月9日(金)には、活動初期の2008年ごろから最新描き下ろし作品まで、約200点の作品を1冊にまとめた自身初の作品集『NEW DESTRUCTION』を発売した。発売に伴い、4月3日(土)~18日(日)に東京、5月1日(土)~30日(日)福岡、そして延期となってしまったが最後に地元大阪へ戻り、個展YUGO. EXHIBITION 『NEW DESTRUCTION』を開催する。同作に敷き詰められた13年間の作風・考え方の変遷や、一風変わった個展のみどころを、普段から交流の深いFM802で『Poppin'FLAG!!!』(毎週火曜24:00~27:00)のDJを務める板東さえかとともに掘り下げていく。
『NEW DESTRUCTION』の表紙
■バイトを辞めて自分を追い込んだら、絵の仕事一本でやっていけるように■
YUGO.:ばんちゃんとは、2015年に開催した個展に来てくれた時に初めて出会ったんじゃないかな。
板東:そう、これ(当日着用していたTシャツ)を買った時。思い出して今日着て来ました! その時はYUGO.さんが(FM802主催のアーティスト発掘プロジェクト)digmeout(読み:ディグミーアウト)に所属していたので私が一方的に知っていて。
YUGO.:FM802主催の『MINAMI WHEEL』とかも関わらせてもらっていたので、FM802の方々は面識はなかったのですが、作品を知ってくれていましたね。
板東:それが一番最初でしたね。そこから呑みにいくような仲になって。
YUGO.:絵の仕事一本でやっていけるようになったのも、ちょうど2015年くらい。それまではスターバックスでアルバイトをしながら絵を描いてたから。
板東:お客さんに絵を描いたことはないんですか?
YUGO.:暇な時は何回かちょっとカップに絵を描いて提供したり。絵の仕事もバイトも両方好きだったし忙しかったわけでもないけど、本格的に絵だけでやっていけるようにしようと意識してバイトを辞めました。自分を追い込んだら、本当にその辺りから今関わらせてもらっているgo!go!vanillasやSuchmosとお仕事できるようになってきて。いい偶然が重なって、認知してもらえるタイミングになったのかなと思いますね。
板東:ターニングポイントやったんかな。
YUGO.:そうですね。名義を変えたのもその年。それまで本名の藤田侑吾、フルネームで表記していて、でも英語を入れたり外国人ぽい人をバンバン描いているのに、作家名が普通の日本人の名前なのがずっと気持ち悪いというか……。
板東:しっくりこなかった?
YUGO.:そう。そのギャップが面白いと言ってくれる人も多かったけど、作品に名前を書いた瞬間に雰囲気が崩れると思ってたから、ローマ字表記に変えて。アーティスト名だけ変えて他に何も変わらないのは面白くないから、元々モノトーンの絵ばかり描いてたのを、YUGO.表記にしたタイミングでめちゃくちゃ作品に色を入れることが新しいかなと思って、一気に全ての作品に色を入れるようになりました。
初期の頃の絵。色が少なく、裸の女性が睨んでいる。 (c)NEW DESTRUCTION
板東:へーそうなんだ! YUGO.さんのパブリックイメージはカラフルでポップな、でもエッジの効いた色が印象深いと思うけど、実は意識的に変えたところだったんですね。
YUGO.:そうですね。あとはモノトーンだけで描いてると、絵の変化に限界を感じたのもありました。この数年も自分の中で、作品やクライアント先から求められるものが似ているなと感じることもあるから、作品集の描き下ろしは過去に戻った描き方や、今まで描いたことのない表現を使っています。でも人物の髪の毛を黒色にするとか、日本語の文章を入れるのは嫌なのでやらない。頑固に嫌なものは嫌と言うことは心がけてる。
板東:今日は心がけてることを聞きたかったから早速聞けて嬉しい。飽き性とか嫌なものに対して絶対嫌だとか、頑固とか、そういう性分みたいなワードが出てきたけど、それは昔から好き嫌いがはっきりしているタイプですか?
YUGO.:昔の方がこだわりは強かったかもしれない。色を入れないのもそうで、自分の中でルールを作りすぎてそれに振り回されている部分もありましたね。初期の作品は今思うと、セクシャルな表現もそうで、頑張って尖ったワードや表現を描いてたり、無理してたかなと思います。今は丸くなったというよりも、ここだけは絶対譲れない部分だけ守っておけば、あとはルールを変えられる方がカッコ良いなと思えるようになりましたね。
YUGO.
■憧れはバンドプロデュースもこなす『キャンベルのスープ缶』ウォーホル■
板東:最初に絵を描きたいと思った時のこととかは覚えてるものですか?
