旅育のプロに聞く!なぜ「可愛いベビ
ー&キッズには旅をさせよ」なのか【
イントロ編】

旅を通じ子どもの成長を促す注目の育児メソッド「旅育」。とはいえ子連れ旅には不安を覚えるのも正直なところです。自らも3人のお子さんと世界を飛び回る、旅行会社「たびえもん」代表・木舟周作さん&雅代さんご夫妻に「0歳からの家族旅行」のススメを聞きました!

旅を通じ子どもの成長を促す注目の育児メソッド「旅育」。とはいえ子連れ旅には不安を覚えるのも正直なところです。
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自らも3人のお子さんと世界を飛び回る、旅行会社「たびえもん」代表・木舟周作さん&雅代さんご夫妻に「0歳からの家族旅行」のススメを聞きました!
「旅育」が日本と家族を変える!子連れに不安を抱えたママが離陸するなり涙した理由株式会社たびえもん代表で旅育プランナーでもある木舟周作さんは、度々マスコミや講演会等に登場され『海外旅行で子供は育つ!! (子供の人生を豊かにする“旅育"のススメ)』を出版するなど「旅育」の専門家でいらっしゃいます。
ご自身もこれまで五大陸およそ70カ国を訪れ、ご結婚後は共同経営者でもあるパートナーの雅代さんと3人のお子さんと、すでに10カ国・地域以上を回られたとか。
――そもそも周作さんと雅代さんが「旅育」に取り組むようになったきっかけは何だったのでしょうか。
木舟周作さん(以下、周作):僕は子どもの頃、いじめられっ子だったんです。腕力もなくて、泣き虫で。でも小さい頃から地図を見るのが大好きで、遠足や家族旅行が楽しみでした。いま思えば、日常生活から離れた時間が心地よかったのかもしれません。
大学に入ってサイクリング部に所属して、憧れていた冒険の世界がどんどん広がってゆきました。やがて海外にも出かけるようになって、ついには自転車で2年半をかけて、世界一周の旅にも出たんですよ。
旅にハプニングはつきものですが、さまざまな困難を乗り越える術を、いつの間にか身に付けられるようになっていました。
――そのご経験が「旅育」の原点?
周作:たしかにそこが原点ですが、もうひとつ、大きなきっかけになった出来事があります。
僕は、自転車の世界一周旅行から2003年に帰国しました。九州から陸路北上して自宅を目指したのですが、「日本に、元気がないなぁ」と感じたんです。
――日本に元気がない、ですか。
周作:海外、とりわけ途上国では、子どもたちが元気いっぱいなんですよ。僕の自転車を追いかけてきたり、ひどいのになると石を投げてきたり(笑)
日本には、そういう元気に飛び回っている子どもがいないなぁと。
大型ショッピングモールとかに行けば、子どももいるにはいるんですけど、キッズのためのスペースとして囲まれた中で遊んでいて、外で跳ね回っている子が本当に少ない。
子どもたちの内籠りとか、若者が海外に行かなくなったとか言われますけれども、子どもが小さいうちから親が、近場のおでかけから海外旅行まで段階はあるとはいえ「旅」に連れてゆくことで、その子どもが成長したら自分でも出かけてゆくようになる、そういう循環をつくれたらいいんじゃないか、と。
そんな思いが、最初のきっかけだったといえるかもしれません。
――日本が元気になるためにも「旅育」を、ということですね!
とはいえ親の立場となると健康面や安全面、また子連れ移動の苦労などなど・・・いろいろ不安もあって難しくはありませんか。
木舟雅代さん(以下、雅代):私も1回目の旅行の時、海外に連れてゆくのにすごい抵抗があって・・・何かあったらどうしようとか、事故とかあったら、私に責任が取れるんだろうか、とか。
旅は大大大好きだったのに「子連れ」となったら、不安がすごく先行してしまって。
でもいざ飛行機に乗って陸地がどんどん小ちゃくなっていくのを見たら、実は私、涙が止まらなかったんですよ!
――涙?なんの涙ですか?
