【首振りDolls ライヴレポート】
『nao Birthday live!!
DRAMATICAL DOLLS SHOW
new album〝ドラマティカ〟
release tour final!!』
2021年5月15日 at 浅草花劇場
“3ピースバンドはメンバー同士が共感し合ったらおしまいだ”。これは随分前に筆者が今も活動する3ピースバンドのリーダーから聞いた台詞で、以降、自分にとってはこの言葉が3ピースバンドを見る時のガイドラインのようなものになっている。別にメンバー同士、仲良くしてはいけないとか、そういう話ではない。3ピースの他にヴォーカルがいる4人編成や、ギターが2本、あるいはキーボーディストのいる5人編成とは違って、3人それぞれが自決主義で臨まないとバンド自体の推進力がなくなる。件のリーダーがそんな意味で言ったのかどうか分からないけれど、自分としてはそんなふうにとらえている。
その点で言うと、この首振りDollsは、まさに3ピースバンドらしい3ピースバンドである。何しろ3人それぞれの出で立ちが異なっている。いや、別の冗談でも何でもなく、そこも重要だ。公式サイトなどに写る最新のアー写もそうであったように、この日もナオ(Vo&Dr)は和装、ジョニー・ダイアモンド(Vo&Gu)はストライプのシャツにハット、そしてショーン・ホラーショー(Ba)はジャジー上下にネイティブアメリカンの羽根冠を被っていてバラバラだ。ここからも他のふたりに合わせようとしていないことが分かる。サウンドも然り。これは最新アルバム『ドラマティカ』を聴いた時から確信していたことだが、M1「Welcome to Strange Night」からそれぞれの音がお互いに遠慮することなく疾走していく。全体的にダンサブルなM2「散り散り」にしても、Bメロでの奔放なベースライン、サビ後半のドラミングでは、リズム隊が単にバンドのボトムを支えるだけの存在じゃないことを示しているかのようだ。R&RナンバーのM3「悪魔と踊れ」では、リフ、カッティング、ソロと、随所随所でジョニーのギブソンSGがひたすらその存在感を表していて、首振りDollsがロックバンド以外の何者でもないことを堂々と示している。オープニングから3ピースバンドならではの圧倒的なパフォーマンスだった。
この日のライヴは全て椅子席で、観客は着席のままで楽しむことになっていたが、ナオはそれを完全に失念していたようで、オーディエンスを立たせるように煽り、それを受けて何人かの観客が立ち上がった。その後のMCで彼は詫びていたけれども、あんなアツい演奏をすれば気分が高揚するのも無理はなかろう…というのが筆者の見立てだ。オーディエンスにしてもスタンディングがNGであることを承知していただろうに、思わず立ち上がってしまったというのが本当だったのではなかろうか。スタンディング状態も長く続いたわけではないし、決して声を出して騒いだわけではないので、今となってはご愛敬といったところ。それよりも、そう遠くないいつの日にか、首振りDollsのフルスペックのライヴへの期待感をより高めた、ちょっとしたハプニングだった。
中盤、アコースティックアレンジで披露したM10「期待しないで」もなかなか良かったが、演奏の白眉はM9「誰そ彼」だったように思う。世界観がかなりしっかりしている楽曲で、さすがに演奏は二の次とは思わないまでも、メロディーと歌詞を味わうナンバーと勝手に思い込んでいた。だが、もちろんそんなことはない。この日に披露された「誰そ彼」の迫力ときたら、そんなふうに高を括っていたことを恥じるほどに鬼気迫る素晴らしいパフォーマンスであった。メロディーと歌詞、すなわち歌が立っているナンバーなだけに、ある程度のところまでは歌が中心に進行していくものの、歌詞の感情の高ぶりに合わせるかのように、各パートのテンションが上がっていく。歌詞のない部分、とりわけ間奏では言葉がない分、3人それぞれのまさしく形容し難い演奏がぶつかり合う。爆上がりだ。ロックバンドでしか成し得ないスリリングなアンサンブルは圧巻のひと言に尽きた。
本編ラストは《あなたがずっとそばにいるだけで/こんなにも素敵な日々が/続くのなら埋まってるだけでいい》と歌われるブリットポップ的なナンバー、M15「サボテン」。ここがこの日のハイライトであった。長引くコロナ禍の中、首振りDollsも昨年は幾度もライヴの自粛を余儀なくされ、この日も開催に漕ぎ着けたものの、直前での緊急事態宣言の延長の発表を受けて、キャパの縮小等、フルスペックのライヴは望めなかった。そんな中でも熱心なファンが集まってくれた。楽曲途中、ナオはドラムセットを離れて、自らのバースデーライヴが開催されたことを感謝し、“これからも一緒に夢を見ていこうぜ!”と目の前のオーディエンスに向けて言い放った。大きな拍手が鳴る。鳴り止まない。声援、コールが禁止されているのだから、観客は精いっぱいに拍手するしか術がない。でも、だからこそ、そこに熱がこもる。そんな様子を目の当たりにして感極まったナオは、ドラムに戻る前、思わず天を仰いだ。文字通り《あなたがずっとそばにいるだけで/こんなにも素敵な日々が/続く》ことを実感したのだろう。ロックショーのフィナーレに相応しい清々しいシーンだったように思う。
