【ザ・クロマニヨンズ
ライヴレポート】
『ザ・クロマニヨンズ
MUD SHAKES 2021』
2021年2月20日
at 東京ガーデンシアター
昨年2月に中断したツアーからほぼ1年。コロナ禍で収容人数を減らし会話も控えているため静かな空気が漂っている会場の光景を一変させたのは、4人がステージに現れた瞬間だった。いつもの扇動的なMCに導かれて登場し、高まる期待をはるかに超えるステージングを展開。“オーライ、ロックンロール!”と甲本ヒロト(Vo)がシャウト(Vo)し、1曲目の「VIVA! 自由!!」が始まった――。
初めて生で体験する『MUD SHAKES』の楽曲たち。観客も歓声を抑えながら、彼らのパワフルなライヴに手拍子や拍手で反応していく。桐田勝治(Dr)の激しいビートと甲本のハーモニカが高いテンションで切り込んでくる「暴動チャイル(BO CHILE)」でさらに会場の空気が張りつめ、真島昌利のギターと小林 勝のベースのユニゾンフレーズはより重みを増して迫ってくる。
コーラスがポップな「浅葱色」、演奏のキレの良さが光る「新オオカミロック」など、アルバムの曲順通りに進行していく中、ホッとさせてくれたのは“アルバム『MUD SHAKES』では、次の曲がA面最後の曲になります”と甲本ヒロトに紹介された、ポップでやや肩の力の抜けた「ドンパンロック」だった。
送られる盛大な拍手に対し、“手が疲れるだろう?(笑) 今日はせいいっぱい楽しんでいってくれ! みんなは疲れなくていいから、俺たちがヘトヘトになるぐらいやるから楽しんで! 今日は配信でいろんなところから観てくれている人がいます。アルバム以外の曲もやろうかな”と甲本。ピックアップされたのは「生きる」「ペテン師ロック」といったキャッチーなメロディーが印象的なナンバーたち。磨き上げられたサウンドと甲本の強靭な喉で、さらにボリューム感と勢いが増しているのが伝わってくる。ライヴが一年振りとは思えない剥き出しのワイルドさと、そこに一瞬で到達する沸点の高さ。これこそが彼らのライヴの醍醐味だ。
“このツアー、今日が初日です。もしかしたら最終日かもしれない。貴重なところに一緒にいてくれてありがとう”と観客に感謝を述べたあと、「妖怪山エレキ」からアルバム『MUD SHAKES』のB面に突入。細かくリズムを刻むドラムがシャープなエッジを描く「メタリックサマー」、ブルースロックの「空き家」、カウベルが踏切の音を連想させる「ふみきりうどん」と、多彩なナンバーで楽しませる。そして、再びアルバム収録曲を離れ、“ここからパーっと盛り上がろう、お祭りにしよう!”と「東京ブキズキ」「エルビス(仮)」といったアッパーなナンバーを立て続けに披露。ステージ上はカラフルなライティングに染まり、ますます華やかなライヴへと彩られていく。
ラストはアルバムの最後に収録されている曲「かまわないでくださいブルース」。ドゥーワップふうのコーラス、真島昌利のスライドギターなど、緩やかな雰囲気で終了した。…と思ったら意外にも、ステージ脇に引っ込むことなく、そのままステージに残りアンコールを続けるという事態に。“一回、引っ込もうかと思ったけど、面倒くせえな(笑)。引っ込んでもやることねえし。今年最初のライヴ、とっても楽しかった!”との言葉のあと、持てる力を最大限に出し切るように「エイトビート」「ナンバーワン野郎」などパワフルな楽曲で攻め続け、本編もアンコールも区別なしの最強のロックンロールショーとしてこの日は完結した。
今後のツアー開催は未定だが、数十本分のツアーにも匹敵する熱量を注ぎ込んだこの日のライヴ。生であっても配信であっても、観客も極上の満足度を味わったことだろう。2021年の彼らの動向が楽しみだ。
撮影:柴田恵理/取材:岡本 明
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