YUGO.:覚えてないですね。母親曰く、子供の頃にお絵描きしかしなかったらしいし、小学校に入ってからもそうで。専門的に学びたいとか、将来、絵の仕事に就きたいと思っていたわけじゃなかったけど、自分には最終的に絵があると思って生きてたから、バイトをしながら絵を描いてました。ずっと絵を描くのが好きやし、それ以外選択肢がなくてこれが仕事になった理由というか。
板東:へー! 部活で運動をやってたりとか、趣味でバンドをやってたりとか、自分の中の趣味がキッカケで、これが好きだからこういうことしたいなみたいな、思春期の芽生えがあると思うけど、YUGO.さんの場合はそれともなんか違うよね。
YUGO.:それでいうと趣味でギターをしていて、絵と同じくらい音楽が好きやったけど、決してうまくもないし作詞ができるわけでも、曲を書けるわけでもない。そんなときにアンディ・ウォーホルは、絵描きでバンドプロデュースもしていると知り、ジャケットのアートワークとか表面的なイメージとかを作る上で絵は大事なんやな、得意な分野で音楽に近づきたいなと思うようになりました。高校生くらいの時にザ・ストロークスとか海外のバンドを好きになって、バンドや音楽を絵に落とし込む中で外国人ぽい人とか、絵の中に英語を入れるとか今の作品のルーツが出来上がってきたと思います。
板東:音楽も当時からすごく重要やったんやな。じゃあウォーホルというロールモデルがいたことはYUGO.さんにとって指標になった?
YUGO.:そうですね。今でこそゴッホとかピカソも大好きやけど、学生の頃はモナリザの良さはぶっちゃけ有名なことでしか凄さがわからなくて。でも教科書に載ってる作品の中で圧倒的にウォーホルの作品は難しさがゼロ。『キャンベルのスープ缶』とかコーラの瓶とか、普通に存在するものを描くことがアートになってる面白さに引き寄せられましたね。とにかく最初にカッコ良いなと思ったのがウォーホルやし、今でも生き方や変な考え方も含めウォーホルは憧れの存在です。
板東さえか
■大切なのは肩書きではなく、仕事や表現の方法だと本を通して気づけた■
板東:YUGO.さんの肩書きはイラストレーターですけど、アーティストでもあり、クライアントに応えるデザイナーでもあるわけじゃないですか。その辺の意識のバランスでぶち当たった壁はなかった?
YUGO.:今が一番あると思う。
板東:えー嘘でしょ!
YUGO.:ぶっちゃけた話、この本ではイラストレータと謳ってますが、俺はアーティストの肩書きで本を出したいと話をしていて。でも断られた(笑)。納得した理由として、日本でアーティストはミュージシャンを指すから、良くも悪くも抽象的。でもイラストレーターといったら誰もが一発で絵を描く人やとわかる。まずは何をしてる人なのかわかってもらうために、イラストレーターと名乗ることが一番大事なんじゃないかと。
板東:確かに。
YUGO.:イラストレーターの肩書きだと雑誌や広告などのクライアントワークのイメージが強いけど、自分は個展やオリジナル作品でメッセージ性を持たせてるから、それだと意図が伝わらない気がして。だからアーティストにしたかったけど、本の制作や個展のプロデュースに携わってくれている、Suchmosのマネージャーの金子さんに「肩書きを気にしているのは本人だけ」と言われて腑に落ちたというか。たしかにパブリックイメージを守ろうとしたり、肩書きにこだわったりするのは本質じゃなくて、見てくれた人がどう感じるかが一番大事やし、それが全てかなと。クライアントワークでもバンドとの仕事でも、共感できた人とだけやるという自分の中のルールを作っているから、自分の場合仕事を受けることもアート表現なんやなと思ったんですよね。だから肩書きにこだわるというよりも、仕事の仕方や表現の仕方にこだわってる方がいいのかなと思えるキッカケになった。
板東:金子さんの助言は絶大でしたね。それまで囚われていた殻を破ったじゃないけど、変わったキッカケになった。
YUGO.:アート業界にいたら出てこない意見も金子さんにいただいて。だから個展の展示の空間づくりも、今までで一番激しい表現になっています。
YUGO.
