Hikaruが見せた感謝とファンへの「H
onesty」バースデーイベントレポート

2018.7.31(Tue)“Hikaru” Birthday EVENT 2018東京 サントリーホール ブルーローズ
1月23日に日本武道館で盛大に、荘厳に10周年を祝ったKalafina。だが、メンバーのHikaruは厳密には2008年7月30日に発売された「sprinter/ARIA」からの参加となる。本人も7月2日が誕生日ということで、今回ファンクラブイベント『“Hikaru” Birthday EVENT 2018』が東京・サントリーホール ブルーローズで開催された。
事前にHikaru自身がファンにアンケートを呼びかけ、やってほしいこと、歌ってほしい楽曲を募集したこのイベント。SPICEではコラムを連載してもらっている縁もあり、このイベントに参加させていただいたのでレポートする。
開演前、落ち着いた雰囲気の中、一問一答形式でファンからの質問にスライドで答える。
ゲーム『刀剣乱舞』での推しは?などのアニメ・ゲーム好きを公言するHikaruらしい質問や、お気に入りのコスメは?など多岐にわたる質問に自身の幼少の写真を交えながら答える映像が終わると、ふっとステージにHikaruが現れた。
仰々しいものも何もなく、友人との待ち合わせにやってきたようなカジュアルな雰囲気で登場したHiakru。「物凄い静かですが大丈夫ですか?声出していいんですよ?」とMCをすると空気が和らぐ、どこか緊張していた観客もようやくお祝いの雰囲気に変わっていく。
自分で椅子をひいて着席して、リラックスした空気の中でファンと語りだすHikaru。まずは一問一答では答えきれなかった質問に答えていく。
イヤモニにはどんな音が流れているんですか?スマホゲームは何本くらいどんな頻度でやるの?などに軽快なトークで答えていく。スマホゲームは10本ほどインストールしていて、やり込む時期もあるがログインボーナスをもらうだけの時もある、というゲーマーあるあるのような答えにはうなずくファンも多数いた。
今まで作ったグッズで気に入っているのは?という質問からの流れではおなじみのHilaruのグッズ紹介を今回のイベントグッズで展開。武道館の10周年では行われなかったので実に久しぶりな気もしたが、面白く魅力的にグッズを紹介していくのは流石だった。グッズは一部を覗いて即完売という人気ぶりだったが、通販が決定とのことなので気になっていた人はチェックしてもらいたい。
次のコーナーはファンからリクエストが多かった「好きな漫画やアニメについて話してほしい」「演劇的なことをしてほしい」「朗読してほしい」を合体させて「お気に入りの漫画のセリフを朗読し、それについて語る」というもの。
「家で一人でやるようなことなんですけど……これやっていいのかな?」と少し照れながらHikaruがチョイスしたのは、CLAMPの「xxxHOLiC」、堀越耕平の「僕のヒーローアカデミア」、矢沢あいの「天使なんかじゃない」の3作。
真剣にセリフを読み上げ、その背景や作品について熱っぽく語るHikaru、それぞれの作品の中で語られていたのは「縁を感じること、努力すること、信念を曲げないこと」だった。
好きな作品というのはそこに自分のアイデンティティを揺さぶる力があったり、共感できるものがあるからこそ自分の中のマスターピースになるのだろう、上記の3つに関して言えば、Hikaruを構成している核のような気がした。縁あって歌を職業とし、その立ち位置に負けないように努力し、信念を持ってファンに向き合う。柔らかで明るい物腰の裏に、歌を生業とするアーティストとしての譲れないものを感じることはこれまでも何度もあったが、それを再実感した気がする。
撮影:キセキミチコ
そんなトークのあとは「ジャンケンをしたい」というリクエストに応えて、自分で購入してきた今紹介した漫画をプレゼントするジャンケン大会。「勝てないから一番負けた人にプレゼントしてほしい」というリクエストにも答え、勝ち抜きと負け抜きの二戦で全観客と対決。初戦ではなんとタイから参戦したファンが勝ち抜き、グローバルな人気を感じる結果となった。
「ちょっと喋りすぎたかなって思うので、ここからは歌いますね」そういうと客席は万雷の拍手でこれを受け入れる。みんな彼女の歌を聴きたがっていたのだ。3月に開催された豊洲PITでのチャリティイベント以来、実に5ヶ月ぶりの生歌になる。
