Creeping Sharia / Pulse フザけるな
――怒り剥き出しの機銃掃射がヤツを
捉える。Londonという街はなぜこうも
痛快なパンクスを育て上げられるのか

昨年11月、UKパンク・シーンに突如現れたCreeping Sharia(クリーピング・シャリア)は、近寄る者すべてを瞬く間に叩き斬ってしまうような2人組。元Ulterior(アルテリア)のRhys Dawney(リース・ダウニー:ファッションブランド”Long Clothing”創設者のひとり)と、Sebastian Bartz(セバスチャン・バーツ:ポーランド出身でソロとしても活動)によるこのバンドが、新たにMV「Pulse」を公開した。
しかし、まずは衝撃的なデビュー曲「MAKE AMERICA HATE AGAIN」を聴いてほしい。これを聴かねば何も始まらない。
言葉が出ない、なんて陳腐なことを言うつもりは全くない、が、確かに私は打ちのめされた。いや、八つ裂きにでもされたかのようである。言葉に詰まるのではなく、許してくれないのだ、感想を述べることを。この後味……。しかし不快ではない。むしろこの痛烈さが気持ちいい。
American dream…… is DEAD.”――昨年の”選挙”に対して向けられたこの煽り。過激。これがキラー・チューンだという決死の覚悟が抜群にキマっている。そして焦らすようにしながらすべてのパートが蠢き、サビへ向けての急激な溜め、破裂――と、非常に強弱のある曲調によって楽曲全体として襲い掛かってくる。この極めて身体的な爆発エネルギーは、オルタナティブ・ロックの中でも特に、パンクだからこそなせる技だ。まさに、彼らの背後で睨みを効かせる爆撃機から撒かれゆく”ブツ”が、それを象徴していると言える。
怪しくトグロを巻くシンセと、その威嚇が空間を裂いてゆくノイズ・ギター。そこへ怒りに満ちたRhysのシャウトが揃えば、もう我々は無敵である。また、ドラム・パッドと機関銃の音は、どこか同期して鳴っているようにも思える。
これが、暴力に対する人びとからの答えだ。音楽を武器に抵抗を。世界に多様性を。救いを。
次はいよいよ。
“Why are you afraid ? I can’t believe you’re not a friend……”
この曲は、慰めるようにそう語りかけるセリフから始まる訳だが、これもまた世界を騒がす人びとへ向けられたものとしか思えない。本MVは、William Friedkin(ウィリアム・フリードキン)監督作品・映画『クルージング』のシーンと、(PLASTICZOOMSの”Japan Tour 2017″に伴って行われた)Creeping Sharia初の来日公演の映像によって構成されている。
筋肉隆々の男たちの汗が飛び散り、熱気立ち込める、むさ苦しいダンス・フロア。彼らは同性愛者である。つまりこれもまた、解放へのメッセージであろう。
ギリギリと下唇を噛みちぎるようなインダストリアル・ビート、舌に残るは真っ赤な鉄の味。その匂いに釣られて這って来たのは、先ほどのヘビ。じわりじわりとなぶるようなシンセ・ベースは、コイツに締め付けられる感覚を植え付ける。身体を丸呑みし、溶かし、脳幹をシビれさせるギターのノイズや高音。すべてが私たちの焦燥感を掻き立ててゆく。
立ち向かうのは今しかないと。
彼ら以上に尖っていて、鋭く光るヤツらなど、果たしてこの時代に存在するのか。ジャンルで言うところのEBMの連中もかなりバイオレントではあるが、その”威”の印象は互いに違って見える。ダーク・ヒーローとしての立ち姿、それを目撃してしまえばもう斜に構えてなどなどいられない。
現在、1stアルバム『Freedom Go To Hell』が制作中にあり、今年後半にリリース予定とのこと。続報を待とう。
MAKE AMERICA HATE AGAIN by Creeping Sharia(http://creepingsharia.bandcamp.com/track/make-america-hate-again)

Spincoaster

『心が震える音楽との出逢いを』独自に厳選した国内外の新鋭MUSICを紹介。音楽ニュース、ここでしか読めないミュージシャンの音楽的ルーツやインタビュー、イベントのレポートも掲載。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着