「アーティストがアルバムを作る」そ
のあるべき姿を追求する姿すら感じら
れるUNCHAINの意欲作
UNCHAINの最新アルバム『20th Sessions』は、とにかくユニークなアルバムだ。このアルバムでは全8曲中6曲でゲストボーカリストが参加、しかもボーカルとして楽曲に参加するだけでなく、作詞をゲストにそれぞれゆだねている。その詞とゲストに合わせた雰囲気によってそれぞれの楽曲が出来上がっており、それぞれ全くカラーの違うアーティストとの融合で、アルバムがカラフルに彩られている。
親交深く、互いをリスペクトしあう豪華アーティストが参加
切ない雰囲気を持った、鬼束ちひろの作詞による「緊張」、グルービーなサウンドを実現しているBRADIOの真行寺貴秋作詞による「Bomb A Head」、BAND-MAIDが本格参戦した、疾走感たっぷりのハードなナンバー「Wonder」など、一つのバンドではなかなか見せられない多彩な世界観を実現している。
しかもその中でUNCHAINのボーカリスト谷川正憲の声を中心とした「UNCHAIN」らしさを強く印象付ける楽曲と、高い演奏力で聞かせるサウンド。バンドという形で「あくまで新たな楽曲作り、アルバム作りを行う」という常套手段をあえて避けた、面白い例の一つともいえる。たとえ自分たちだけの楽曲でなくても、サウンド、演奏で「自分たちらしさ」を見せるというという部分には、ある意味ジャズ・ミュージック的な発想も見える。
この意向には、非常に新鮮に見える上に「アーティストが新しいアルバムを作る意味とは」「新しい世界を作る意味とは?」そんな問いを改めて投げかけている雰囲気すら感じられる。彼らがこれまで発表してきたアルバムの中でも、「Love & Groove Delivery」と銘打った3枚のカバーアルバムをリリースしたUNCHAINだからこその発想かもしれない。
例えばカバーだけだと「自分たちの得意な部分を選択できる」「自分たちの思いに一番近い部分で、良い楽曲を選択できる」といった、自分たちにとって有利となる条件が強くなる傾向がある。その意味では、今回のチャレンジでは「すでにある楽曲」という有利な条件はない。敢えて自分たちの殻を破るために大きな挑戦に出た、という気構えすら見られる。
『20th Sessions』 UNCHAIN自身のオリジナル
そんな中でも、8曲中のラスト2曲はUNCHAIN自身のオリジナルであるが、ここにも新たなチャレンジが考えられる。例えばグルービーな「Bomb A Head」やハードな「Wonder」、さらにアコースティックギターのみの伴奏できれいなハーモニーを聴かせる「ひだまりのうた」と、今回のアルバムの楽曲は十分すぎるほどにバラエティに富んだ楽曲がそろっている。
そんな中で、様々な楽曲を単なる「寄せ集め」にしない、アルバムをまとめるような楽曲が必要であり、かつ「この曲だけが目立ってはいけない」楽曲が必要、かつ「最もUNCHAINらしい」雰囲気を持ったナンバーが必要となる。この2曲はまさにその大役を担う、アルバム全体の集約的なものといえる。
その観点で見ると、動的な「The Kids Are Crazy」、静的な「Koe」と好対照な楽曲である2曲を自作の曲として終盤に持ってきているのは、なかなかニクいまでの構成だ。
「The Kids Are Crazy」はタイトルからすると何かクレイジーな特定な人物を示しているようでもあるが、日常のハードな生活の中で「Put your hands up」「Go crazyforo dance」と、クレイジーになることそのもの以上の何か、アクティブな方向へ気持ちを押し上げてくるような雰囲気が感じられる。一方の「Koe」は、さわやかなメロディに乗せて、ラブソング的なストーリーを感じさせながら、一方で「The Kids Are Crazy」とはまた違った何らかのメッセージを発しているようにも聴こえる。
「ミュージシャンがアルバムを作る理由」に一石を投じる
完全なバンドのオリジナルアルバムであれば、「どれだけアルバムに『自分たちらしさ』を表現できるか」「どれだけアルバムを作った意味をアピールできるか」など、様々な観点での満たさなければいけない条件が必要となるが、カバーアルバムでは、何らかの意図はあれど、どちらかというと「企画モノ」的な扱いの面が強くなる。
