【THE SAX NIGHT】
取材:田中 大
驚異の編成から生まれる破壊的サウンド
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このバンドはイベントの『THE SAX NIGHT』から始まったわけですけど、どういう感じで今の形になったんですか?
甲田
イベントの打ち合わせをして、僕と飯島くんでバンドを組むことにしたんですけど、最初はテナー・サックス、バリトン・サックス、ギター、ベース、ドラム、オルガンがひとりずつの基本的な編成だったんです。でも、飯島くんが片っ端からイベントに出演したバンドのバリトンの人に声をかけた結果、今のような編成になっていったんですよ。アルトを吹いている人にも“バリトン貸すからやらない?”とか言ってましたから(笑)。
飯島
社交辞令で“今度スタジオに来ない?”って誘ってたら、みんな本当に来ちゃって(笑)。
音楽的な確信やヴィジョンは少しはあったのですか?
飯島
いや…ないですねえ(笑)。テナーが強烈なので、バリトンが7本いればものすごい効果が生まれるんじゃないかな、とは思いましたけど…最近(笑)。
甲田
この編成は他にはないでしょうね。
飯島
機材車も大変なことになってますよ。バリトンのケースが7個あるだけでもすごい量なので。
でも、この編成だからこそドスの効いた低音が発揮されて、今回みたいなカッコ良いアルバムができたわけじゃないですか。
飯島
今回は“スピード感”っていうのが、最初にあったテーマ。とにかくアッパーなアルバムを作りたかったんです。
アルバムの全体像は“THE SAX NIGHTが未来の少年をさらって旅に連れて行き、最後に車の鍵を渡して別れる”っていうストーリーになってますけど。
甲田
その設定は作ってる途中に思い付いて。曲が大分出揃った時に、“昔々あるところにTHE SAX NIGHTが~”っていう昔話にしたいなと思ったんです。3曲目までは思いっきりブッ飛ばして、4曲目の「The Highway-2138-」で、未来の2138年にお母さんが子供に昔話をしている。で、5曲目の「Screaming The Dead Corner」は車の効果音で始まるけど、それは子供を連れてきたところ。この曲は最後に車のクラッシュ音が入るけど、その時の壊れた車はCDのジャケットに写ってます。バンの後ろで直している車がそれ…というのは後付けですけど(笑)。
飯島
(笑)最初からちゃんとコンセプトとして考えてたのは“ハイウェイ”と“ビーチ”っていうふたつのワード。その部分はすごく全体的に出ていると思います。
甲田
ストレートな潔さみたいな部分を楽しんでもらえるアルバムなんじゃないでしょうか。例えばテナーのオクターヴ下の同じラインをバリトンが吹いていることから生まれるワルっぽさみたいなところも盛り上がりますし。
来年の3月までツアーが続きますけど、この編成を生で観たら壮観でしょうね。
甲田
みんな結構暴れますしね。次、誰がソロかちゃんと覚えてないと大変。ライヴハウスではひとり当たり使えるスペースは公衆電話1個分くらい?
飯島
それなのにみんな前へ出たがるから大変なことに(笑)。今回のツアーは初めて行くところも多いので楽しみです。
甲田
まあ、とにかくガッツリ盛り上げますので、ぜひ観に来ていただけたらと思います。安全にスリルを味わえるバンドですよ。遊園地のような、ハリウッド映画のような。あるいは水戸黄門の最後に印籠が出てきて安心するような(笑)。そういう盛り上がり方ができるバンドですので。