MANKAI STAGE『A3!』～AUTUMN & WIN
TER 2019～　ゲネプロ観劇レポート　
シリーズ第２弾は秋組＆冬組の物語

SPICE

2019年02月01日 12:26

2019年1月31日（木）、東京・日本青年館にてMANKAI STAGE『A3!』～AUTUMN & WINTER 2019～のゲネプロが行われた。初日を目前に控えた役者たちはすでに本番モードにスイッチオン！　それぞれの人生をかけた“役者成長物語”を熱く爽やかに届けてくれた。

原作は“イケメン役者育成ゲーム”『A3!』。多額の借金と役者離れにより潰れかかった劇団・MANKAIカンパニーの主宰兼総監督となったプレイヤーが、劇団を建て直すために新たな劇団員たちとオリジナル公演を成功させていく……というストーリーだ。初演の春組・夏組に続き、今回は秋組と冬組の出番。新たな２チームが誕生し、MANKAIカンパニーは益々活気を帯びて行く。

まるまる一幕を使って描かれる秋組のストーリーは、ヤンチャな男子たちの結束の物語。勉強もスポーツもやればスンナリできてしまう超ハイスペックヤンキーの万里、万里が唯一ケンカで負けた相手・十座、常にハイテンションのお調子者太一、料理上手で目配りの効く臣（実は地元最強の元ヤン！）、元は借金取り立てでMANKAIカンパニーに出入りしていたヤクザ者の左京という“ゴリゴリ”なメンツゆえ、常に体当たりでのコミュニケーションが愛おしい。

万里役の水江健太はこれが舞台２作目。演技未経験ながらその奥深さに魅了されていく万里を等身大で演じ、秋組リーダーとしての強靭さも備えた期待の存在だ。十座役の中村太郎は硬派を貫き、万里とのライバル関係を際立たせる。太一役の赤澤遼太郎は今どきのライトな男子の裏にある“秘密”を臨場感を持って伝え、臣役の稲垣成弥は穏やかさの中に消えない欠落感を潜ませた。左京役の藤田玲は春・夏組からの架け橋としてストーリーテラー的な役割も担いつつ、前回からのキャラクターの深化も見せてくれた。

稽古中、演出の松崎氏が「秋組の魅力は荒削りなところ」と語ってくれたが、まさに彼らの魅力はそこ。それぞれが「人生最大の後悔」をテーマに行うひとり芝居に漂う不器用だがピュアな思いがそのままチームの個性に繋がっている。春・夏とはまたちがう個々の「舞台に立つ理由」に、グッと心が引っ張られた。

二幕は冬組。こちらはちょっと気弱な表現が群を抜く紬、大手劇団GOD座を辞めMANKAIカンパニーの門を叩いた丞、記憶喪失で行く宛がなかったところを拾われた密、芸術化肌の詩人・誉、フェミニンでマイペースな東が入団。秋組がさしずめ豊かな森の切り株なら、冬組はふわりと舞い落ちる雪の結晶。舞台上に漂うリリカルな空気感は観客の五感を捉えて離さない独特の凛とした強さがある。

紬役の荒牧慶彦の存在感を消す存在は秀逸で、役者・紬としての繊細な演技も魅力的。冬組のあのムードは彼のブレのなさに拠るところが大きいだろう。丞を演じる北園涼は役の持つストイックさに忠実な姿勢がいい。密役の植田圭輔は今はまだ明かされない大きな秘密をすっぽりと内に包み込み謎過ぎるキャラに説得力を与え、誉役の田中涼星は対称的に情熱的なオーバーアクションで劇画チックに彩りを添える。さらに東役の上田堪大が柔らかいナイーヴさを発動……と、この５人、なんとも絶妙なバランスなのだ。

彼らを取り巻く“MANKAI寮七不思議”のエピソードのファンタジックさも、各組が集結〜結成〜葛藤〜成功への第一歩とコマを進める“劇団リアル”の積み重ねのトリに似合っていた。同じく稽古場で松崎氏が「冬組に求めるのは役者の芝居の力量」と言っていたのも納得。キャラクターたちの心情に寄り添いながら、心地よくストーリーに没入できた。

春・夏同様、それぞれの物語を締めくくるのは自分たちで創り上げた新作公演＝劇中劇の披露。秋はギャングスターのアクション劇、冬は天使の哀しい恋のお話と、共にチームカラーを生かした演目を披露してくれるのでこちらも必見。衣裳・演出はもちろん、劇中劇中にこぼれ落ちる“役者の心の声”もエーステならではの感動ポイントに。

