L→R EBI、川西幸一、奥田民生、手島いさむ、ABEDON

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【UNICORN リコメンド】
思いがけない音楽に
出会えることの愉悦

UNICORNの楽曲を
AIで蘇らせる…とは!?

 そんな彼らからまた、こちらがまったく思いもかけなかった音源が届いた。すでにご存じの方も多いことだろう。10月11日に配信されたEP『ええ愛のメモリ』である。メンバー5人の若かりし日の声をAIに学習させて、当時の歌声を生成。メンバーはそれぞれに、かつて自身が作った曲に似た曲を作り、そこにAIのヴォーカルを乗せている。“ええ愛=AI”なのだ。UNICORN自身でUNICORNの歌を蘇らせた…というのも変な言い方だが、そういうことである。

 世界各地で話題となったThe Beatles最後の新曲「Now and Then」はAIを使ってJohn Lennonのヴォーカルを抽出したそうだし、日本でも2019年にAI美空ひばりによる「あれから」がその是非を巡って論争を起こしたことを覚えている方もいらっしゃるだろう。すでに音楽の世界にもAIが入り込んできているわけだが、これまでの使われ方は物理的に実現不可能なこと─つまり、上記のように他界したアーティストの声や演奏を再現するために使われてきたのに対し、UNICORNの場合は生前に自身が自らそれをやったわけで、相当に稀有なことである。おそらく日本の音楽史上、初の試みであろう。

 そもそも彼らがこういうAIの使い方をする以前に、コンピュータを駆使することも想像だにしなかったので、完全に虚を突かれた。だが、少し思いを巡らすと、発明されて間もないシンセサイザーを早い時期に自らの音楽に持ち込んだのがThe Beatlesだったことを考えれば、日本でいち早くAI技術を取り入れたバンドがUNICORNであることは不思議でも何でもない。必然だったとも言える。

 AIによる歌声の生成もさることながら興味を引いたのは、各人がかつて自身の作った曲に似た曲を作ったことである。ABEDONが公式インタビューでも語っていたとおり、アーティストは自らの過去作のようなものを作りたがらない。再生産を良しとしないのだ。“かつての代表曲を再び!”と望むファンがいる一方で、そんなファンの要望に応えたらそれを焼き直しと揶揄する者も必ず出てくる。その意味でも過去作と似た曲というのは危険なのだ。しかし、今回の『ええ愛のメモリ』でUNICORNが用いた手法であれば、作り手、受け手の双方が納得し、しかも楽しみながら接することができる。

 EPに収められた5曲は全て、とある自身の曲を彷彿させる。ファンならばタイトルを見ただけでニヤリとするだろう。かつて彼らがThe BeatlesやXTCへのオマージュを捧げたように、現在のUNICORNが過去のUNICORNへの敬意を表した楽曲のように聴こえる。これは、実に彼ららしいし、彼らにしか成し得なかった新発見、新発明だと思う。

OKMusic編集部

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