“バッドボーイズ”と化したウソツキ
が恒例のエイプリルフール・ワンマン
で見せたエンターテインメント

ULTRA USOTSUKA NIGHT~俺たちバッドボーイズ!~ 2018.4.1 LIQUIDROOM
楽しいなぁ。なんて楽しいライブなんだろ。と、何度もそう思った。もちろん楽しいだけじゃなく、かっこいい演奏するよなぁとか、心があったまる曲だなぁとか、場面によって色んなふうに思いながらも、やっぱりそれらをひっくるめたところで言葉にするなら、あれはめちゃめちゃ楽しいライブだった。今のウソツキは観てるみんなを楽しませるバンド、そういうエンターテインメントな行き方でライブをするバンドなのだ。
2年ぶりくらいでウソツキのライブを観た人は驚いたんじゃなかろうか。3年ぶりだったとしたらもっと驚いたことだろうし、4年ぶりだったら別のバンドを観に来たかと思ってしまったんじゃないだろうか。2013年夏に今の4人になったウソツキだが、自分が初めてライブを観たのは2014年だったか2015年だったか。その頃の竹田昌和は目が隠れるくらいに前髪があり、MCで冗談を言う感じはまだなかった。EMTG MUSICの連載を読んだら「(昔のライブは)暗かったよね」(竹田)、「親が死んだくらいの感じ(笑)」(林山)と彼らも話していて、まあそこまでとは言わないが、確かに今のように明るく開かれまくったライブをやるバンドになるなんてことは想像がつかなかった。あの頃のライブと今のライブはまるっきり別モノだし、何よりライブに対する4人の意識が大きく変わったということなのだろう。
2014年から恒例となったエイプリルフールのワンマンライブ。今年はツアーとして3月23日に大阪、3月30日に名古屋でも行われたが、この4月1日の恵比寿リキッドルームは超満杯。ライブの始まりに何らかの特別な演出があるのもワンマン恒例となったが、この日はまずスクリーンに“バッドボーイズとしての4人”……つまり全員が全身黒でまとめ、金のチェーンをつけ、ちょいワルふうのカッコとポーズで何やらダベっている姿がスクリーンに映し出されるところから始まった。ライブについたサブタイトルの通り、今は「俺たちバッドボーイズ!」なのだという彼ららしい(笑いを含んだ)表明だ。
ウソツキ 撮影=山野浩司
そして暗い中に4人のシルエットが映り、一瞬不穏なムードに……なるかと思いきや、ウソツキきってのダンスナンバー「コンプレクスにキスをして」のイントロで紗幕が落とされ、ステージが露わに。4人ともサングラスをかけ、竹田は「BAD」と大きくロゴが描かれたニューエラのキャップをかぶっている。「コンプレクスにキスをして」は言うなればミラーボールの似合うディスコなナンバーであるからして、会場は一気にホットなムードに。観客みんなが手を挙げて横に振り、竹田と吉田健二と藤井浩太の3人は70年代の米国のソウル~ファンクグループのように合わせて横にステップを踏む。た~のし~。
ウソツキ 撮影=山野浩司
「今日は飛ばしていくんで、ついてきてください!」。竹田がそう挨拶すると、曲は続けて「地獄の感情無限ロード」へ。いつのまにかメンバーたちはサングラスを外していた……と思ったら、吉田だけはまだかけたままだった。その吉田のギターがドライブするようにリードして疾走感を導くその曲「地獄の感情無限ロード」は聴く者たちの気持ちを高ぶらせ、<飛ばせ 常識の範囲で>と歌われながらも、今夜くらいは非常識に飛ばして楽しんじゃえ!ってな気分になる。歌う竹田のアクションは以前よりも大きく、それにも煽られる。そして吉田のギターが鳴くような音を出すと、そこから「ミライドライバー」へ。観客の手の振りもさらに激しくなる。軽やかな曲だが、林山と藤井のリズムはどっしりと重く土台を支えていた。さらにスピード上げて「夢のレシピ」へ。早くもエンディングのような勢いとテンション感だ。序盤でアゲるだけアゲてやろうという狙いか。
ウソツキ 撮影=山野浩司
「夢のレシピ」を終えると、ここで一息。竹田は「テンション的にね、もう佳境を迎えてますけどね」と息を荒くして言ったあと、「私、金属アレルギーなんで、これ外していいですか?」と首からさげていた金のチェーンを外しにかかって、観客たちから笑いが起きる。「“俺たちバッドボーイズ!”と言いながら、金属アレルギーなんで」と言うと、ドラムの林山拓斗もまた自分のそれを外そうとする……が、なかなか外せず、その様子を見かねた藤井が「手伝ったほうがいいですか?」。この「カッコつけきれない感」がなんともウソツキらしくて、ニャハハとなる。バッドになりきれない4人が頑張ってバッドで行こうとする、その感じがおかしくもあり、カワイくもあり、心意気が嬉しくもあり。