雅代:解放感が、モノすごくて(笑)
ひとつひとつ溶けてゆく不安
日常に潜んでいた束縛・呪縛から自由に!旅がママをあらためて笑顔に雅代:自分ではそんなつもりはなかったんですけど、育児ストレスが、無意識下で相当溜まっていたみたいで。
一人目の子どもを必死に育てていて、いろんなプレッシャーがあったんだと思います。
思いのほか、子どもも静かにしてくれていたんですよ。気圧が変わって急に泣くとか、マイナスの情報ばっかりインプットしてたから、いろいろ対策しつつもメチャメチャ不安だったんですけど、目をまんまるにしているだけで、ピクリとも動かなかった(笑)
――親孝行なお子さんですね(笑)
雅代:それで滝のように涙を流している自分に、自分でビックリしながら思ったんです。
パパやママが目に見えない束縛や呪縛みたいなものから解放されてリフレッシュして、いきいき笑っているのが、何より子どもにとって大切なものなんじゃないかって。
「なんで私ばっかり」「アレもやらなきゃコレもやらなきゃ」「何か起こったらどうしよう、責められちゃうんじゃないか」って、うじうじ、イライラ、びくびく暮らしているより、いっそのこと、たまに海外に出るのも悪くないなって。
海外旅行って日本から、それまでの育児環境から、物理的に「パツーンッ!」と切り離されちゃうでしょう?
もう、どうしようもないんです。洗濯機もないし、キッチンもないから外食しかできないし。お皿も洗えなーい!もう何もないよーって(笑)
――でも、旅前に感じていた不安は残りますよね?解放感の後、お気持ちに変化はありましたか。
不安その1 健康(医療)について
雅代:初回は私が「日本と同等の医療水準のあるところじゃないと行きたくない」って言って、我が家もタイを選んだんですけど、なんだかんだ言って、その内、ずるずる、ラオスとかに行くように(笑)
周作:これについてはご家庭によって考え方はさまざまだと思いますが、現地の医療事情については安心できるところを事前に調べておいて、保険に入っておくこともできますから。僕たち「たびえもん」にそんなお問い合わせをいただくことも多くて、ご相談に乗ったりもしています。
不安その2 安全(治安と食)について
周作:治安については、大人だって治安の悪いところは旅行先に選ばないと思います。それは子連れであっても同じです。
雅代:ママとして気になりがちな“食の安全”についていえば。
例えば私のハマったラオスなんて、鶏はもれなく地鶏ですよ!ブロイラーなんていない。みんな走り回っているから、お肉もムチムチでおいしい!ビールが進みます(笑)
おいしいものを食べるのって、親子でハッピーですよね。自分で作らないご飯が出てくるってだけでうれしいところもあるかもしれませんが(笑)
周作:アジアは、食という意味では子連れ向きかもしれませんね。何かしら子どもが食べられるものがありますから。食べやすいチャーハンみたいなメニューが必ずあるので、意外かもしれませんが、あんまり食事には困らないんです。
もし屋台のようなところに行くのがお好きなご両親であれば、屋台飯もどんどん食べてもらっていいし、子どもには衛生的にちょっと避けたいな、というのであれば、ほかに変わるものがいくらでも売っていたりします。
日本のセブンイレブンが出店しているところも多いですからね。日系コンビニの活用術についてはインタビュー後編の【実践編】でも触れますが、ファミリーには心強いですよ。
雅代:ご参考までに我が家の子どもについていえば、味覚については現地の食に全く抵抗がない時と、ひどく保守的な時と両極端です。
ニューカレドニアでポリネシアの伝統料理として、甘いのか甘くないのか分かんないバナナの蒸し物みたいなのが出てきたことがあって、スイーツじゃなくて、ごはん代わりのメニューなようなんですが、大人はちょっと食べられないなぁと思って「ごめんなさい!」と、葉っぱにそっとくるんでよけようとしたら・・・
おもむろに娘が「うむむむ、もぐもぐ」って食べ始めて、この子すごいわ、と(笑)
そうかと思えば、どうしても味に慣れなくて「出汁を出せ!あの繊細な風味はどこだ?」と、お丼をひっくり返して泣いて怒った子もいました。「そろそろ味噌汁が飲みたい!」とでも言うように(笑)
どっちに転ぶかはいつも私も“出たとこ勝負”なんですけど、そう割り切れたらそれなりに楽しめるのではないでしょうか。
子連れ移動と海外のバリアフリー
不安その3 子連れ移動について
雅代:旅前の不安という点では、子連れ移動についての不安が、一番劇的に変わったかもしれません。
――やっぱり荷物も多いし、大変だったからですか?
