西川貴教「中川晃教くんと一緒にバチ
バチにやり合うナンバーを歌ってみた
い!」 ミュージカル『サムシング・
ロッテン!』インタビュー

2018年12月~1月に東京・大阪にて上演される、福田雄一演出のブロードウェイ・ミュージカル『サムシング・ロッテン!』。ルネサンス時代のイギリスを舞台に、売れない劇作家ニックと時代の寵児であり、スーパースターのシェイクスピアらが巻き起こす、ある意味「ミュージカル」誕生秘話を描いた(?)コメディだ。出演は中川晃教西川貴教、瀬奈じゅん、平方元基、清水くるみ、橋本さとし……。いずれもミュージカル界で大活躍中の実力派俳優たちが顔を揃えた。
本作でシェイクスピア役を演じるのは西川貴教。何でも福田が西川の楽屋まで来て出演オファーをしたという話だが、その辺りを詳しく、そして西川が本作にどのような想いを抱いているのかを伺った。
ーー福田さんからのものすごく熱いオファーがあったそうですね。
昨年、ちょうど年末の『堂本兄弟クリスマススペシャル』(CX系)を収録するその当日、古くから付き合いのあるスタッフから「福田さんが西川さんに会いたい、と言っているんだけど、時間ある?」って相談されたんです。だから「調整すれば時間を作れますよ」と答えたら、「福田さん、今楽屋の前で待ってるんですよ」って(笑)。そのまま楽屋に入ってもらったら、この舞台の原作を訳した台本や資料をドサッと渡されて「この作品がどうしてもやりたくて、(西川さんに)シェイクスピア役をどうしてもやってほしいんです」と言われたんです。でも僕はご存知の通り、今年4月から7月まで地球ゴージャスの舞台『ZEROTOPIA』が入っていたので、一年に何本も舞台をやれるようなスケジュールじゃなかった。だから「どうですかねえ……」って即答できなかったんです。でもどうにもこうにも譲ってもらえず(笑)。「とにかく仕事を一緒にしたいんだ」ってうるさいんですよ(大笑)!​
西川貴教
ーー文字通り、「直談判」ですね。
本当はこういうやり方は、お作法的にはしちゃいけないんでしょうけどね(笑)。「いい大人なのになあ……」と内心、思っていました(笑)。
その後年末のドタバタがあり、2月から『ZEROTOPIA』の稽古が入るので、台本や楽譜の読み込みなどでまたバタバタしていて、いよいよ『ZEROTOPIA』の稽古がスタートする、という時に「あれ? あの福田さんの舞台の話、どうなっていたんだっけ?」って思い出して。マネージャーに「どうなってる?」と聞いてみたら「ああ、やりますよ」ってあっさり回答が(笑)。
ーーそんなこんなで決定した『サムシング・ロッテン!』の出演。この作品や演じる役についてどなたかに相談されましたか?
(岸谷)五朗さんに「次、この作品に出るんですよ」って話をしたら、五朗さんは実際にブロードウェイで拝見されたらしく「すごく面白い作品だよ。シェイクスピア役、ハマっていると思う!」って背中を押してくださいました。それでちょっとやる気になりました(笑)。
ーー福田さん、いつか岸谷さんに御礼を持っていかないと(笑)! さて、西川さんから見た『サムシング・ロッテン!』の魅力はどういった点だと思いますか?
この芝居はミュージカル好きの方はさらに楽しんでいただけるだろうし、それほどミュージカルを観ていない方でもこの芝居を観ることで、いろいろな作品に興味をもつ「導入」となる芝居になると思います。「ミュージカルって○○がなんだか嫌~」ってどこか抵抗感を感じている人に観ていただきたいですね。
僕としては、この芝居の台詞の中に『リトルショップ・オブ・ホラーズ』の話が出てきたり、スコアの中で『ザ★ミュージックマン』が出てきたり、と、僕が以前関わった作品に対する愛情を再確認できました。他にも様々なミュージカル作品の名が出てくる本作の中に、自分が携わった作品が含まれている事を光栄に思います。
西川貴教
ーーさらにお伺いしたいのが、西川さんからみたシェイクスピア作品の魅力です。これについてはいかがでしょうか?