「今日はもうね、信じられないくらいの最高の日にしようと思ってるんでね。みなさん、よろしくお願いします!」「むちゃくちゃいい曲やります!」。竹田のこの言葉がムードを切り替えて、「金星人に恋をした」。そして「春になりましたので春の曲を」という曲紹介に続いて「春風と風鈴」。『USOTSUKA NIGHT』は春に行なわれる故、このミディアムテンポの名曲が聴けるのが嬉しい。さらに「ボーイミーツガール」へ。勢いに重きの置かれた序盤と変わって、このあたりでは気持ちのこもった丁寧な演奏と歌が味わえた。
ウソツキ 撮影=山野浩司
続いてファンキーな「人生イージーモード」で再び“聴かせるモード”から“楽しませるモード”のスイッチに切り替え、“イージー・イージー”のコール&レスポンスでみんなの温度をあげたところで、このあと竹田が一旦ステージを去る。その理由についての説明は、ほかのメンバーたちからはなく、しばらく無音に。沈黙の長さに観客から笑いがもれる。と、林山が「無音でもある程度、笑いがとれるね。いけるもんだね、喋んなくても(笑)」。そんな数分間のあと、突如ヒップホップ調の曲がけたたましく鳴り響き、なぜかスケボーをかつぎ、キャップの上に王冠をつけ、豹柄の上着を羽織った “Mr.BB a.k.a Bad Boys ”(いちおう竹田とは別人物のてい)がステージに。吉田・藤井・林山もサングラスをかけ、改めてバッドボーイズに扮した(?)彼らが演奏したのは、そう、バッドボーイズのテーマとも言うべきファンキー・チューン「恋はハードモード」だ。3月に公開されたこの新曲のMVは演奏シーンがまったくなく、なんと4人が揃ってしっかり振りのついたダンスをキメるという驚きの作品だったわけだが、ライブとなればなかなかハードモードな演奏っぷりに耳がいくことに。リズムは重く、吉田のギターはファンク特有のリフを刻みつつ、間奏ではヘヴィにうなりをあげる。そしてランDMCよろしく全員でキメポーズ。最高だ。「サンキュー!」と一言発してステージを去るMr.BB a.k.a Bad Boys 。こうして彼らはこのライブ最大の見せ場をやり終えたのだった。
ウソツキ 撮影=山野浩司
再び“竹田昌和として”ステージに戻った彼は「最高だよね。5分くらい、ちょっと記憶にないんですけど、なんかひとつになったような、そんな気がします。ありがとう!」と言い、そして「もう後半戦ですよ、ここからは」。そう言うと観客みんなが「え~~っ!」と惜しむような声を出す。それを受けて竹田は「僕も“え~~っ!”ですよ。でも、永遠に続くような、そんな演奏をやりますよ。そんなラブソングを聴いてください」と続け、「心入居」へ。イージーモードからハードモードへと続いただけに、このミッドテンポ曲の温かさがいつにも増して優しく心を包んだ。曲は同じくミッドテンポの「恋学者」へと続き、そこから始まりの部分で確かに宇宙感と言えるような広がりが伝わってきた「君は宇宙」へ。けっこう前に発表された曲だが、現在の彼らの演奏力で奏でられると、景色がどんどん広がっていく感覚が得られる。こんなにスケール感と強さのある曲だったかと改めて聴き惚れてしまった。
ウソツキ 撮影=山野浩司
「新曲をやってもいいですか?」。竹田が観客たちにそう投げかけて片手にタンバリンを持ち、「カモン!」と叫んで「口内戦争」と題されたアップテンポの新曲をここで初披露。これもまたトーンとしては「恋はハードモード」に繋がる黒っぽい要素を有しながらも、サビなどはロックとしてのスピード感も同時に持っていて実にかっこいい。ファンキーを消化した上でのロック、といった感じで、こういう曲があるなら次のアルバムも大いに期待できる。そしてその新曲のスピード感をキープしたまま、お馴染みの「ネガチブ」へ。ロックバンドとしての力量がダイレクトに演奏に現われ、途中、藤井のベースソロもいつもより長めに。さらに「過去から届いた光の手紙」へと曲が移ると、林山のドラムも一層強さが増し、ステージの上も下も目に見えて熱が上昇。「今日は本当にここに来てくれてありがとうございました! 全力の愛をこめて最後に歌います」と竹田が話し、今ではすっかり代表曲のひとつとなった「一生分のラブレター」で本編を締めた。
