Anli Pollicinoの内に脈々と流れてき
た血、バンドの内側で燃え続けてきた
炎の熱さを感じたワンマンライブ

Perfect Package of Anli Pollicino

2018.4.7(土)恵比寿リキッドルーム
赤は情熱、生命力をあらわす色だといわれている。また、太陽・血・炎といったプリミティヴなイメージを持つ各ファクターも、断然赤の色で表現されることが多い。どうやら、一説によると古代洞窟遺跡などから発見される壁画においても、人類が黒以外で最初に使った色彩は赤だとされているのだとか。
そして。Anli Pollicinoがこの夜のライブにあたり身にまとって現れた色もまた、まさに鮮やかな赤色そのものだったのである。このたび、ベストアルバム『Perfect Package of Anli Pollicino』の発売記念ワンマンとして恵比寿LIQUIDROOMを舞台に行われた『Perfect Package of Anli Pollicino』は、彼らの内に脈々と流れ続けてきている血の色の濃さや、バンドの内側で燃え続けてきている炎の熱さ。それらを、受け手側と彼ら自身がありありと感じることの出来るライブ、になっていたはずだ。
Anli Pollicino
「まず、最初に言わせて。もともと学生時代に始めたAnli Pollicinoが、なんとこうしてベストアルバムをリリースすることが出来るまでのバンドになりました! みんな、本当にありがとう!!」
フロントマン・Shindyがこのように述べたのは、Anli Pollicinoにとっての1stアルバム『Fahrenheit 31』(2009年発表)の1曲目を飾っていた「Time」を皮切りにして、ダンサブルで躍動感にあふれた4曲目の「Limit」が終わったあとのこと。ちなみに、今回のベストアルバム『Perfect Package of Anli Pollicino』は、ファンからの投票結果をもとに厳選された16曲と、昨年の全国ツアーでお披露目された新曲「Heaven's Door」をあわせた全17曲を収録した作品で、いわばAnli Pollicinoの辿ってきたこれまでの約9年間を、ぎゅっと凝縮させた集大成的な内容になっているところが、最大の特徴であると言えるだろう。
Anli Pollicino
つまり。だからこそ、今宵の彼らはある時期までAnli Pollicinoにとっては定番であり、マストであった“当時の赤い衣装”をわざわざ選び、我々の目前へと踊り出たわけだ。むろん、今もってしてもAnli Pollicinoと言えば何かと赤の印象は強く、差し色などで赤が使われることはそれなりに多いが、さすがにメンバー全員がここまで全身を赤でまとめていたのは数年前までのことであり、今となっては少し懐かしい感じがするのも事実。
くわえて言うなら、今回のライブに関してはオーディエンスに対してもドレスコードとして服や小物などを含めた“サムシングレッド”の着用が呼びかけられており、それに該当している場合は、メンバーからのお礼としてトレカがプレゼントされていたという。
Anli Pollicino
「最近になってAnli Pollicinoの音楽に出会ってくれた人も、ずっとAnli Pollicinoのことを応援してくれている人も、あるいは今日ここで初めてAnli Pollicinoの音楽に触れに来てくれた人も、今日はみんな同じだからね。今夜のライブは、心から君たちだけに捧げます、恵比寿LIQUIDROOM!」
なお、ここから始まった5曲目の「Psycho Brain」はヘヴィで刺々しい曲調が前面に押し出されたもので、近年のポップで洗練された楽曲が多く見受けられている傾向からすると、Anli Pollicinoが実は今もずっと持ち続けてきているのであろうV系バンドとしての“三つ子の魂”を、力強く感じるくだりでもあった。逆に言えば、この鋭く尖った基盤が揺るがぬものとして根底にあるからこそ、彼らはどれだけ華やかでキャッチーな楽曲をやろうとも、決して浮ついたチャラさを感じさせることがないのだと思われる。と同時に、この手のアグレッシヴな楽曲が始まるやいなや、場内にいるファンの方もこぞって髪の毛を振り乱しながらヘッドバンギングを始めるあたりが、実に“わかっていて”素晴らしい。Anli Pollicinoの愛されぶりが、こうした一幕からもよく伝わってくる。
