KAMIJOが語る「長編シンフォニック・
メタル」ソロ・プロジェクト

3月5日(水)にKAMIJOは、古巣ワーナーミュージックジャパンより1stミニ・アルバム『SYMPHONY OF THE VAMPIRE』を発売。本作は、全'七楽章'という形のもと構築された作品。彼が、どんな想いのもと、ソロとして活動を始めたのか?!彼の言葉へ、まずは耳を傾けていただきたい。
Versaillesは、2012年12月20日・NHKホールでのライブを持って活動を休止。VersaillesのリーダーであるKAMIJO氏がふたたびソロとしてメジャーの舞台へ立つまでの流れから教えていただけますか?
KAMIJO
Versaillesの活動停止後、明けてすぐの2013年1月に、僕は「夏のソロ・デビュー」を宣言。そこへ向け、まずは新たな環境作りから着手し始めました。Versaillesの活動休止の理由でもあるので、まずはスタッフを含めたチーム体制を土台からしっかり、丁寧に作りあげたかったんです。そのためにも、ある程度の準備期間は必要なことでした。
―音楽というのは、いろんな人たちのチームワークのうえで伝えられるもの。
KAMIJO
そうなんです。音楽というのは、表現者が描き出す楽曲やビジュアル面のみならず、その世界観を伝えてゆく人たちや環境、それらすべての事柄が重なりあったうえで生まれてゆくもの。僕は、その音楽に誇りを持って表現したかったからこそ、その環境を作るまでは安易に動きたくはなかった。そして今、その環境が整ったからこそ、ようやくスタートラインに立ったわけなんです。
―そのスタートに先駆け、昨年の8月28日に、KAMIJO氏はインディーズという形のもとシングル『Louis~艶血のラヴィアンローズ~』をリリースしました。なぜ、最初にインディーズという形を取ったのでしょうか?
KAMIJO
Versaillesの活動休止直後から、ワーナーミュージックジャパンの担当ディレクターの方とは、ふたたび共に手を組んでという話はいただいていました。でも、先に上げた環境作りも含め、一度、'みずからの手で作品を作り、届けたい'と気持ちを強く持っていたことから、インディーズという形を取りながら『Louis~艶血のラヴィアンローズ~』というシングル作品を作り、この手で、世の中へ解き放ちました。
―『Louis~艶血のラヴィアンローズ~』のMusic Clipでは、KAMIJO氏の恩師でもある、元MALICE MIZERのリーダーであり、現Moi dix MoisMana様が参加。二人の競演は、当時、大きな話題を集めました。
KAMIJO
音楽の作り方さえろくにわからなかった自分を側に置いてくださったのが、当時MALICE MIZERとして活動していたManaさんでした。あの頃は、側に付くことで、音楽/表現面などあらゆることを無言で教えてくださいました。その感謝すべき恩人と、こうやって映像を通して競演出来た喜びは、声を大にして言いたかったことなんです。

―『SYMPHONY OF THE VAMPIRE』を耳にして感じたのが、良い意味で「表現してゆく音楽性にブレがないこと」でした。言うなれば、LAREINE/Versaillesを通し表現し続けてきた音楽性は、そのままKAMIJOというソロの形態を通しても、連綿と受け継がれてきていませんか?
