GANMI×宝塚歌劇OG『2STEP』開幕、密
着取材してきた早花まこの目に映る、
鮮やかな赤ーー連載『2STEP、できま
すか?」』最終回

GANMI✕宝塚歌劇 OG DANCE LIVE 『2STEP』が5月28日(金)に東京公演を無事に終えた。6月2日(金)からは大阪公演を控えるが、一足先に、ライターとして活躍中の宝塚歌劇OGによる連載『早花まこの、「2STEP、できますか?」』は最終回を迎える。出演者のインタビューや稽古場取材など、3ヶ月にわたり密着取材してきた早花の目に、東京公演はどのように映ったのだろうか。
未知のステージ、開幕
「異色のコラボレーション」。それが、この舞台について語る時、必ず添えられた言葉だった。ふたつのダンス、19人の出演者それぞれのカラーが出会い、ぶつかり、競い合う……その先にどんな光景が待っているのか誰も分からなかった。
幕が開いた時、舞台は想像を超えていた。大勢の観客を前にして、ライトと音楽を浴びた19人のダンスは混ざり始め、新たなカラーが生まれたのだ。
5月26日(金)から28日(日)まで日本青年館ホールで上演された、DANCE LIVE『2STEP』。6月2日(金)からは、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティでの上演が始まる。
エンターテインメント界の第一線で、斬新なパフォーマンスを生み出し続けているダンスアーティストGANMIと、全員が元男役である7人の宝塚歌劇OGが、一緒に踊る。独自の経歴と個性を持つダンサー揃いの出演者が、お互いのジャンルを踊ってどんな新境地を開けるか……大きな挑戦を試みた作品『2STEP』は、厳しいお稽古も常に明るく乗り越えるダンサーの皆さんによって作り上げられてきた。
今作の振付及び構成、演出を担い、出演者の一人でもあるGANMIのSotaさんは、まだお稽古が始まる前に、こう語っていた。
「出演者一人一人に役割がある、そんな舞台を作りたい」
「どんなお客様も楽しめるように、全方位をカバーする舞台を目指す」
Sotaさんが心血を注いだ『2STEP』は、まさにその言葉通り、舞台全体でダンサーが輝き、どの席に座っても強烈なイメージが飛んでくるような作品になった。
自ら作っては壊し、そして練り上げた数々のシーンの中で、Sotaさんは一人のダンサーとして踊る。作り手としての冷静な視点をあえて外し、創造の世界に集中してひたすら全力で踊る姿からは、ただただ純粋な思いが伝わってきた。「楽しさ」や「一生懸命さ」を超越した、「踊りへの愛」のようなもの。そしてそれは出演者全員からも滲み出て、客席に届く。それが、『2STEP』の世界だった。
ステージに赤が迸る
開演前の客席には、これから始まる舞台への期待感が満ち満ちていた。ダンサーの名前が書かれたカラフルなうちわを手にしている方もいる。新型コロナウイルスの影響により静かな観劇スタイルが続いていたが、万全な感染予防対策を取った上で上演されるDANCE LIVEに客席でも盛り上がりたいと、わくわくする気持ちが見てとれた。
「いつも宝塚歌劇を応援してきたけど、今日はGANMIさんを初めて観るのが楽しみ」という声も聞かれた。宝塚歌劇OG、GANMIのどちらかしか知らない方々は、公演パンフレットの出演者ページを興味深げに眺めている様子だ。
劇場に響き渡る重いパーカッションがショーの始まりを告げ、閃光が走る暗がりに赤いシルエットが浮かび上がる。舞台から飛び出しそうな勢いで踊るダンサーの皆さんのパワーに、ぐっと引き込まれる。宝塚歌劇の公演では滅多に聞かれない歓声が、客席のそこここから上がった。
冒頭から、赤が印象に残る舞台だった。衣装や照明、舞台に映し出される映像の中で、鮮やかな、時にあたたかみのある赤い色合いがアクセントになっている。公演のメインビジュアル(ポスター)がそのまま舞台に映え、赤というカラーが作品全体を貫くテーマそのものに見えた。
格好良いダンスシーンから、ショーはどんどん展開していく。雰囲気ががらりと変わる「学校」のシーンでは、歌や早口言葉がメインだが、その合間と背景で動くダンサーの踊りが完璧に仕上がっている。どこを観ても誰を観ても密度の濃いダンスパフォーマンスが楽しめる、「これこそDANCE LIVE」という凄さを実感した。
カラフルなライトが月明かりに変わると、18人のダンサーがいっぱいに踊っていたステージをたった一人のショースターが支配する。今作では初めての振付に挑み、ゲスト出演で舞台を大いに盛り上げた、湖月わたるさんの登場だった。コミカルな演技で、ダイナミックな歌声で観客の視線と心を掴むのは、さすがとしか言いようがない。湖月さんのダンスと背景である映像と照明が合わさり、舞台セットの美しさが存分に感じられるシーンでもあった。
ショーが進むうちにダンサーのジャンルの違いや性差が感じられなくなるのは、「ともに踊りを楽しもう」という思いを出演者全員が共有し、観客にまっすぐ伝えてくれるからだろう。宝塚歌劇OGのみのシーンも、決して単なる「タカラヅカ風」に落ち着かず、皆さんの新鮮な一面が発揮されていた。
また、GANMIの皆さんのみのナンバーは圧巻の一言だった。映像作品では、何回もカットを重ねたり、シーンによっては撮影技術を使った演出がある。そんなGANMIの映像作品を繰り返し観て魅了されてきたのだが、生のパフォーマンスを目の前で観て、改めてその素晴らしさに心奪われた。クローズアップ映像ではなくても、目線が吸い寄せられる。パワーが途切れる瞬間はなく「これでもか」とクライマックスが押し寄せ、GANMIのライブパフォーマンスが放つエネルギーに圧倒された。
軽やかに、『2STEP』

ダンサーが映像と一緒に踊るシーンが始まると、客席は一層盛り上がった。「舞台の端から端までを使う」とはよくある表現だが、これはさらに凄かった。高さのある大きなセットをダンサーが縦横無尽に駆け回り、「舞台の上から下まで」使い切るステージングは迫力満点だった。

ショーの最後、再びオープニングのナンバー「2STEP」で全員が踊る。同じリズム、同じメロディーなのに、開演直後と比べて客席の温度はぐんと高まっていた。オープニングではたんたんと鳴っていた手拍子が、しっかりとビートを刻んでいる。みんな客席から立ち上がり、肩を揺らし、両手を上げてクラップしている。観客の熱狂が届いているのか、ステージもますます勢いを増す。劇場全体に、熱い風が吹いていた。
幕が降りた後、心地よい疲れを感じて不思議な気持ちになった。それはまるで、思い切り身体を動かした後のような爽快感だったのだ。
90分間を踊り続けた出演者の皆さんに対して、ただ客席に座って感動していた身で「踊った気がする」なんて言うのは大変失礼なのだが、体験してしまったのだから仕方がない。舞台上で躍動するダンサーに共鳴した私の心身は、確かに熱を帯びていた。
ショー中のMCで、宝塚歌劇OGの隼海惺さんが「私たちの舞台にお客様が加わって、最後のパーツがはまったような気がします」と喜びを語っていた。GANMIと宝塚歌劇OGが歩み寄って踊る、そして観客もまた2ステップを踏み鳴らす。ここからさらに『2STEP』は進化していくだろう。
観客の一人である私も一歩を、いや2STEPを踏み出して、全身全霊で踊るダンサーの背中を追いかけていきたい。
取材・文=早花まこ

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