僕がそれを語っていいのだろうか、と。『マクベス』『ハムレット』など何本もの大作に出演されてきた方ならともかく、僕は『ヴェローナの二紳士』1本しかやっていない訳ですから! 「おまえ、どの口でシェイクスピアを語る!?」って言われそうです(笑)。
僕が思うシェイクスピア作品の魅力は、ときに物語が成立してない所。行間を観る側に委ねる所じゃないかな。今って何でもテロップが出て、カットに説明が入るでしょ?  食べ物が画面に映されると「この後、スタッフがおいしくいただきました」って文字が出る。様々な注釈がないと安心して観ることができなくなっていて、結果、行間を読む事をしなくなっている。映画や舞台を観ていて「今のってどういう意味?」と声が出たりするのはそういう事なんだと思うんです。映画も舞台も受け手にそれを解釈できるボキャブラリーがないと楽しめないんでしょうね。それを改めて感じさせるのがシェイクスピア作品だと思うんです。
ーー今回、西川さんはシェイクスピア作品の一人ではなく、シェイクスピア本人を演じる事になります。
『ヴェローナの二紳士』でシェイクスピア作品をやりましたが、まさかその時、シェイクスピア本人の役を将来やるとは思いもしていなかったです。シェイクスピア作品に出た方はたくさんいらっしゃると思いますが、シェイクスピア役を演じた方となると少ないのでは? なかなか稀有な体験になりそうです。ただ、かなり史実と違ってうがった感じのシェイクスピアになりそうですけど(笑)。
ーーこの作品に登場するシェイクスピアって、どこか狡猾というか、嫌な奴として描かれていますよね?
そうですね、嫌らしい奴。どっちかというとヒール(悪役)寄りの役。こういう役って初めてかもしれません。“日本一庶民的なロックスター”としましては(笑)、自分がちょっと苦手でなるべく接点を持ちたくないような人をモチーフに役を作っていこうかなと(笑)。『ZEROTOPIA』では、自分に最も自信がないロマンという人物の成長過程を演じてきましたが、今度は誰よりも一番自信を持っている人の役。本当に180度違いますね。この役を演じ切ることができたら、役者として一皮剥けそうです。
ーー今回共演する方々、特に中川晃教さんと西川さんが同じ舞台上で歌うという事が、ものすごく贅沢だなと思っています。
中川くんは、友人の舞台を観に行った際にご挨拶したくらいの仲ですが、お互いの名前の字面が似ているのでなんとなく親近感が(笑)。2文字一緒ですからね! 今のところ二人で一緒に歌うナンバーはそれほど多くないようですが、一緒にバチバチにやり合うナンバーを歌ってみたいですね。
西川貴教
ーー西川さんはこれまでミュージカルの中でもお客様を喜ばせ、笑わせるコメディ系の作品に出演する機会が多かったように思うのですが、何かそこに特別な想いがあったのでしょうか?
『リトルショップ~』からスタートして、少し時間を空けて『ハウ・トゥ・サクシード~努力しないで出世する方法』に出演し、それ以降、コメディ色の強い作品を選んできました。それは僕が作品を選ぶ時の重要な要素だったんです。昔、とある演出家の方に言われたんです。「王子様は正直誰でもできる。おもしろ部分をもっと出来る人になってくれるといいのになあ」って。
ミュージカルを最初から目指す人は、王子様的なキラキラした役どころを目指してくる子が多いのですが、そのなかで「おもしろ」ができるかどうか、コメディパートを笑いとして成立させるのは別の能力。それが出来る人は今のミュージカル界にそれほどいないので、そういう人がもっと増えるといいのになあっておっしゃっていたんです。それが僕の中ですごく励みになっていました。
もちろんシリアスな部分はきちんと演じたいですし「胸を打つ」「涙を誘う」など、そういう芝居に役者としての醍醐味を感じやすいのも事実ですが、その場に笑いを提供するって事は、シリアスなパートより能力的にもっと高いものを求められると思うんです。そこをしっかり演じられるといいですね。
ーー振り返ればさまざまな演出家さんたちと仕事をし、結構な本数の舞台に出演されてきた西川さん。正直な話、演劇の世界でどこを目指したい、などという野望はお持ちですか?
僕は基本的に「僕で良ければ」のスタンスなんです(笑)。前の作品が次の作品を呼んでくれたり、前やった役が次の役を呼んでくれている……その繰り返しじゃないかなって思うんです。だからわらしべ長者のようにいい意味で流れ流されて、みたいな状態で、また今回、新しいエリアに自分を連れていけたらなと思っています。
西川貴教
取材・文=こむらさき 撮影=荒川潤

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