UNIDOTS、“孵化”の瞬間を明示した
ワンマン『UNIDOTS live 2019 - 孵化
-』をレポート

UNIDOTS live 2019 - 孵化 -

2019.3.3 渋谷WWW
卵が孵る(かえる)には温もりはもとより、周りからの愛情も不可欠だ。そしてこの日のUNIDOTSのライブからは、その温もりと愛情が演者/観者各々で、これまでも含めしっかりと育まれており、遂には美しい孵化へと至らせた場面に立ち合わせてくれるものがあった。
瑞葵(Vo)とコンノツグヒト(B)によるUNIDOTSがワンマンライブ『UNIDOTS live 2019 - 孵化 -』を成功させた。単独公演としては実に1年4ヵ月ぶりだったこの日。とは言え昨年は2マン企画ライブを春夏秋冬と年に4回に渡り行い、その全てを2人はソールドアウトさせてきた。しかも驚くべきことに彼らはこれまで音源のリリースは一切無し。MVも1曲のみだ。にも関わらず着実な毎度のキャパシティのアップは、まさに人から人へとその良さが伝聞され、広がり、ここまでの成果に至ったと言える。
UNIDOTS live 2019 - 孵化 -
今回の会場は渋谷WWW。スタンディング形式ながらアンビエンス感を増させる高い天井を持つ会場だ。彼らの音楽性には凄く似合っているシチュエーションのように映る。
開演時間を過ぎ、しばらくするとスーッと場内が暗転していく。真っ暗な中、未発表曲「Signs」の同期が流れ出す。鼓動のようなビートと深いエコーのかかった深淵性のあるメロディフレーズ、そして流れ星のような時折り入る電子音。そんな中、まずはボーカルの瑞葵が登場。光量の高い白色のバックライトの関係で、その衣装は半透明に映り、白いドレスのようにも見えるし、羽をまとった蛹のようにも映る。そのSEをバックにハミングを重ねていく瑞葵。間を置きサポートギターの木下哲とマレットを用いたドラムのUも現れ、そこに自身の音を感情の赴くままに叩きつけていく。少し間を置き白いロングコート姿のコンノも登場。躍動感のある特有の5弦ベースを加えていき、楽曲に生命力と活力を加えていく。徐々に荒々しい展開を魅せていく同曲。轟音の中の神聖性を帯びた瑞葵のハミングが場内を昇天へと誘っていく。
次曲の「白昼夢」が現れると、切なくも影を帯びた歌声がちょっとした歌謡性や哀愁を交えたメロディやサウンドと共に会場に伸びやかに広がっていく。未だ愛しさが溢れ出しそうな胸中を、けっして外に漏らさず、箱の中に抑え込むような心の機微の歌が痛い。
UNIDOTS live 2019 - 孵化 -
UNIDOTS live 2019 - 孵化 -
「今日は一緒に最後まで楽しみましょう」と瑞葵。エレクトロ性の加味も特徴的な「バスルーム・リフレクション」では徘徊するサーチライトの中、歌物語を演じるように時折ジェスチャーを交えながらも両手でしっかりとブームマイクを握る瑞葵。続く「渇き」では再び歌謡性を帯びた面が現れ、同曲の転調場面には毎度のことながらグッとこさせられる。
場面を変えるように若干の間を置き入った「サンデーブルー」ではコンノも歪んだベースソロをプレイし、サイケなバックのライティングと共にエレクトロな要素が再び混在した「sayosigure」では、持ち前のダンサブルで躍動感たっぷりの音楽性が場内に更に彩りを添えた。「東京の精神」では、突如楽曲を飲み込むが如く現れた怒涛性と、そこから抜け出さんと言わんばかりの瑞葵のスクリームも記憶に深く残っている。
UNIDOTS live 2019 - 孵化 -
UNIDOTS live 2019 - 孵化 -
「memento」では瑞葵もハンドマイクスタイル。と同時により歌に感情が込められていく。アーバン性を帯びた繰り返されるベースフレーズと時折交えるプル。Uもレアグルーブ的な16ビートを刻んでいく。
「神様の言うとおり」以降は会場もたゆたうように揺れ始める。フロア頭上のミラーボールも回り、ひと時ながら至福と幻想性を与えてくれた。また同じく明るさを帯びた「狐の嫁入り」に入るとファンキーなサウンドが場内に躍動感を寄与していく。マイクスタンドを片手で握り、半身をこちらに向けフォクスサインを時折贈る瑞葵。気づけば当初はたゆたっていた会場も、徐々に身体全体でリズムを取り始めている。
歌謡性やアーバン性が映えた「そんな自分が一番嫌い」では、瑞葵のラップ調のフロウを活かした歌い方も耳を惹いたし、コンノのダウンピッキングと共に会場を走り出させた「僕らの終着点」では、瑞葵のハイトーンな歌声も伸びやかに上昇感を伴い場内に広がっていく。対して「舗道に咲いた花」は、途中合流したバンドサウンドが歌物語を可視化させ、サビでグワッと現れる力強いメロディがスタンドアローンのように凛とした強さを保ちながら広がっていく。最後の「あなたは嘘つきだ」では、鍵盤とストリングスの音も絡み、高い天井に昇華していくように吸い込まれていく歌声と共に、あなたに向けての歌が自分に向けての歌に変わった瞬間を見た。
UNIDOTS live 2019 - 孵化 -
UNIDOTS live 2019 - 孵化 -
アンコールではまず瑞葵とコンノの2人だけが現れ、新曲「睡眠」を始めた。幻想的なミニマルサウンドと硬質な打ち込みのドラムをバックに、クールさを帯びたウェットな瑞葵の歌声が場内をたゆたわせる。正直まだ未完成を感じ、そのぶん近い将来の発展へと想いを馳せさせた。
通例通り本編ではほぼMCは皆無。対してこのゾーンではその分も含め、ここへ来てくれた方への謝辞と今回のライブタイトルの「孵化」についてを紐解いてくれた。「去年は2マンシリーズを成功できた一方、思い詰めることもあり、逆にみなさんとチームとなり、このUNIDOTSが作り上げられている実感がやるごとに湧いてきた。それはまるで大事な卵を温めているようで、それを言葉で表したのがこの孵化でした。この孵化には<兆し>という意味も込められていて。UNIDOTSが今後もどんどん大きくなり広がっていき、未知の可能性をずっと持ち続けていく、今日がそのスタートでもあったんです」と告げ、続けて7月6日に名古屋 APOLLO BASE、7月7日心斎橋 VARON、7月27日渋谷WWWにて、『UNIDOTS Live Tour 2019 幼生 - larva -』が行われることも発表。歓迎の大拍手がステージに向けて送られた。
UNIDOTS live 2019 - 孵化 -

