【伊東歌詞太郎 インタビュー】
愛することは技術であり、
人格もルックスも関係ない
グルーブ同士がぶつからないように
緻密な計算プラス感覚が必要だった
いや、目から鱗が落ちました…。そして、もうひとつの表題曲である「猫猫日和」はYouTubeで配信されているアニメ『夜は猫といっしょ』シーズン2の主題歌で、シーズン1の「ひなたの国」(2022年11月発表のシングル)に続いての主題歌担当ですね。
僕、猫を雄と雌の2匹飼っていたんですけど、雌のほうが死んじゃったんです。で、シーズン1の主題歌は雌猫を主人公として書いていたから、今度はもう一匹の雄猫を主人公にしてあげたいと考えたんですね。ただ、その子が猫としては特殊というか、猫らしい気まぐれな性質が一切なくて、飼い主に対して真っ直ぐな愛情を向けてくるタイプなんですよ。なので、最初そういう姿を歌詞に書いたら、アニメサイドから“いやいや、こんなの猫じゃないでしょ”みたいな話になり(笑)、そこから『夜は猫といっしょ』に出てくるキュルガのような猫らしい猫の描写に変えたんです。僕、保護猫活動とかもしているんで、いわゆる一般的な猫もたくさん見ているんですよね。
それで飼い主のわざと逆を行くような、猫らしい天邪鬼な生態が描かれているんですね。ちなみに恋人にするなら、一般的な猫っぽい気まぐれなタイプとご自身の猫のような真っ直ぐに愛を向けてくるタイプとどちらが好みですか?
そりゃあ後者ですよ! “気まぐれなのが可愛い”とかって、ただの正当化でしかない。猫が気まぐれで可愛いのは猫だからですよ!
確かに(笑)。楽曲自体もそんな猫の気まぐれ感が表れた軽やかな楽曲になっていますが、キーはとんでもなく高いですし、伊東歌詞太郎史上でも一番難しい曲だそうですね。
ギター中心に作られている曲なんですけど、猫の気まぐれさを音で表現するために音の長さ…音価を細かくしたかったんです。となると、当然ギターの音数は増えるわけで、編曲家からデモが上がってきたら、想定の300倍くらいテクニカルなものになっていたんですよ! 具体的に言うと、歌のグルーブとオケのグルーブが一致していない箇所が多くて、下手をするとグルーブ同士がぶつかって崩壊しかねないんですね。崩壊させないようにするには、かなり緻密な計算プラス感覚が必要なんですけど、出来上がってみたら納得しちゃったんです。全体を通して聴くとグルーブの不一致が全然大丈夫だったので。
違和感なく心地良く聴けました。
その“心地良く聴ける”ことが大事で、レコーディングでは何とかクリアーできたんですよね。ただ、ライヴで再現する時はレコーディングとは違う体調、違う楽器陣とやるわけで、そのグルーブをギリギリで一致させるところには苦労すると思っています。特にギタリストにとっては、本当に嫌な曲ですよ。だって、レコーディングでギター弾いてくれたのは、バックギタリストとしては日本で一番有名と言ってもいい方なのに、そんな方でも“これ、やりたくないよね。ライヴになったらギターの人、“嫌だ!”って言うんじゃない?”っておっしゃっていましたから(笑)。実際、ライヴで弾いてもらうyoshi柴田さんに“どうですかね? 「猫猫日和」”ってリハーサルの初日に訊いたら、“いやぁ、嫌だね。弾きたくないね”って、もう予想どおり!(笑) でも、前回のツアーですでにやっていますから、バックバンドのみなさんも徐々にコツを掴んでいるはずです。
つまり、かなり難易度の高い曲ではあるけれど、今後もどんどんやっていくつもりだと。
セットリストには入れていきたいです。それこそギタリストとふたりだけでアコースティックでやるような機会があったら、きっと柴田さんは心の中で泣いているでしょうね(笑)。でも、ヴォーカリストからしてもアコースティックで歌うなんて避けたい曲ですから、“お互い限界に挑戦しましょうよ!”と言いたい。そうやって僕と柴田さんは、いろんな楽曲を今までも乗り越えてきましたし、おまけに今、さらに難しい曲を制作中なんですよ。なので、今後に乞うご期待ですね。
取材:清水素子
「ヰタ・フィロソフィカ」
Making Movie
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