Anli Pollicino
そのうえ、この夜の本編中盤にて不朽の歌謡曲チューンである「さそり座の女」が彼らによって華麗にカバーされたシーンも、Anli Pollicinoの持つロックバンドとしての特性がいかんなく発揮されていた場面であったに違いない。言わずもがな、この曲は御大・美川憲一氏の鉄板持ち曲にほかならないが、いわゆる歌謡曲の中でも相当に怨念めいたディープさを擁したこの世界を、ただのカラオケ的なコピーなどで終わらせることなく、Anli Pollicino流の解釈で艶っぽくも過激にプレイしてみせるその手腕は、やはりグラマラスなV系バンドとしての研鑽を詰んできた彼らならではの技とセンスが活かされたところ、だと断言出来る。
さらに言うなら、技とセンスという部分については個々のメンバーが担っている要素もAnli Pollicinoの場合は非常に大きい。楽曲のトーンによってアタック感を自在に操りながら、ここぞという時には聴衆の内臓をも振動させるほどのパワー感を持ったドラマー・清淳。必要に応じてDJとしてのスキルもみせつつ、サイドギタリストとしての地に足の着いた仕事をし、ボーカリストをバックアップする的確なコーラスワークでも才覚を感じさせるYo-1。派手なソロフレーズはもちろん、サウンドの全体的な色付けでも大胆にその責務を果たしてゆくギタリスト・琢磨。色気のある伸びやかな歌声と、人心を惹きつけるようなパフォーマンスでライヴ空間を牽引していくことが出来る、ボーカリスト・Shindy。これまでの9年間に紆余曲折こそ幾つかあったものの、現体制の4人がAnli PollicinoをAnli Pollicinoたらしめる存在としてそれぞれに輝いていることが、今回のライブではあらためてよく分かった気がする。
Anli Pollicino
「今夜はAnli Pollicinoの歴史を全て網羅するようなライブなので、ちょっと珍しい曲やマニアックな曲も入ったセットリストになっていると思いますが、皆それでもちゃんと凄いノってくれていて嬉しいです!(中略)さっきも言ったけど、Anli Pollicinoは俺と清くんが十代の学生の時に始めたバンドでさ。要は、自分たちにとってずっと変わらない青春なんだよね。この先、俺たちがクソジジイになってもそれは変わらないと思うよ(笑)」
アッパーでワイルドな「Mr.0」で本編ラストを一旦締めくくりつつ、アンコールでは 「白百合ヴァネッサ」を心温まるアコースティック・バージョンで聴かせたり、とバンドとしての表現力の幅をみせていく中で、Shindyが口にしたのはこの台詞。
Anli Pollicino
しかも、ダブルアンコールでも未だ音源化はしていないもののAnli Pollicinoにとって大切な楽曲である「PRIDE」を歌う前に、彼はこう重ねたのだった。
「みんな、Anli Pollicinoの音楽と出会ってくれてどうもありがとう。やっぱり、Anli Pollicinoは俺たちの青春です。俺たちはその青春に夢と情熱を今もこうして注ぎ続けているわけだけど、皆もそれをずっと応援し続けてくれるなら…たとえ俺がクソジジイになっても、君たちがクソババアになっても、ちゃんと愛してあげるからね。約束するよ。今日は本当にありがとう!」
来たる8月には約2年ぶりとなる待望のニューシングルを発売し、9月からはそれを携えての全国ツアーにも出るというAnli Pollicino。来年には10周年という大きな節目を控えている中で、これからもAnli Pollicinoには彼らのことを愛する人々を絶え間なく照らし続ける太陽として、あかあかとした燦然たる光を放ち続けて欲しい。
取材・文=杉江由紀
Anli Pollicino

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