宝塚歌劇とGANMI、異なる二つのダン
スが融合した初日稽古ーー元タカラジ
ェンヌによる連載『早花まこの、「2
STEP、できますか?」』

早くもGANMI✕宝塚歌劇 OG DANCE LIVE 『2STEP』開幕まで1ヶ月を切った。3月からスタートした、宝塚歌劇OGでライターとして活躍する早花による連載『早花まこの、「2STEP、できますか?」』も佳境に。宇月颯、湖月わたる、GANMIのSotaに話を訊いてきたが、今回はついに始まった稽古初日の様子をレポートしていく。
「私、カッコ良い気がする!」
「もう、いっぱいいっぱいです!」と明るい悲鳴をあげたのは、宝塚歌劇OGの宇月颯さんだ。汗を拭いながら、お稽古初日の感想を朗らかに語ってくれた。
「GANMIの皆さんに紛れて踊ると、自分もカッコ良く踊れている気がするんです。これ、ただの気のせいですよね!」
いや。気のせいだけではないと思いますよ。GANMIと宝塚歌劇OG、ふたつのダンスが早くも混ざり合おうとしていた。
国内外で活躍するアーティスト集団であるGANMIと、7人の宝塚歌劇OGによるDANCE LIVE『2STEP』は、2023年5月26日(金)に日本青年館ホールで初日を迎える。作品の構成と演出の枠組みが出来上がった頃、膨大な量のダンスナンバーの、1曲目の振付が始まった。
広々としたスタジオに出演者とスタッフの皆さんが集まると、心地よい緊張感と、それを上回る高揚感が湧き上がる。
快活な挨拶が交わされ、早速お稽古に突入した。『2STEP』の振付と構成、演出を担うGANMIのSotaさんから出演メンバーへ、オープニングシーンの構想が伝えられる。ダンサーの皆さんは時折歓声を上げて、説明に聞き入っていた。
舞台装置、音楽、照明……譜面やメモの中にしかなかった光景と登場人物が、出演者の一人でもあるSotaさんの言葉で語られると、たちまち躍動する。色鮮やかなシーンがはっきりと立ち上がってきて、聞いているだけで心が熱くなった。
和やかなムードのまま、いよいよ振付が始まった。GANMIのKazashiさんは、力強さと丁寧さで緩急をつけつつ、しっかりと振りを渡していく。
全員が実力のあるダンサーでも、GANMIと宝塚歌劇OGとでは経験や取り組んできたジャンルが大きく異なる。まさにそこが『2STEP』の面白さだが、その違和感は徐々に消えていったようだ。
音楽の流れに、ぴたりと寄り添う。身体がしなる。筋肉がうねる。身体の重心は、自由自在に動き続ける。呼吸するように自然に踊るGANMIのメンバーの波に乗って、次第に宝塚歌劇OGも新たなダンスをとらえていく。高難度の振付に苦戦する様子は、なんだかすごく楽しそうだ。
ふたつのカラーが溶け合うと……
GANMI×宝塚歌劇 OG DANCE LIVE 『2STEP』
特に興味を惹かれたのは、GANMIによる振付が「ダンス教師が踊りを教える」というやり方とは全く違うことだった。
ポーズの形や手足の角度を細かく揃えるための指示は、ほとんど無い。しかし「なんとなく」といった曖昧さではなく、身体の動きの流れ、際立たせるアクセントといったこだわるべきポイントを細やかに共有していく。それも一方通行のレッスンとは違って、ダンサー同士が動くうちにコミュニケーションが生まれ、まとまっていくのだ。
振りを間違えたり振付を再確認するのも、ほんの数回だけだった。何度か繰り返し音楽にのって踊れば、たちまちダンサーの身体が記憶していく。さすが、キャリアも個性も充実したアーティストの集まりだと感じた。振付を覚え込むというより、身体で吸収するようなお稽古に、思わずじっと見入ってしまう。
異なるカラーが溶け合うことで、その違いもまた見えてきた。
宝塚歌劇のダンスシーンでは、最大で70人ほどにもなる出演者が整然と移動して、群舞の形を変えていく。GANMIのパフォーマンスでもダイナミックな展開がたくさんあるのだが、こちらは魔法のようにいつの間にか様々なフォーメイションへと変化していく。その魔法の秘密を、少しだけ覗き見することができた。
フォーメーションを変える際、宝塚歌劇OGに、GANMIのメンバーから声がかかった。
「もっとラフに移動しても良いです!」
「動きながら、次の位置につっこんでみて」
宝塚歌劇OGのメンバーはすぐにコツをつかみ、ステップの流れを壊さずに立ち位置を変えた。少しの工夫で、群舞の形がよりスピーディーに作り変わる。GANMIと宝塚歌劇OGのそれぞれの持ち味が発揮されて、多彩な舞台展開が実現するのを目の当たりにした。
それにしても凄すぎる、皆さんの集中力と体力。宝塚歌劇OGが振付を受けている間の、少しの待機時間にGANMIのメンバーを見ると、静かに筋力トレーニングをしていらっしゃるではないか。黙々とプランクを続ける姿を見て、質の高いパフォーマンスはこうして磨かれるのかと目を見張った。
走り出した『2STEP』
この異色のコラボレーションに情熱を懸けているのは、出演者だけではない。森脇さん(タカラヅカ・ライブ・ネクスト。元宝塚歌劇団雪組の男役)をはじめ、スタッフの方々も、振付の様子に熱い視線をおくっていた。お稽古が進む中で変化していくSotaさんの構成と演出に対応し、自由な創作ができる環境を整える。
森脇さんは、事務をこなしたりお稽古の助手をつとめたり、その合間にダンサーを見つめて「カッコ良い!」と呟いたり、とても忙しそうだ。スタッフさんが、作品と出演者に魅力を見出し、心をときめかせていること。それは舞台を根底から支える、大きな力となる。
そんなスタッフの皆さん、振付師でありダンサーである出演者、それぞれが自らの役割に全力を注ぐ。誰一人として集中力が途切れることがないまま、お稽古は続いた。はじめはばらばらだったステップが、靴音が、少しずつ揃い始める。
気がつけばあっという間に6時間以上が経ち、活気に満ちた雰囲気のままお稽古は終了した。帰り際、お稽古場の外の廊下を見ると、翌日の振付のための小道具が既に準備されていた。走り出した『2STEP』は、一直線にステージを目指す。
取材・文=早花まこ

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