ウソツキ 撮影=山野浩司
アンコールに応えて再登場した4人は、ここでいつものようにリラックスした喋りを。途中、「恋はハードモード」の音が流れ、MVと同じダンスをちょびっとやって見せる竹田。「ガチ度が足りない」と林山につっこまれると、もう一度ガチでトライしたりも。そしてあのMVの撮影を振り返って「ちゃんと練習したもんね」(林山)。「そんなところに筋肉ついてるの?ってくらい筋肉痛になったもんね」(竹田)。「オレ、“肉離れ”って調べたもん」(林山)。「拓斗さんがね、踊りながら“肉が離れる”って言ってた」(藤井)。「動画見たんですけど、オレがしていい動きじゃなかったですね」(林山)。いやぁ、キミたち、よく頑張った。この話を思い出しながら改めてあのMVを見返すのもオツというものだ。
そして「みなさん、ファイナルのアンコールですよ!」と竹田が言うと、「これでワルが終わるからね。ひとつのワルが終わりを告げる」と林山。「ワルはオレらのなかではいいやつだから」(林山)。「そう、ワルは地球を大切にするじゃないですか。ワルは仲間を大切にするし、なんならもう正義感強いし。ワルっていいやつ、っていう結論」(竹田)。「そういうオレらなりのワルを追求してきたこの何か月だったね」(林山)。「オレ、日サロに行くって言ったの。でも日サロ行く前日にインフルエンザになっちゃって行けなかった」(竹田)。この一言で場内、爆笑の渦に。そういうズッコケもウソツキの面白いところだ。大丈夫。僕もみんなもちゃんとわかっている。昔『かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう』というレコードを出したのは早川義夫さんだったが、持つべきそういう真理(と照れ)がこのバンドの根っこにあることを。だから信用できるのだ。
ウソツキ 撮影=山野浩司
そんなユルくも楽しい喋りのあとには、ここで初披露の新曲をもう1曲。「名もなき感情」と題されたミッドテンポの曲だったが、その組み立て方に新しさも感じられ、これが実にいい曲だった。 このライブのあと、秋にニューアルバムを出すことが発表されたが、「恋はハードモード」「口内戦争」「名もなき感情」が入ると仮定しただけでもかなり多彩な作品になりそうで、今から本当に楽しみだ。そして最後は「新木場発、銀河鉄道」。曲後半では吉田が前に出てギターを弾き、竹田も思い切りよく弾いてそれに応じる。ロックバンドとして最高にかっこいい。ワルとしてのかっこよさを追求しきれずとも(笑)、ミュージシャンとしてのかっこよさがそこからビリビリ伝わってくる。これでいいのだ。
そういや、この日彼らは「ピースする」をやらなかった。「旗揚げ運動」もやらなかった。「惑星TOKYO」も「本当のこと」もやらなかった。そのように定番曲や少し前の推し曲を外すのはなかなかの思い切りのよさだと感じるが、それは「現在進行形のオレたちを観てほしい」という気持ちの現われだろうし、それらを外してでも聴いてもらいたい自信のある新曲ができているからなのだろう。実際そうした定番曲などに頼る必要のないエンターテインメントな進め方がしっかり機能していたライブだった。冒頭に述べたことの繰り返しになるが、今のウソツキは観てるみんなを楽しませるバンド、そういうエンターテインメントな行き方でライブをするバンドになったのだ。
このライブから1週間と数日が過ぎたある日、4人は揃ってブルーノ・マーズの日本公演を観に行ったようで、そのエンターテイメントなショーはメンバー全員にとって大きな刺激となったことが彼らのツイートから見て取れた。果たしてその影響でここからさらにちょいワルを追い求めるのか、ワルを完全に終えたところで別の行き方をしていくのか。いずれにしても、観てるみんなを大いに楽しませるライブというところで、ますます磨きがかかっていくことは間違いなさそう。そして自分はファンキーを消化した上でのロックだったり歌ものだったりの名曲がさらに生まれることを期待しているし、今ならそれの「すごいやつ」が出てきそうな予感もある。本当に楽しみだ。

取材・文=内本順一 撮影=山野浩司
ウソツキ 撮影=山野浩司

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