しかし今回の彼らのアルバムは、ちょうどその二つのアルバムの中間的な位置づけとも見られる一方で、アピールするポイントは、単なる中間的なものとは全く違った新たなアプローチにも感じられる。ある意味「ミュージシャンがアルバムを作る理由」という命題に対し一石を投じている意欲作といってもいい。
TEXT:桂伸也
親交深く、互いをリスペクトしあう豪華アーティストが参加
切ない雰囲気を持った、鬼束ちひろの作詞による「緊張」、グルービーなサウンドを実現しているBRADIOの真行寺貴秋作詞による「Bomb A Head」、BAND-MAIDが本格参戦した、疾走感たっぷりのハードなナンバー「Wonder」など、一つのバンドではなかなか見せられない多彩な世界観を実現している。
しかもその中でUNCHAINのボーカリスト谷川正憲の声を中心とした「UNCHAIN」らしさを強く印象付ける楽曲と、高い演奏力で聞かせるサウンド。バンドという形で「あくまで新たな楽曲作り、アルバム作りを行う」という常套手段をあえて避けた、面白い例の一つともいえる。たとえ自分たちだけの楽曲でなくても、サウンド、演奏で「自分たちらしさ」を見せるというという部分には、ある意味ジャズ・ミュージック的な発想も見える。
この意向には、非常に新鮮に見える上に「アーティストが新しいアルバムを作る意味とは」「新しい世界を作る意味とは?」そんな問いを改めて投げかけている雰囲気すら感じられる。彼らがこれまで発表してきたアルバムの中でも、「Love & Groove Delivery」と銘打った3枚のカバーアルバムをリリースしたUNCHAINだからこその発想かもしれない。
例えばカバーだけだと「自分たちの得意な部分を選択できる」「自分たちの思いに一番近い部分で、良い楽曲を選択できる」といった、自分たちにとって有利となる条件が強くなる傾向がある。その意味では、今回のチャレンジでは「すでにある楽曲」という有利な条件はない。敢えて自分たちの殻を破るために大きな挑戦に出た、という気構えすら見られる。
『20th Sessions』 UNCHAIN自身のオリジナル
そんな中でも、8曲中のラスト2曲はUNCHAIN自身のオリジナルであるが、ここにも新たなチャレンジが考えられる。例えばグルービーな「Bomb A Head」やハードな「Wonder」、さらにアコースティックギターのみの伴奏できれいなハーモニーを聴かせる「ひだまりのうた」と、今回のアルバムの楽曲は十分すぎるほどにバラエティに富んだ楽曲がそろっている。
そんな中で、様々な楽曲を単なる「寄せ集め」にしない、アルバムをまとめるような楽曲が必要であり、かつ「この曲だけが目立ってはいけない」楽曲が必要、かつ「最もUNCHAINらしい」雰囲気を持ったナンバーが必要となる。この2曲はまさにその大役を担う、アルバム全体の集約的なものといえる。
その観点で見ると、動的な「The Kids Are Crazy」、静的な「Koe」と好対照な楽曲である2曲を自作の曲として終盤に持ってきているのは、なかなかニクいまでの構成だ。
「The Kids Are Crazy」はタイトルからすると何かクレイジーな特定な人物を示しているようでもあるが、日常のハードな生活の中で「Put your hands up」「Go crazyforo dance」と、クレイジーになることそのもの以上の何か、アクティブな方向へ気持ちを押し上げてくるような雰囲気が感じられる。一方の「Koe」は、さわやかなメロディに乗せて、ラブソング的なストーリーを感じさせながら、一方で「The Kids Are Crazy」とはまた違った何らかのメッセージを発しているようにも聴こえる。
「ミュージシャンがアルバムを作る理由」に一石を投じる
完全なバンドのオリジナルアルバムであれば、「どれだけアルバムに『自分たちらしさ』を表現できるか」「どれだけアルバムを作った意味をアピールできるか」など、様々な観点での満たさなければいけない条件が必要となるが、カバーアルバムでは、何らかの意図はあれど、どちらかというと「企画モノ」的な扱いの面が強くなる。
しかし今回の彼らのアルバムは、ちょうどその二つのアルバムの中間的な位置づけとも見られる一方で、アピールするポイントは、単なる中間的なものとは全く違った新たなアプローチにも感じられる。ある意味「ミュージシャンがアルバムを作る理由」という命題に対し一石を投じている意欲作といってもいい。
TEXT:桂伸也