KAMIJO
そこは一環しています。たとえば、どんな料理を作ろうと、ベースとなる味付けは一環してゆくのと同じように、僕自身の持っている要素は、どんな楽曲を描くにしてもけっして変わることはないと思います。今回、作りあげた『SYMPHONY OF THE VAMPIRE』にしても、構想自体はもう1年以上前からあったことでした。
―そんなに前から…。
KAMIJO
LAREINE,Versaillesと、つねにフランスの歴史にまつわる世界を表現してきた自分だけに、ソロとなっても、そこの意識を変える必要性などまったくなかったし、変えようと思う必要性さえなかったこと。LAREINE時代に僕が追求し続けたのが、「花」というテーマ性。誰もが、「花は散るときが美しい」と言いますが、LAREINEでは、散る瞬間ではなく、咲き誇っている瞬間のことを美しいと思いたいという信念のもと、音楽を表現してきました。LAREINEを通し辿り着き、そこで新たに芽吹いたのが、「永遠を手に入れてしまったもの」。それをVersaillesではテーマに据えて、表現。メジャー第1弾シングルとなった『ASCENDEAD MASTER』に描き出した「永遠の命を手に入れたVAMPIREが、孤独にさいなまれてゆく」。それこそが、Versaillesを通して求め、描き続けてきたテーマでした。その想いを経て、ソロとして描き出したのが、シングル『Louis~艶血のラヴィアンローズ~』や、今回のミニ・アルバム『SYMPHONY OF THE VAMPIRE』に綴り始めた物語なんです。
―と言うことは、KAMIJO氏が音楽を通し表現し続けてきた物語は、ズーッと一つの連なりを持って続いてるということだ。
KAMIJO
その通りです。その都度、表現してゆく形態が違ってきたとはいえ、そこ(バンド)を通し僕の描くものが変わってしまったら、それは'KAMIJOとして描き出す音楽'ではなくなってしまうことなので。
―KAMIJOというソロ・アーティストとして描くうえで取り上げた'題材の一つ'が、「フランス革命の勃発により処刑された王妃マリー・アントワネットの次男であり、幼き頃からタンブル塔に幽閉され、10歳の若さで命を落とした'ルイ17世'」でした。
KAMIJO
ルイ17世の歴史を紐解くと出てくるのが、「何者かが幽閉したルイ17世を連れ出し、その身代わりがタンブル塔で亡くなった」。つまり、「ルイ17世は生き延びている」という噂話。過去には「自分がルイ17世だ」と主張する者まで現れたように、幾度となく「ルイ17世生存説」が流れてきました。が、20世紀に入り、保管されていたルイ17世の心臓のミイラとマリー・アントワネットの毛髪とのDNA鑑定が行われ、その心臓はルイ17世のものと断定。生存説は、あくまでも噂だったことが証明されています。医学の進歩により、諸説飛び交った噂にも、一つの結論が下されたわけですけど。見方を変えるなら、「医学や文明の進化次第で、過去の歴史が大きく塗り替えられてゆく可能性は、今でもある」こと。たとえばの話、僕が「永遠」をテーマに据えてゆく際に投影しているVAMPIREだって、実在しない者として、いまだ証明されたわけではない…。つまり、「実存する可能性だってある」と言うことじゃないですか。それと同じように、僕が『SYMPHONY OF THE VAMPIRE』の中に描き出した、'タンブル塔に幽閉されたルイ17世は何者かによって連れ出され、VAMPIREとして永遠の命を与えられ、生き延びていた'という説だって、可能性は、けっしてゼロではない。
―確かに。
KAMIJO
この物語を具体的に語りますと。『SYMPHONY OF THE VAMPIRE』は、全部で七つの楽章から成り立った作品。第一楽章「Presto」は、'ルイ17世の身代わりになって亡くなった少年の視点から捉えた、この物語の粗筋'になっています。第二楽章「Sacrifice of Allegro」には、'幽閉されたタンブル塔から抜け出したルイ17世が、母、マリー・アントワネットが断頭台の上で処刑される姿を目にしてしまう、衝撃的な瞬間'を投影。第三楽章「Royal Tercet」でルイ17世は、ありし日の母と過ごしたベルサイユ宮殿での'思い出に耽り'。間に『Louis~艶血のラヴィアンローズ~』の一節を挟み込みながら…。第四楽章「Dying-Table」へは、'VAMPIREという、飢えた獣のような青年に成長したルイ17世'の姿を投影。第五楽章「Sonata」では、'もう一人のルイ'と出会い、互いに友情を交わしあってゆく様を描写。第六楽章「満月のアダージョ」で、'誰が何のために彼をタンプル塔から連れ出したのか'が明らかになり、そして…。第七楽章「Throne」を通し、'ある、一つの結末'を描き出しています。
―まさに、長大な一つの物語であり、壮大なる音絵巻として描き出しましたね。
KAMIJO
今回の物語へ僕は、ルイ17世が'雄偉な王となる'姿を描きたかった。そのためにも、これだけのボリュームは必要だったんです。もちろん、この物語は、あくまでも「もしも…」という前提のもとで作り上げた'If Story'です。でも、科学の進化と共に歴史も塗り変えられるように、これもまた、一つの真実の物語?!として楽しんでいただけたらなと思っています。また、今回の壮大な物語を具現化してゆくうえでは、表現力の卓越したミュージシャンの協力が必要でした。そのうえで参加してくれたのが、摩天楼オペラのギタリストであるAnzi、ベースのJu-ken、そして山崎慶というドラマーの3人でした。彼らは本当に素晴らしいプレイヤーたち。僕自身の描き出した世界観をしっかりと構築してくれたうえで、さらなる表現要素を組み込んでくれたことから、より芳醇な世界観を作り上げることが出来ました。
―これだけ壮大/長大な世界観を描き出すとなると、制作日数的にも大変だったんじゃないですか?
