それでも世界が続くなら

それでも世界が続くなら

【それでも世界が続くなら
インタビュー】
“あの時、俺たち一緒にいたよな”
って分かるものにしたかった

音楽を聴いてくれた人への感情は
今でもずっとあの感じ

今作の「生活と自粛」も一般的に“明るい”とされるタイプの曲ではないですけど、聴いていると少しホッとするものがあります。

“もうとにかく許してほしい”ってだけの曲ですからね。“遅刻してるし何もできない、けど寝る”みたいな(笑)。それだけの曲なんです。こういうことが人に言えない人にこの曲を歌ってほしいですね。

明るい歌を聴いて元気になることもあるんでしょうけど、僕はこういう曲のほうがしっくりきます。

悲しい時に明るい歌を聴くと逆につらくなるらしいですよ。あとから知ったんですけど、僕がやっていることはなんか…あんまこの言葉は使いたくないですけど、自分への救済だったんだと思うんですよ。ずっとそれを続けてきたんだなって。「猫と飛行機」っていう曲を作った時、飛行機が落ちたっていうニュースをベッドに寝っ転がりながら流し見してしまって。“これが知り合いのことだったら泣いたんだろうな”っていう。僕はそういうひどい人間なんだということは、今回のEPの最後でちゃんと歌っておかないと不誠実だなと。そんな僕でも、“僕の音楽を聴いてくれた人が泣いているのは嫌だな”っていう感情もあるし。

そういう矛盾は、どんな人の中にもあると思います。

そうですね。この感情は、たぶん“人が好き”っていうのとは違うと思うんです。僕なんかの音楽を見つけてくれた人って、僕にとってめちゃくちゃありがたい人で。イジメられていた時に声をかけてくれる人ってほとんどいなかったから。でも、その当時、ひとりだけいたんです。“大丈夫?”って言われた時、すごい泣いちゃって…。僕はどんなに殴られても泣かなかったので、今でも意味が分からないですよ。僕の音楽を聴いてくれた人への感情って、今でもずっとあの感じなんですよね。僕は“僕のことを好きになるわけがない。それが当たり前だ”って思ってどこかで耐えて生きてきたと思うんですけど、僕の音楽を“いいね”って言ってくれる人、僕の音楽に関わってくれた人への感情って、イジメられていた僕に声をかけてくれたあの子に対する感情と同じなんです。僕なりに“こんな僕の音楽を見つけて声をかけてくれた人と、“どうやったら一緒にいられるのか”“苦しまないですむのか”って考えてたらこんなアルバムになったんですけど、できたのかどうかは全然分からないけど、ただ僕は曲を作った。僕はまだ諦めてないんだと思います。

ありがたい人との出会いがあって、伝えたい気持ちもあるのに、会えなくなってしまう現実も描いていますね。「ライフ/アフターライフ」や「遺書」を聴くと、そういうものを感じます。

僕の音楽が好きと言ってくれた人の中で、彼氏がうつ病で、一緒に自殺する約束をしたけど、彼氏だけ死んじゃった人がいるんです。その人が僕のTwitterに“たすけて”っていうリプライをくれたんですけど、僕、それに返せなくて。本当はすごく返したかったんですよ。それが正しいか、正しくないかとか全部どうでもよくて、ただ返事がしたかった。僕を頼ってくれた感じもしたし、信用されている感じもしたんです。だけど、僕は返事をすることができなかったんです。結局、僕は音楽しかできなくて、誰かの人生を助けてあげることができない。その人のことをなかったことにして、“大丈夫。幸せになれる”なんて僕には歌えなくて。そうやって悩んでいたら、結局歌を作ってしまったんです。今でもそれが良いことなのか悪いことなのか分からないけど、その人が「ライフ/アフターライフ」を配信のライヴで聴いてくれて、その人のTwitterのプロフィールがこの曲の歌詞になっていたんです。まだ音源として出していない曲だから、ライヴで聴いたのを聞き取って書いてくれたんでしょうね。それを見て“歌っていいんだよ”って言われた気がしたんです。彼女にとって“生きている”っていうのは、きっと苦しくて悲しいことなんだと思います。でも、彼女が生きていたから僕が曲を作ったのは本当のことで。これって、彼女に対してだけじゃなくて、僕の音楽を聴いてくれた全ての人に対する気持ちでもあるんです。生きていることは苦しくて、“生きている=素晴らしい”とは言ってあげられないけど、僕はそういう人に会えて、嬉しかったんです。今回のタイトルじゃないですけど…コロナ禍で人と会えなくなったり、死んでしまった友達もいるけど、僕はずっと誰かと一緒にいたかったし、“君と一緒にいたかったんだけどな”って、今もまだ思ってます。

取材:田中 大

EP『僕は君に会えない』2021年3月17日発売 Bellwood Records/ROCKBELL
    • BZCS-1189
    • ¥2,200(税込)
それでも世界が続くなら プロフィール

2011年結成、千葉県出身のロックバンド。対バンを含め、数多くのライヴ活動を行ないながら、12年2月に1stアルバム『彼女の歌はきっと死なない』をタワーレコード限定でリリース(2014年1月に一般流通で再発)。同作はタワーレコードのインディーズ・チャートで1位を獲得し、オリコンのインディーズ・チャートでも6位を記録。メディア露出が皆無に等しい状況下、口コミやネットで話題が広まり、じわじわとセールスを伸ばす。同年9月に2ndアルバム『この世界を僕は許さない』を発表すると、オリコン・ウィークリーチャートで88位にランクインし、全国のCDショップ店員やコアな音楽ユーザーにその名が知れわたる。イジメや虐待、家庭環境や病気などを題材にしたメッセージ性の強い逆説的な歌詞が多く、グランジやシューゲイザー色の強いノイズギターを合わせた変則オルタナティヴサウンドも印象的で、リスナーから熱烈な支持を得ている。13年9月にメジャー1stアルバム『僕は君に武器を渡したい』をリリースし、14年1月に1stミニアルバム『明日は君に会いに行くから』を発表する頃には、その知名度はいよいよ全国区に。21年3月には1st EP『僕は君に会えない』をリリースした。それでも世界が続くなら オフィシャルHP

「ライフ/アフターライフ」MV

OKMusic編集部

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