雅代:日本はおそらく、世界で一番、バリアフリーが進んでいる国のひとつですよね。
地下鉄の駅でも大抵、スロープもエレベーターもあって、ベビーカーを押して歩きやすい。
海外のインフラは、まったく整っていないところがいっぱいです。ベビーカーを押していても段差だらけ、穴ぼこだらけ。車も、信号があるのかないのかくらいの勢いでブンブン飛ばしていたりとか。駅にエレベーターがあっても、すごーく遠回りをしなくちゃならないとか。
でも!それを補って余りある人の親切さがあって、私は逆に安心できるんですよ。
――逆に、安心できる?
雅代:海外の多くの場所では、みんな子どもに、メチャクチャ優しいんです。
日本は、ココよりいいところなんてないくらい設備は整っていて素晴らしいんですけど、あとはママやパパの自己責任みたいなところがあって、子どもが泣いたりしても肩身が狭かったりするじゃないですか。
タイに行った時のことなんですけど、トラックの荷台を改造したような乗り合いバスみたいなのに乗ったんですね。子どもは寝ていたので、座席の上に寝っ転がらせておいたら、峠道に差し掛かったんです。
そうしたらタイ人のおじいちゃんが「ここからは峠道になってガタガタ!子どもが壁に頭をぶつけるから、このタオルを挟め!」みたいなことを、タイ語で言ってくれるんですよ。で、ちょっと汚れたタオルをぐいぐい差し出してくる。タイ語はまったく分かりませんが、言っていることは分かりました(笑)
ほかにも、これはイギリスで地下鉄から降りようとしたら、全身タトゥーまみれのマッチョなお兄さんがいきなりベビーカーをガッと持ち上げるんです。一瞬ギョッとしましたけど、お兄さんはまたホームにガッと下ろして、何事もなかったかのようにスタスタ歩いて行っちゃう。
そういうことが当たり前だっていうのがすごく楽で、インフラなんてなくっても却って出歩きやすい。
我が家は東京の練馬区にあるんですけど、免許の更新に江東区まで行く方がむしろ憂鬱なほど・・・都内は子連れのための施設はほぼ完備していますけど、それよりラオスに行く方が気が楽みたいな(笑)
周作:日本は、他人に干渉しないっていうのが強いですよね、先進国ほどその傾向はあるんですけど。
他人に干渉しないといえば、僕にも恥ずかしい失敗談があるんですよ(笑)
日本ではありえない!?旅育プロのトホホ失敗談
周作:イタリアのベネチアに行った時に、あそこは水の都と呼ばれるようなところですから、ヴァポレットというローカルな公共水上バスがあるんですが、僕と子どもも現地の方たちと一緒にそれに乗って、いわゆる水上観光を楽しんでいたんですね。
それで僕が子どもからちょっと目を離した隙に、水上バスがすごく揺れたんですよ。幸い落ちなかったから良かったんですけど、そばにいたヨーロピアンのママに、メチャメチャ怒られました。
――お子さんが、ですか?
周作:いえ、僕が(笑)
「何やってんのッ!子どもから目を離しちゃダメじゃないのッ!」って・・・
例えばこれが日本の遊覧船で、あるママが他人のパパをメチャメチャ怒るっていうシチュエーションは、まぁないですよね。すごい剣幕で怒られて、僕も驚くやら怖いやら。
雅代:私はたまたまその場に居合わせなかったんですけど、子どもが「お父さん、メチャメチャ怒られたんだよ」って報告してくれるくらいでしたから、相当だったんだと思います(笑)
周作:そういう、いい意味での干渉というのが日本ではなくなっているのかもしれないですね。昔はあったのかもしれないですけど。
――不安がひとつひとつなくなっていった経緯を伺っていたら案外「子連れで海外も行けるかも!」という気がしてきました(笑)
ただもうひとつ気になるのは、木舟さんご夫妻は乳幼児期からの「旅育」を勧めていらっしゃいますが、幼い頃の記憶なんて残らないし、にも関わらずお金のかかる外国へ連れてゆくなんて“もったいない”ようにも思うのですが。
雅代:それ、すごい言われますねッ!