KAMIJO
自分の頭の中へ、それぞれの曲世界が明瞭にあったからでしょうね。アッと言う間に楽曲が出来上がれば、レコーディングも'七楽章で1曲'という感覚のもと、1日ですべて録り終えました。僕にとって「曲が完成した」というのは、「描きたい物語や、伝えたい想いがしっかりと固まった時点」のことを指しています。それさえ出来てしまえば、あとは、頭の中にある音楽を、具体的な音や言葉として形にしていくだけのことですから。
―今回は、『SYMPHONY OF THE VAMPIRE』に収録した七楽章すべてを映像化しています。それも、この物語を伝えるうえで必要なことだったのでしょうか?
KAMIJO
『SYMPHONY OF THE VAMPIRE』は、歌詞を通し、聞き手の想像に物語を委ねていく作品ではないんです。むしろ、僕が作りあげた物語を忠実に感じて欲しい。そのためにも'史実'や'STORY'を文字や写真として用意したわけだし。歌詞の世界観を正確に伝えてゆくためにも、映像は求めていた表現でした。だからこそ、脚本作りからしっかり表現していける監督さんにお願いし、この物語を子細に伝え。そのうえで、僕の描きたかった想いが曲がらないようにということを心がけながら。まるで1本の映画を作るように、この映像作品を作り上げました。
―ここでは、KAMIJO氏の言葉を借りて、『SYMPHONY OF THE VAMPIRE』に収録した七楽章それぞれの世界観をお伝えします。
◆第一楽章「Presto」
「イントロの最初のフレーズこそが、この物語の'メインテーマ'。初っぱなからフル・オーケストラでドーンと迫りゆく、まさにシンフォニック・メタルと呼ぶに相応しい楽曲。Anziのメインとなる旋律をなぞるように弾くギター・ソロへは、まさにAnziらしさが出ています。歌詞は、ルイ17世の身代わりとなり、タンブル塔に幽閉された少年の視点で語った、この物語の粗筋になります」
◆第二楽章「Sacrifice of Allegro」
「2バスのドラム音を軸とした、絶妙なテンポ・チェンジから始まる楽曲です。激しいのにすごく心地好さを持った、ライブの様が見えてゆく楽曲にもなりました。歌詞を小説のごとく記したように、とてもわかりやすく物語が伝わっていくと思います」
◆第三楽章「Royal Tercet」
「この楽曲の持つ激しい転調に、ついて来れるか?!と、まずは伝えておきます。この曲は、タンブル塔から連れ去られたルイ17世が、ベルサイユ宮殿で母と過ごしていた頃の、穏やかだった日々を振り返り、在りし日の思い出に浸ってゆく楽曲です」
◆第四楽章「Dying-Table」
「第三楽章までは、少年時代のルイ17世を描きましたが。第四楽章へ入る前に、『Louis~艶血のラヴィアンローズ~』の一節を組み込むことで、何故、ルイ17世がVAMPIREになってしまったのかを説明。詳しく知りたい方は、ぜひ、『Louis~艶血のラヴィアンローズ~』を聞いてください。VAMPIREとなった、青年期のルイ17世。欲望を剥き出しにしながらも、まだ(人を襲い、その血を吸う)狩りには慣れてない様を、ここには描きました。中に出てくる「Let's me Bite your neck!」という歌詞の一節は、昨年夏に、限られた人たちとだけ行ったUstream中継のとき、みなさんが僕に言って欲しい言葉を募集したところ、とある海外の方が求めた言葉。作詞をしているとき、その言葉が甦えり、採用させていただきました。ちなみに、タイトルのネーミングの意味がわかってくれる人ほど、僕は好きかも知れません」
◆第五楽章「Sonata」
