三谷幸喜の新作舞台『大地(Social
Distancing Version)』が開幕へ! 
初日前のフォトコールをレポート

三谷幸喜による新作舞台『大地(Social Distancing Version)』の東京公演が2020年7月1日(水)からPARCO劇場にて上演される。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、当初予定していた上演スケジュールや劇場の配席が見直され、タイトルも『大地』から『大地(Social Distancing Version)』と変更になった。さらにイープラス「Streaming+」を使用したライブ配信も決定している。初日を前に行われたフォトコールの様子を写真と共にお伝えしたい。
舞台『大地(Social Distancing Version)』フォトコールの様子
舞台『大地(Social Distancing Version)』フォトコールの様子
本公演は、1994年『出口なし!』以降、PARCO劇場をホームグラウンドとして、新作を発表し続けている三谷幸喜が書き下ろす新作舞台。この『大地』を皮切りに、7月から8月にかけ、三谷のライフワークである『ショーガール』『其礼成心中』と3作品連続上演される予定だ。
 
物語の舞台は、とある共産主義国家。独裁政権が遂行した文化改革の中、反政府主義のレッテルを貼られた俳優たちが収容された施設があった。強制的に集められた彼らは、政府の監視下で、広大な荒野を耕し、農場を作り、家畜の世話をした。過酷な生活の中で、なにより彼らを苦しめたのは、「演じる」行為を禁じられたことだった。

舞台『大地(Social Distancing Version)』フォトコールの様子
舞台『大地(Social Distancing Version)』フォトコールの様子
正義のために演劇で社会を変えようとする俳優、「観客からのオベーションをもう一度味わいたい」とその瞬間に再び出逢うためひたすら努力を続ける俳優、生まれもったその美しい容姿のためになるべくしてなった俳優、生まれた瞬間にその家柄のために俳優として生まれた俳優、なんとなく俳優になってしまった俳優……。
 
その理由はどうであれ、みな、役者としてしか生きる術を知らない俳優たちだ。彼らが極限状態の中で織りなす、歴史と芸術を巡る群像劇の幕が上がる……! というあらすじになっている。

前説をする三谷幸喜
この日のフォトコールは、まず三谷の前説から始まった。
 
冒頭、「舞台俳優たちは今、なかなか舞台や演劇に携わることができなくて、演劇関係者はすごく苦労しているところでございますけれども、(この舞台は)それとほぼ同じような設定で、『演じることができない』人たちが集まっている、と。本を考えたのは去年なのですが、我ながらなんという先見の明なのかと……」と話し、早速笑いをとる。
舞台『大地(Social Distancing Version)』フォトコールの様子
舞台『大地(Social Distancing Version)』フォトコールの様子
今回は「Social Distancing Version」ということで、密閉・密集・密接の“三密”を避けた演出をしたと主張する三谷。
 
例えば、舞台となる有刺鉄線に囲まれたおんぼろの収容所は、八百屋舞台(※客席に対して舞台奥が高くなるように、傾斜のついた舞台)に8つのベッドを格子状に配置して表現。三谷は「リアルで考えればベッドは並ぶはずですが、俳優たちは基本的にそれぞれの穴(スペース)の中で台詞をいいます。部屋の中の設定なのですが、換気がいいように隙間があって……」と、やや苦し紛れな(?)解説をしていた。

舞台『大地(Social Distancing Version)』フォトコールの様子
舞台『大地(Social Distancing Version)』フォトコールの様子
前説の終わり、三谷は、1924年に日本初の新劇の常設劇場である築地小劇場が誕生したことを挙げ、「(築地小劇場では)幕があくときに銅羅を鳴らして舞台が始まったと言われています。いま、(新型コロナウイルスの感染拡大の影響で)なかなか舞台が、芝居が、できない状況にありますけれども、必ずまた芝居ができるいつもの状態に戻りたいなと思っておりまして、僕らがその先陣を切ることになりました。ということで、今回の芝居は、銅羅の音から始まります」とも話し、思いを語っていた。

舞台『大地(Social Distancing Version)』フォトコールの様子
舞台『大地(Social Distancing Version)』フォトコールの様子
続いて公開されたシーンは、第1幕の2場。映画スターのブロツキー(山本耕史)が収容所に到着した翌日、収容所の管理官である政府役員のドランスキー(小澤雄太)が、大手劇団出身で裏方兼務のチャペック(大泉洋)たちのバラックを訪れる。
 
ブロツキーやチャペックのほか、女形の役者であるツベルチェク(竜星涼)、ものまね芸人のピンカス(藤井隆)、学生のミミンコ(濱田龍臣)、大手劇団出身・演出家兼務のツルハ(相島一之)、サーカス 団出身のプルーハ(浅野和之)、大手劇団出身のバチェク(辻萬長)と個性豊かなメンバーが共同生活をしていた。指導員のホデク(栗原英雄)が、収容所にいる俳優たちをドランスキーに紹介してゆく序盤のシーン、約20分間が公開された。 

舞台『大地(Social Distancing Version)』フォトコールの様子
舞台『大地(Social Distancing Version)』フォトコールの様子
山本が半裸で登場したり、藤井がモノマネでスベったり、浅野が渾身のパントマイムを披露したりと、笑いの小ネタが随所で挟まれるものの、基本的にはシリアスなテンションで進んだ。約2時間55分(休憩25分含む)の上演予定で、果たしてこれからどんな展開になっていくのか予想がつかず、早く全体像を見たくなった。
   
公開されたフォトコールの中で印象的だったのは、濱田が演じるミミンコの「きっとまた昔の暮らしが戻ってくる。その頃までなんとしても生きのびなくてはいけない」という台詞。収容所の中で、登場人物たちは行動に制限がある設定だと理解はしているのだが、やはり新型コロナウイルスの感染拡大によって、公演が中止になったり延期になったりして“制限”されてきた現実の演劇人の思いと重なり、胸が熱くなった。

舞台『大地(Social Distancing Version)』フォトコールの様子
三谷は脚本を書くときに、俳優へ台詞を書き下ろすことで知られている。今回の『大地』は、そんな三谷が俳優への愛を込めて描いた、言うなれば「三谷流俳優論」。激動の時代を生きる俳優たちの物語を、いまを生きる私たちと重ね合わせて、ぜひご覧いただきたい。なお、この後、フォトコールの模様を収めた動画も掲載するので、お楽しみに。

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