周作:でも最新の研究結果では、決してそんなことはないんですよ。
ノーベル賞学者も認める教育効果
ノーベル賞経済学者も認める0歳からの教育効果!「非認知能力」が将来を変える周作:ノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のジェームズ・ヘックマン教授によれば、0歳とか1歳とか、要は赤ちゃんの時の学習や経験が「非認知能力」と呼ばれるスキルを育て、子どもの成長にプラスになるのだそうです。
見たことのない景色を見るとか、話したことのない人と話したりとか。それがたとえ、将来的な記憶に残らなくても。
――「非認知能力」はいま、乳幼児教育の現場でトレンドとされている考え方ですね。IQなどで測れる「認知能力」に対して、IQなどで測れない内面の力が「非認知能力」。例えば「目標に向かって頑張る力」「ほかの人とうまく関わる力」「感情をコントロールする力」などが代表的なものとされるとか。
周作:まさに「生きる力」そのものですよね。
雅代:子どもの認識力ということで考えれば、たしかに記憶には残っていませんが、赤ちゃんでも「普段と違うところにいる」ことは絶対に分かっていると思います。旅行中はいつも目をまんまるにしてキョロッキョロキョロッキョロしてるんで(笑)
周作:子どもにとって「旅」が、すごい刺激なのは間違いない。ただそれを自分で言語化できないので、笑うか泣くか怒るか、そんな反応しかできないと思うんですけど。でもその瞬間が子どもの「非認知能力」を育てて、将来的な「生きる力」を育んでいるのです。
つまり「旅育」は無駄どころか、積極的にどんどん取り入れた方がいい。子どもが忘れちゃうからといって出かけない方が、逆にこの貴重な時期を逃す“もったいない”こととも言えるのではないでしょうか。
雅代:それにもうひとつ、子どもにはもちろん、ママやパパにとって「旅育」のチャンスを逃したら、すっごーく惜しいことがあるんですよ。
周作:ある、ある。家族にとって一番いいことがあるよね。
――家族にとって、一番いいこと?
周作:やっぱり海外って、日数がどうしてもかかるじゃないですか。それに24時間、ずーっと一緒にいる。寝るのも一緒なら、ごはんも一緒です。
日常生活では、朝しか会えなかったり、夜に寝顔しか見られなかったり、そんなご家庭もあるでしょう?
まして子どもが小学校に上がったりすると、それこそ普段どんな風に過ごしているのか、よく分からなかったりとか。
雅代:ママやパパにとって、ヒマな時間って、実はないんですよ。
なんかいーっつも、手が動いていませんか。家事とか、仕事とか。アレ考えて、コレ考えて、せかせかしちゃって。頭の中は段取りでいっぱいで。
海外に行ったら、そんな段取りなんてあっけなく木っ端みじんです。
「あ、また遅延?2時間待ち?」とか(笑)
そういうヒマな時間が、すごく財産になる。飛行機や電車の遅延待ちの時間とか、飛行機に乗って運ばれている時間とか。もう一通りのことをして飽きちゃって、間が開いちゃって。
そんな時間に、ずーっとしゃべったりとか、ひたすらUNOしてるとか。
ああいう時間は家族にとって、すごく“かけがえのないもの”だなぁって思うんです。子どもの成長にプラスとか、ママがリフレッシュするとか、そういうことも「旅育」の良さですが、この“かけがえのない時間”こそがもしかすると、一番大切にしたいところかもしれません。
まとめ「たびえもん」のお二人の「旅育」【イントロ編】を伺って「子連れ旅」に出かけたくてウズウズしてきた方もいらっしゃるのでは?
続いての【実践編】では目的地の選び方に始まり、0歳~の年齢別楽しみ方、さらには渋るパパの説得方法(?)まで幅広くお伺いしてゆきます。どうぞご期待ください!
【取材協力】株式会社たびえもん 木舟周作さん・雅代さんご夫妻
「旅の力でみんなの夢をかなえる会社」として2012年4月、株式会社たびえもんをスタート。創業理念として「旅育」を掲げ、メディアや講演を通じて旅の楽しさと「旅育」を発信中。周作氏の著書に『海外旅行で子供は育つ!! (子供の人生を豊かにする“旅育"のススメ)』がある。

ウレぴあ総研

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