「第四楽章の最後に流れる、♪ジャジャジャジャーン♪という一節。そのフレーズをきっかけに、第五楽章へと入るわけですけど。この楽曲は、タイトル通りソナタ形式を取った作り方をしています。と同時に、もう一つ、別の意味も重ねました。そこは、聞いて謎解きをしてください。この歌では、ルイ17世に加え、もう一人のルイが登場します。そのルイは、歴史の中へ実在した人物。それが誰か、あなたはわかりますか?!この物語には、ルイ17世ともう一人のルイが、男どうしの友情を深めながら、共に狩りへ興じてゆく様を描き出しています。ここには、まだまだ愛の意味さえわからない、心が未熟なルイ17世に対して、もう一人のルイが愛について教示してゆく様も記しました」
◆第六楽章「満月のアダージョ」
「こちらは、もう一人のルイの視点で書き綴った楽曲。彼の背負った悲劇的な運命を、とてもストレートに描写しています。そして…」
◆第七楽章「Throne」
「Throneとは、王冠という意味。第一楽章「Presto」と同じメインテーマをモチーフに据えた楽曲になっています。メインテーマとなる一節ですが、たとえば第二楽章「Sacrifice of Allegro」では、民衆の声の後に流れてきたりなど、この作品の中、いろんなヶ所で流れますので、そこにも耳を傾け、チェックしてください。この歌詞で僕が一番大切にしているのが、とある一節。むしろ、その文節こそが、この楽曲の一番大切な部分であり、この物語の結末にもなっています。その衝撃のクライマックスに涙して下さい。」

―死んだはずのルイ17世がVAMPIREとなり、雄偉な王となるまでの物語を描き出した、『SYMPHONY OF THE VAMPIRE』。先にも語っていたように、この物語は、まだまだ先へと続いていくわけですよね。
KAMIJO
ルイのお話はまず一度今作で完結しますが、まだ物語は続いていきます。どのように展開するか楽しみに待っていて欲しいですね。
―そして、嬉しいお知らせが。ついに、1st Liveの開催が決定したと聞きました。
KAMIJO
僕の生誕日である7月19日に、Tokyo Kinema Clubで、ソロとして初となるワンマン・ライブを行います。東京で一番ヨーロッパの雰囲気に近いTokyo Kinema Clubという舞台を通し、僕の世界観を表現していきますので、楽しみに待っていてください。
―これからも、KAMIJO氏自身の「表現してゆく姿勢」は一切ぶれることなく。物語もまた、連綿と続いていくんでしょうね。
KAMIJO
はい。ただし、「蛹が蝶になるような進化」はしていきたいと思いますし。僕自身、ファンの方々へ僕の奏でる音楽を次々届けていきたい気持ちを強く持っています。なので、作品のリリースに関しても、どういう形を取るにせよ、どんどん届けていきたいなと思っています。
―今後の展開も楽しみにしています。では最後に、今のKAMIJO氏にとって、『SYMPHONY OF THE VAMPIRE』はどんな1枚になりましたか?!
KAMIJO
ボリュームとしては、フル・アルバムを作りあげたくらいの意識でいます。まさに、デビュー・アルバムと言っても過言ではない作品になりました。それと、この『SYMPHONY OF THE VAMPIRE』を通し、僕が一番に言いたかったのが、この物語は、ある意味では'一人の少年が王になるまでの男版シンデレラストーリー'であること。なので、聞いてくださる方々も、少年少女が夢見るのと同じ気持ちで聞いてもらえたらなと思います。
――インディーズ盤として出した『Louis~艶血のラヴィアンローズ~』が、新たな物語を書き記してゆくうえでの'序章'だとしたら、この『SYMPHONY OF THE VAMPIRE』は、連綿と続く長大な物語の'第一章'となる部分。その物語をすべて補完してゆくうえでも、まずは、この始まりのストーリーをしっかり手元に置いていただきたい。(TEXT:長澤智典)

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