染み入る透明感!原田知世の瞬間美を
作ったのはあの名曲だった

彼女の楽曲と演技には共通している点がある。「原田知世はどこか儚げで力が抜けている」彼女の自然体に惹きつけられた人々も少なくないはずだ。若い頃の果実のような染み入る透明感は、歳を重ねすぐにでも消えてしまいそうな儚さへと移り変わっている。
それゆえに、瞬間の美のシンボルとなり、圧倒的な存在感を放っているのだ。

小さい頃、音楽が日常にあったという原田知世は憧れていたアーティストがいた。その人物とは「異邦人」で有名な久保田早紀だ。子供の時に彼女は久保田早紀の歌い方の研究をしていたそう。

原田知世の音楽性に久保田早紀が大きな影響を与えたことは間違いなさそうだ。2007年に発売された「くちなしの丘」の歌詞を紐解きながら、その影響を見ていきたい。





ここでは閉じた口と開く花を対比させ、情緒を誘っている。素直に本心を告げられない恋心を綴っている曲はこの世に無数にあるのかもしれないが、これだけ心の奥底に迫ってくる歌詞はめずらしい。

影を帯びながらも卓越した表現に原田知世の歌声が重なる。聞いているリスナーは、温かみと寂しさが共存しているような不思議な感覚を味わう。





「とても幸せ」というくちなしの花言葉からも理解できるように、くちなしの丘とは幸福な場所を指し示す。そのくちなしの丘を頭に浮かべ、「君が見えたら何を話そう」と想像を膨らませる。原田知世の歌の世界は時に「西洋の高貴な美しさ」を想起させる。それは、若い頃の憧れであった久保田早紀にも言えることだ。2人は神聖で犯しがたい存在であるように思える。俗世間から抜け出し洗練された雰囲気を持つ。

そういった点から原田知世が自らを久保田早紀に投影したのも、ごく自然のように感じる。





「歌を聴いていると情景が頭に浮かぶ」それは一般的に、いい歌の一つの条件とされる。しかし、原田知世が歌えば風景を想像することすらも許されないようだ。それは力技で無理強いしているわけではない。あまりにも洗練された自然体だからこそ、聴く者の心は張り詰めるのだ。

魅力的な存在であり続ける原田知世。リスナーは自然体な彼女に、不自然な自我を問うているのだ。絶対的なものであると思わされる歌声に「永遠」を託しているのかもしれない。

TEXT:笹谷創(http://sasaworks1990.hatenablog.com/

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