秋冬公演を支えるべく集まった春・夏キャストたちはすでにエーステファミリーとしてのおなじみ感があり、観ているとなんだかホッとしてしまう。晴翔（伊崎龍次郎）によるGOD座公演の熱量も高く、また「役者は観客のための人形だ」という大手劇団GOD座主宰のレニ（河合龍之介）の美学、「よい役者になりたいなら自分をさらけ出せ」と繰り返し役者たちに投げかける劇団のスパルタコーチ・雄三（滝口幸広）の情熱と、オトナたちの言葉も印象的。とにかくみんな、それぞれのやり方で演劇を愛し、芝居を愛している。もちろん、観客＝監督も──。

フィナーレのレビューまで、気づけば３時間超えのなんとも濃密な時間、なんとも贅沢な時間を体感。公演はこのあと山口・大阪・東京凱旋と続き、３月24日の大千秋楽は全国でのライブビューイングとWOWOWでの生放送も決定している。演劇を通じて自分探しを続ける若者たちそれぞれの人生をかけた“役者成長物語”。熱く爽やかなエーステの世界に触れるなら、チャンスは今かも。

【秋組】会見コメント

摂津万里役：水江建太

今までの稽古でキャスト、スタッフみんなが全力で作りあげてきたものをやっと披露できます！　舞台でしか感じられないことを、たくさん見つけて千秋楽まで成長し続けていきたいと思います。応援よろしくお願いします！

兵頭十座役：中村太郎

『A3!』という作品に出演できることを嬉しく思います！　兵頭十座というみなさんに愛されているキャラクターをしっかりと演じられるように真摯に向き合って二人三脚で演じていきたいと思います。

七尾太一役：赤澤遼太郎

個人的にMANKAI STAGE『A3!』という作品は“ひつまぶし”みたいだなと思っていて、その理由は一つの舞台なのにたくさん味が変わるんです！　そこを味わって楽しんでいただけたらいいなと思います︕

伏見臣役：稲垣成弥

まずは怪我なく千秋楽まで走り抜けるように頑張っていきます！　そして、【秋組】【冬組】が本格始動ということで、ぜひ多くのみなさんに観ていただきたいなと思います。最後まで応援よろしくお願いします！

古市左京役：藤田玲

僕はこの中で唯一、SPRING & SUMMER 2018公演から続けてAUTUMN & WINTER 2019公演も出演させていただいているのですが、前作では【春組】【夏組】が切磋琢磨して組ごとに稽古している様子を見て羨ましく思っていました。今回【秋組】に入ることによって【秋組】【冬組】も切磋琢磨して稽古ができたことを嬉しく思います。その中で作り上げた【秋組】を披露するのが楽しみですし、みなさんにも楽しんでいただけるよう精一杯頑張りますのでどうぞよろしくお願いいたします。

【冬組】会見コメント

月岡紬役：荒牧慶彦

本公演の原作は役者育成ゲームということで、僕らもMANKAI STAGE『A3!』を通してキャラクターとともに自身の俳優としてのスキルを成長させていけたら良いなと思っています！　よろしくお願いいたします。

高遠丞役：北園涼

荒牧さんも言ったように、役とともに役者が成長できるというのはエーステの醍醐味だと思っています。【春組】【夏組】が愛されたように【秋組】【冬組】も負けないように愛されていけたらな、と思います。稽古で培ってきたものをお客様にやっとみせられるなという楽しみな気持ちとともに、自分の持っているものに甘んじることなく、最後まで向上心を持って取り組んでいきたいと思います。

御影密役：植田圭輔

役者が役者を演じるというのは不思議な気持ちでもあるのですが、僕たちにしかできない、このエーステにしか出せない『A3!』の魅力というものがきっとあると思っています。僕たち【秋組】【冬組】が演じる意味を最後まで突き詰めて、みんなで協力してこの作品をサポートしてくれる【春組】【夏組】の分も精一杯「咲きたい」と思います。応援の程よろしくお願いいたします。

有栖川誉役：田中涼星

より『A3!』という作品を愛してくれるように、そしてそれぞれのキャラクターを愛し、愛されてもらえるように精一杯頑張りたいと思います！　よろしくお願いします！

雪白東役：上田堪大

このMANKAI STAGE『A3!』への出演が決まったときからゲームを始めて、キャラクターを愛することを学んで、課金もいっぱいしました（笑）。そのくらい、みんなこの作品に対してそれぞれが愛情を持って、役を、カンパニーを愛してきたと思っていますので、お客様とともに満開の笑顔という形で終わらせていけるように、最後まで全力で駆け抜けていきたいと思います。応援の程宜しくお願いいたします。

取材・文＝横澤由香