伴奏としてピアニストの櫻田泰啓を呼び込み、ピアノと歌だけのシンプルなアコースティックな構成の中、1曲目に選ばれたのは「Kalafinaのオーディションのときの課題曲を久しぶりに歌います」という言葉から井上麻里奈の「宝石」。
「久しぶりだから緊張した!」というHikaru。続いて「アニメの歌を歌います」と奏でられたのは坂本真綾の「プラチナ」。SPICEのコラムでも好きだと語ってくれた『カードキャプターさくら』の第一期OPテーマ曲でもあるこの曲をHikaruが歌うのはとても新鮮であり、それなのにしっくりと来る印象を与えてくれるのが不思議だった。
撮影:キセキミチコ
続いて披露されたのはJ-POP……というより歌謡曲枠で中森明菜の「北ウイング」杏里の「CAT’ SEYE」。「北ウイング」はKalafinaのメンバーでカラオケに行ったときに明菜を歌ったという所からのリクエストとのことで、歌謡曲の雰囲気を華麗に歌いこなしているのが印象的だった。「CAT’ SEYE」はJAZZアレンジされており、どちらも今までのHikaruの歌い方では感じられなかったグルーヴがあったのが新鮮であり、彼女のシンガーとしてのポテンシャルを改めて実感する。
「ここからは少し洋楽をやります」と歌われたのはビートルズの「Blackbird」、そしてビリー・ジョエルから二曲「Honesty」と「Just The Way You Are」。もともと英語学校に通っていたというHikaruが英語曲を歌いこなす事は自然だったが、特筆すべきは「Honesty」の表現力だ。
Hikaruはインタビューなどでことあるごとに「思っていることや意見が歌や表現に乗ってしまう」と言っていた。この日の「Honesty」はとても何かを伝えようとしていた。Honestyは誠実という意味だ。この歌はいろいろなとり方ができると思うが、誠実でいるのがとても難しいからこそ、誠実でありたいという思いを歌った歌だと筆者は思っている。
撮影:キセキミチコ
そして誰よりも彼女が誠実でありたかったのは、自身の誕生日に国を越えてまで集まってくれるようなファンに対してなのではないか、リスペクトと感謝を精一杯込めたこの一曲がどうにも心に刺さる。
「歌ってほしい楽曲のアンケート、1・2位はぶっちぎりだったんです」と言って歌われたのが「ARIA」。久々に耳にした耳心地のいい旋律も、ちょっと物悲しく感じてしまうは気のせいだったのだろうか。
「改めてまたアニソン歌いますね」と言って歌われた高橋洋子の「魂のルフラン」や、リクエストではなく自分が歌いたかったというディーン・フジオカの「History Maker」は好きなアニメの作品ということもあって、跳ねるように歌うHikaru。それを見て10年のキャリアを持つ彼女にはまだ出し切っていない表現があったのかと驚かされる。歌うときは色やキャラやストーリーを自分の中で作り上げるという彼女は、シンガーというよりは女優に近い感覚を持っているのかもしれない。
撮影:キセキミチコ
最後はアンケート1位の「sprinter」。Hikaruがデビューした楽曲でもあるので、この一位は納得の投票。櫻田泰啓が奏でるピアノの音色に合わせて声が響きだす。聴き慣れた、聴きたかった歌。歌い続けてきた楽曲だからこそのフィット感。今Hikaruが出来る最大限を持てる全部で表現する姿はとても気高く見えた。すすり泣く観客の声も聞こえるくらい集中する数分間がピアノの旋律で終わったとき、ブルーローズは万雷の拍手に包まれた。
そこから櫻田がサプライズ的に「Happy Birthday」を弾き語る、客席から歌声が聞こえてくる中、Hikaruはうっすらと涙を浮かばせる。「泣くつもりなかったのに……!今回は本当にありがとうございました、笑顔でまた会おうね!って言って終わります!」と涙を拭って笑顔を見せながら退場していくHikaru。ステージを降りたあとはそのまま出口に向かい、観客全員に手書きでメッセージを入れたポストカードを手渡ししていった彼女のHonestyは、確かに会場に駆けつけたファンに伝わったと信じている。
文・レポート:加東岳史

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