今後の方向性への思惑が交差する、基
本に忠実なBAND-MAIDのメジャーファ
ーストアルバム

衣装はメイド服、ライブを「お給仕」、観客を「ご主人様」・「お嬢様」と呼ぶなど、奇抜なイメージが話題となっているBAND-MAIDだが、彼女らのこのサウンドはPHANTOM BLUEを初めて聴いた時のような印象を覚えた。

ハードロック/ヘヴィメタルというジャンルにカテゴライズされる彼女らのサウンドだが、そのサウンドイメージは混じり気すらない正統派なハードロックサウンドといえる。



 ハードロック/ヘヴィメタルは日本のアニメソング的ジャンルと非常に親和性が高く、近年登場するこのカテゴリのバンドのサウンドは、テレビアニメの主題歌にしてもおかしくないようなメロディー感と、キャッチ―なフックを多く含んでいる。先に断っておくが、この傾向は良し悪しという次元での話ではない。単にサウンド特徴がどのようなものかについて、言及している。

 対して2017年1月11日に発売されるアルバム『Just Bring It』で示している彼女らのサウンドは、敢えてその鮮烈なメロディー感を排し、80年代に発生したヘヴィメタルムーブメントで聴かれた、ベーシックなスタイルをとっているようにも感じられる。サウンドの核となる彩姫のボーカルは本格的なロックボーカルのスタイルで、アニメソングで聴かれるような軽い印象を微塵も感じさせない。

また曲構成についてもそれほど目立ったフックがあるわけでもない、むしろ現代のヘヴィメタルなどでよく聴かれるツーバスの16ビート的なリズムより、8ビートの堅実なビートをしっかりと走らせており、返って彼女らなりの骨太な疾走感を生み出している。

 また、作詞も堅実な印象を見せる一方で、しっかり作り込んだイメージが垣間見られ、完成度の高さは感じられる。例えば一曲目の「Don't you tell ME」では「Don't you tell a secret?」「Love me」「Give me」「Kiss me」「Tell me」などの、反復することでリスナー側の耳を掴みやすいキーワードが多く使われている。ライブに重きを置くバンドならではの配慮だが、対してAメロではアドリブ的なメロディーラインを感じさせながらも、よく聴くと非常に練り込まれてバランスよく仕上げた譜割り、メロディーラインが感じられる。



特にこの曲の最後に登場する「いつか 点と点が線になったように…」「円と円が重なった中心…」というように、意味的にもリズム的にも韻を踏むような構成をさりげなく入れているところに、何気に耳を引かれる。

 初っ端から続く「Puzzle」「モラトリアム」などの楽曲は、かなりヘヴィなサウンドで押しまくっており、往年のハードロック/ヘヴィメタルファンにはたまらないサウンドであるともいえるが、一方で「OOPARTS」「TIME」「Awkward」のようにメジャーキーでポップな印象を持つ楽曲もあり、よく聴くと意外にキャッチ―な要素も多く含まれている。

このコンセプトは、今後BAND-MAIDがどのような方向性を見せてくれるのか?という展望に対して様々な思惑を感じさせてくれる。例えばこのまま整然としたサウンドを突き詰めていくとは、非常に考えにくい。

演奏力、パフォーマンスは折り紙付き、近年海外でも高い評価を得ているという彼女らであれば、次にどのような変化を見せるのかは誰もが興味深い。その意味でもここでベーシックな音を提示したことには、非常に大きな意味を持っているのだ。



TEXT:桂伸也

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