GANMI×宝塚歌劇、ダンスの質感変わ
る「すみれの花咲く頃」振り付け現場
に潜入ーー連載『早花まこの、「2S
TEP、できますか?」』

GANMI✕宝塚歌劇 OG DANCE LIVE 『2STEP』開幕まであと10日。3月からスタートし宇月颯、湖月わたる、GANMIのSotaに話を訊いてきた、宝塚歌劇OGでライターとして活躍する早花による連載『早花まこの、「2STEP、できますか?」』も佳境に。今回は稽古場レポートの第二弾をお届けする。稽古初日レポート(こちら)とあわせてチェック。
加速するダンス
スタジオの重い扉を開けると、聞き慣れたメロディーが耳に飛び込んできた。宝塚歌劇を知っている人ならお馴染みの曲、「すみれの花咲く頃」。ダンサーがいっせいに舞い始める。
5月26日(金)に日本青年館ホールで初日を迎える『2STEP』、そのお稽古が始まって1週間が過ぎた。11人のアーティストからなるGANMIは、ライブパフォーマンスにとどまらず、振付提供やワークショップ開催など、その超実力派のダンスで幅広く活躍している。
そのGANMIと7人の宝塚歌劇OGが共演するDANCE LIVEが、『2STEP』なのだ。
お稽古初日のスタジオを覗かせてもらった時、そこに満ちていた朗らかな高揚感は、今はぐっと濃密になっていた。高度な振付が続くお稽古への緊張感はあっても、皆さんの顔はとても明るい。
この作品の振付と構成、演出まで担うGANMIのSotaさんは、出演者の一員でもある。この日は、今日のナンバーを担当するAYAKOさんの振付を受けつつ、常にシーン全体の様子に視線を走らせていた。
今作で使われる「すみれの花咲く頃」は、アップテンポなアレンジを施された流麗な旋律が印象的だ。次々と変わるフォーメイション、総踊りの迫力には何度でも見入ってしまう。これまで別のジャンルの踊りを追求してきたダンサー同士、個性を競い合うような場面に仕上がっていく。
宝塚歌劇の男役のダンスでは、女性を男性に見せるため、多くの工夫が必要とされる。主にジャズダンスを基本としたステップが使われ、そこには「型」とも呼べる男役らしい踊り方というものが存在する。
もちろん宝塚歌劇の舞台で男役として踊るわけではないけれど、宝塚歌劇OGの皆さんにとって、かつてしっかりと身に付けたダンスではある。きれ良く身体を動かす様子には「さすが!」と声が出た。
しかし、GANMIのメンバーが踊る「すみれの花咲く頃」を目にして、自分自身の思い込みはすっかり取り払われてしまった。ものすごく、カッコ良いのだ。
ダンサーを支えるもの
タカラヅカ流の振付を受けたGANMIの皆さんは、あっという間に男役ダンスの特徴をとらえていった。それでいて、腕のラインや背中のしならせ方に一人一人の個性が滲み出ている。踊り慣れないはずの振りがみるみる整い、むしろGANMIの色合いを際立たせていた。またしても「さすが……!!」と呟いてしまった。
真剣な思いで作品に打ち込むのならば、楽なお稽古などないだろうと思う。和やかな雰囲気であっても、それは決して「楽しいだけ」の時間ではない。完成に到達するまで繰り返し練習に明け暮れる日々は、辛いこともたくさんある。そんな時に出演者を支えるのは、ほかでもない「ダンス」そのものなのかも知れない。
ほんのわずかの休憩時間も、GANMIのメンバーはフロアから離れなかった。出会ったばかりのステップをひたすら繰り返し、動きを身体に叩き込んでいく。はじめは不慣れだった振りも、何度も踊るうちに形がバシッと決まってくる。コツをつかむ速さに、驚かされるばかりだ。
『2STEP』、さらに前進
『2STEP』の面白さは、出演者のコラボレーションの他にもある。振付のコラボレーションが、そのひとつ。一作品を数名の振付師が担当してシーンの繋ぎ目などを一緒に作ったりすることはあるが、『2STEP』ではより深く関わり合う共同作業が行われていた。
「すみれの花咲く頃」の旋律が盛り上がって曲調が変化すると、ダンスの「質感」のようなものも変わっていく。それは、一曲の中でAYAKOさんとGANMI主体の振付が合わさっているからだった。
引き継いだパートの雰囲気を大切にしつつ、シーンの流れががらりと変化する振りを作っていく。その境目から、ダイナミックなうねりが生まれるのだ。
そしてそれは紙の上で考えた踊りではなく、実際にダンサーの動きを見て、今あるものを即座に作り直していく。その作業が、目の前で行われていた。
ダンサーも振付師も、制作スタッフも、それぞれの個性の違いを発見したお稽古初日から、ぐっと前進していた。一緒に舞台を作っていく仲間への理解を少しずつ深め、みんなが柔軟な姿勢でお稽古に臨む。
「次は、ツーステップ の繰り返しです」と指示を出して、AYAKOさんが踊って見せると、GANMIのメンバーがしきりに首を傾げている。その名の通り、2歩分の足を踏むステップのことだが、実はGANMIと宝塚歌劇OGでは異なる形のステップのことをそう呼んでいたのだ。
「ツーステップって、こうじゃないの!?」と言い合いながら、わっと驚きの笑い声が上がる。お互いのツーステップを見つめて踊る皆さんの姿は、まさにこの公演のタイトル『2STEP』がひとつになる道のりを象徴しているようだった。
取材・文=早花まこ

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