現代アメリカ演劇の代表的劇作家エド
ワード・オールビーさんが死去


アメリカを代表する劇作家エドワード・オールビーさんが2016年9月16日に、ニューヨーク州の自宅で死去した。享年88。いまのところ死因は不明だが、糖尿病を患っていたという。

エドワード・オールビー(Edward Albee)さんは、1928年3月12日ワシントンD.C.生まれ。『動物園物語(The Zoo Story)』(1958年)で劇作家デビュー。アメリカの伝統的なリアリズム演劇を挑発し破壊するような不条理な暴力性を秘めた戯曲はニューヨークで初演されることが叶わず、ベルリンで初演された。が、それ以降しばらくはオフ・ブロードウェイで注目を浴びるようになり、「オフ・ブロードウェイの旗手」「アメリカ前衛劇の旗手」などと評される。

しかしオン・ブロードウェイのデビュー作となった『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない(Who's Afraid of Virginia Woolf?)』(1962年)が大ヒット、2年間に及ぶロングランを続け、トニー賞最優秀演劇作品賞やニューヨーク・ドラマ批評協会賞を受賞、映画化もされ一躍スターダムにのし上がった。その後『デリケート・バランス(A Delicate Balance)』(1967年)、『海の風景(Seascape)』(1975年)、『幸せの背くらべ(Three Tall Women)』(1994年)で三度ピューリッツァー賞に輝き、2002年には『山羊、またの名シルヴィアってだれ?(The Goat, or Who Is Sylvia?)』で再びトニー賞最優秀演劇作品賞を受賞した。なお、新宿にあった小劇場タイニイ・アリスの名はオールビー1964年の同名作品に由来する。

私事だが、筆者が2005年にブロードウェイの芝居見物のために渡米した際、たまたまシューバートアレイ界隈(West 44th Street)で毎年行われるフリーマーケットに遭遇した。あちこち散策していると、これといって目立たぬ場所で老人がちんまり座っている。通行客は誰も、そこを気に留めず通過している。私も最初「ここは何を売っているのかな?」「この老人は何者かな」などと思いながら通過しかけたが、「ん?」と気になって、二度見した。なんとそれが劇作家組合主催によるオールビーのチャリティ・サイン会だと判り、仰天した。あの衝撃的な『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』や『動物園物語』を書いた演劇史上の偉大な作家が、ちんまりと地味に机を前に坐っているのだ。私は興奮し、さっそくその場で戯曲本を購入してサインをいただいた。家宝である(…といいながら、現在、書斎の魔窟に埋もれて、すぐには取り出せないのだが……)。また、その時に撮影した写真は、SPICE「舞台」アカウントのカバー画像にさせてもらっている。殆どの読者はSPICEのカバー画像に誰が写っているかなんて気に留めていないだろう。フリーマーケットでもまさに同じ状況だったのだ。謹んでオールビーさんのご冥福をお祈りする。

エドワード・オールビーさん(NYブロードウェイのフリーマーケット2005にて)

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