アンコールが終わり、会場を出ようとした時、楽屋近くでたまたまナオと鉢合わせ。“いやぁ、泣いちゃいました”と照れ笑いしていた彼であったが、思わず込み上げて来る感情を抑える必要はまったくないし、そうしたエモーションを出してこその音楽がロックだ。偉大なる先輩バンドはこんなふうに言っていた。
《答えはきっと奥の方 心のずっと奥の方/涙はそこからやってくる 心のずっと奥の方》(「情熱の薔薇」/THE BLUE HEARTS)
この日の感動的なフィナーレは、彼らがロックバンドであることの何よりの証だったのだ。
その点で言うと、この首振りDollsは、まさに3ピースバンドらしい3ピースバンドである。何しろ3人それぞれの出で立ちが異なっている。いや、別の冗談でも何でもなく、そこも重要だ。公式サイトなどに写る最新のアー写もそうであったように、この日もナオ(Vo&Dr)は和装、ジョニー・ダイアモンド(Vo&Gu)はストライプのシャツにハット、そしてショーン・ホラーショー(Ba)はジャジー上下にネイティブアメリカンの羽根冠を被っていてバラバラだ。ここからも他のふたりに合わせようとしていないことが分かる。サウンドも然り。これは最新アルバム『ドラマティカ』を聴いた時から確信していたことだが、M1「Welcome to Strange Night」からそれぞれの音がお互いに遠慮することなく疾走していく。全体的にダンサブルなM2「散り散り」にしても、Bメロでの奔放なベースライン、サビ後半のドラミングでは、リズム隊が単にバンドのボトムを支えるだけの存在じゃないことを示しているかのようだ。R&RナンバーのM3「悪魔と踊れ」では、リフ、カッティング、ソロと、随所随所でジョニーのギブソンSGがひたすらその存在感を表していて、首振りDollsがロックバンド以外の何者でもないことを堂々と示している。オープニングから3ピースバンドならではの圧倒的なパフォーマンスだった。
この日のライヴは全て椅子席で、観客は着席のままで楽しむことになっていたが、ナオはそれを完全に失念していたようで、オーディエンスを立たせるように煽り、それを受けて何人かの観客が立ち上がった。その後のMCで彼は詫びていたけれども、あんなアツい演奏をすれば気分が高揚するのも無理はなかろう…というのが筆者の見立てだ。オーディエンスにしてもスタンディングがNGであることを承知していただろうに、思わず立ち上がってしまったというのが本当だったのではなかろうか。スタンディング状態も長く続いたわけではないし、決して声を出して騒いだわけではないので、今となってはご愛敬といったところ。それよりも、そう遠くないいつの日にか、首振りDollsのフルスペックのライヴへの期待感をより高めた、ちょっとしたハプニングだった。
中盤、アコースティックアレンジで披露したM10「期待しないで」もなかなか良かったが、演奏の白眉はM9「誰そ彼」だったように思う。世界観がかなりしっかりしている楽曲で、さすがに演奏は二の次とは思わないまでも、メロディーと歌詞を味わうナンバーと勝手に思い込んでいた。だが、もちろんそんなことはない。この日に披露された「誰そ彼」の迫力ときたら、そんなふうに高を括っていたことを恥じるほどに鬼気迫る素晴らしいパフォーマンスであった。メロディーと歌詞、すなわち歌が立っているナンバーなだけに、ある程度のところまでは歌が中心に進行していくものの、歌詞の感情の高ぶりに合わせるかのように、各パートのテンションが上がっていく。歌詞のない部分、とりわけ間奏では言葉がない分、3人それぞれのまさしく形容し難い演奏がぶつかり合う。爆上がりだ。ロックバンドでしか成し得ないスリリングなアンサンブルは圧巻のひと言に尽きた。
本編ラストは《あなたがずっとそばにいるだけで/こんなにも素敵な日々が/続くのなら埋まってるだけでいい》と歌われるブリットポップ的なナンバー、M15「サボテン」。ここがこの日のハイライトであった。長引くコロナ禍の中、首振りDollsも昨年は幾度もライヴの自粛を余儀なくされ、この日も開催に漕ぎ着けたものの、直前での緊急事態宣言の延長の発表を受けて、キャパの縮小等、フルスペックのライヴは望めなかった。そんな中でも熱心なファンが集まってくれた。楽曲途中、ナオはドラムセットを離れて、自らのバースデーライヴが開催されたことを感謝し、“これからも一緒に夢を見ていこうぜ!”と目の前のオーディエンスに向けて言い放った。大きな拍手が鳴る。鳴り止まない。声援、コールが禁止されているのだから、観客は精いっぱいに拍手するしか術がない。でも、だからこそ、そこに熱がこもる。そんな様子を目の当たりにして感極まったナオは、ドラムに戻る前、思わず天を仰いだ。文字通り《あなたがずっとそばにいるだけで/こんなにも素敵な日々が/続く》ことを実感したのだろう。ロックショーのフィナーレに相応しい清々しいシーンだったように思う。
アンコールが終わり、会場を出ようとした時、楽屋近くでたまたまナオと鉢合わせ。“いやぁ、泣いちゃいました”と照れ笑いしていた彼であったが、思わず込み上げて来る感情を抑える必要はまったくないし、そうしたエモーションを出してこその音楽がロックだ。偉大なる先輩バンドはこんなふうに言っていた。
《答えはきっと奥の方 心のずっと奥の方/涙はそこからやってくる 心のずっと奥の方》(「情熱の薔薇」/THE BLUE HEARTS)
この日の感動的なフィナーレは、彼らがロックバンドであることの何よりの証だったのだ。
撮影:森好弘/取材:帆苅智之
関連ニュース