■過去と表現は違っても、手法の数を増やし続けることがYUGO.の武器■
板東:YUGO.さん自身、カッコ良いと思うものは変化していますか? 変わらないものもあるやろうけど。
YUGO.:難しいな。昔はとにかく頑固にこだわることがカッコ良いと思ってたけど、今はいろんな目線があるし時代は変化していくのに、自分の考え方は頑なに変わらないという方がカッコ悪いと思ってる。この時代にしかできない表現とか、絵を見てくれる人が何を考えたりどの部分を好きでいてくれているのかが大事で。何を求めてくれているのかなとか、逆に面白がってもらえるかなとか、人の目線も気にできる人間の方がカッコ良いなと思えるようになった。
板東:そうなんだ。
YUGO.:最初の頃は女の人が裸で睨んでいることがカッコ良いと思ってたけど、その考え方や価値観がこの数年間で変わってきたから、「女の人は裸にならないと美しくないのか」と真逆のメッセージを発信したり。絵画や彫刻の女の人は裸になってることが多いので、女の人は服を脱がなければアートとして成り立たないのかという文言と、服を着ている人を描きました。裸じゃなくてもカッコ良さの表現は成立するんですよね。でも昔の自分の絵を否定したいわけじゃなくて、どっちも正しくて考え方の選択肢が増えてきたという。
「女の人は裸にならないと美しくないのか」のメッセージが込められている。 (c)NEW DESTRUCTION
板東:うんうん。
YUGO.:手法も考え方と一緒で、例えば2008年の書き方をしろと言われてもできるし、この本に載ってる描き方や表現は求められたらできる。考え方が変わってきてるから出来上がるものは違うかもしれないけど。
板東:表現は違うかもしれないけど。
YUGO.:タッチとしてそういう描き方をしてくれと言われたらできるし、逆に今はしてない描き方がないので。一個ずつ表現の幅を増やしていってる感覚で、手数が年々増えていってるイメージだからこそ、本では数年をひとワードのテーマに括って、なんとなく時系列に沿ってはいるけど明確にしていません。
板東:それ面白い。表現は違っても手法は数が増えただけというのはすごい武器だなと思います。
YUGO.:考え方も価値観も十人十色だから、違う目線の人からの考えも気にしたいなと思っていて。肌の色とか性別やジェンダーレスとかの考え方は年々変わってきてるから、価値観の変化を消費していくのではなくて、なぜ昔は世界中がこんな価値観を持っていたのかとか、そういうことを考えていきたいと思ってます。
板東:ファッションになるのが嫌なのね。
YUGO.:黒人差別もそうで「何で黒人は白人警官に銃で撃たれたのか、じゃあそもそも、この人が犯した罪はなんだったのか」を考えていたい。ニュースは表面的に切り取って、それを見た人は何も考えずファッション的に発信してるけど、価値観がまた逆になるだけでは何の問題解決にもならない。だからニュースを見て感じたことを絵で表現してますね。
板東:すごいね。前の自分ももちろん否定したくないし、でも表現として残してるものに「この時はまだ力量がなかったな、恥ずかしいな」と思うことは誰しもがあることやと思う。けどそれはそれと認めているというか、ものにしてることはすごいなと話聞きながら思った。
板東さえか
■当時の考え方や感情を大切にした、愛すべき作品200選を1冊に■
YUGO.:でも、ここまで割り切れるようになったのも本が出せるとなってから。本を出すまでの経緯に戻ると、去年リモートで呑んでる時に金子さんの部屋に自分がプレゼントした昔の作品が飾られてるのを見て「懐かしいですね、まだ持ってくれてたんですね」という話になって、それを全部本にしたら面白いなというノリで制作が始まるんですけど。面白そうな反面、昔の絵を本にしたくなくて。
板東:その時は思ったんや!
YUGO.:作品として古すぎるし、ここ数年の自分の仕事の絵のテイストとか感覚とかとあまりにもかけ離れたものやったりするから俺は内心、載せるかどうか悩んで。でもこの本のために自分の作品を毎日振り返る日が続いてふと思ったのが、ここまで作風が変わってる作家って他におらんということ。作品集にも載ってるけど、sumikaのDVDのジャケットのアートワークと2008年くらいの作品は同じ人間が描いてるとは自分でも思えない。
板東:人が変わってる(笑)。確かにね!
YUGO. 『NEW DESTRUCTION』
YUGO.:同じ人間が描いてると思えないと気づいた時にすごい面白いと思って。例えばsumikaのアートワークは片岡さんと二時間くらい話し合って生まれた大事な作品で、自分の中で一番あったかい絵を描いた認識がある。でも初期の作品は自分の最大限のカッコいいものを描きたいという感覚やから、どっちも気持ちに嘘はないし見て欲しいと思った時に、本を開いた瞬間、一番際どい作品が載っていたら面白いなという感覚に変わった。どっちも愛すべき作品かなと思えたから、仕事の大きさじゃなく、その時の考え方や自分の感情を大切にして厳選した約200点を載せました。初期の作品は鉛筆で書き込んだものとか、画用紙を切って貼ってるものとかもあって。
板東:そういうことか! 下地になるものの上に描いてるのね。
YUGO.:生で作品を見ないと伝わりにくいから、先に本を見て個展に足を運んでもらって、じっくり見てもらえたら嬉しいですね。
板東さえか、YUGO.
取材=板東さえか 文=川井美波 撮影=渡邉一生

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