UNIDOTS live 2019 - 孵化 -

「よちよち歩きが始まったばかりのUNIDOTSですが、今年もよろしくお願いします!!」と告げ、再び木下とUと共に四つ打ちの上昇感のあるディスコチューンの「裏街道ハイウェイ」をプレイ。力強いサウンドと歌声と共に、これからこの道を迷わずに進んでいく決意を満場に明示する。「多分何度だってめげるし、嫌なこともこれから何度も出会うでしょう。そんな時、みなさんが居ることを感じられるのが心から嬉しいです」と謝辞。「ずっとずっと初心を忘れないように昔からやっているこの曲を最後に」と「かえるの子」を始める。ラジカセから流れているかのような懐かしげな鍵盤音に歌を乗せていく瑞葵。2番からは歌を更に広げるようにバンドサウンドが加わり、ラストに向けじわじわと安堵感が場内を包んでいく。「蛙=還る=孵る」と、見事にこの日のライブタイトルとの合致を見せた瞬間だった。
深く長いお辞儀をしてステージを降りた4人。その後スクリーンが降り、新MV「裏街道ハイウェイ」が流れ始める。前作「舗道に咲いた花」が非常に情景感を重視した抒情性を帯びていたのに対し、こちらはそれとは対照的。MV出現黎明期を感じさせる作りやレトリック、シュールさを有している。彼らの感性やユーモア、いい意味での軽さをも是非このMVを通して感じて欲しい。

見事孵化の瞬間を我々に明示してくれたUNIDOTS。この孵化が続いては蛹化に至り、遂には羽化を迎えていく。その羽化の際にはきっと美しく多くの人々を魅了する成虫の姿を魅せてくれるに違いない。さなぎから成虫へと脱皮し、その美しい姿を万人の前で披露し、見事に大自然の中でも、ものともせずに自分を誇示していくさま……。少々気が早いが今日のライブを観て、そんな彼らの姿に想いを馳せ、その美しさを確信している自分が居た。

文=池田スカオ和宏 撮影=Koji Nishida (nirnor inc.)

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