ヒグチアイ

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【ヒグチアイ インタビュー】
最悪と最愛、
両極端の感情が存在していてもいい

「悪魔の子」は
アニソンならではの感じで作った

では、収録曲についていくつか聞かせてください。まずは「悪魔の子」。TVアニメ『進撃の巨人』のエンディングテーマとして世界的ヒットとなっていますね。

『進撃の巨人』の漫画、アニメが素晴らしいことは私自身も身に染みて分かっているので、曲を書かせていただいて、それが受け入れてもらえているのは本当にありがたいです。今回のお話をいただく以前からすごく好きだったんですよ。最初は怖いと思っていたんだけど、最終的には人間同士の話になって、もう“すごい!”としか言いようがなくて。

アニメ作品に向けて曲を書くのは、もちろん普段とは違いますよね。

そうですね。「縁」も『生きるとか死ぬとか父親とか』というドラマに向けて書かせてもらったんですけど、それと似たような感じでした。1番は原作に沿って、2番は自分が好きなように書いて。フルで聴いた時に、2度美味しいみたいな曲になったらいいなと。「悪魔の子」はアニソンなので歌ってみたい方も多いと思うから、難易度が高いメロディーにしたり、技術的な面白さも取り入れています。ピアノで弾き語りする時は大変ですが、そういうことは考えず、アニソンならではの感じで作りました。

アニメソングとしての役割、リスナーにどう楽しんでもらうかも考えながらの制作だったんですね。

はい。ただ、真面目に考えていたというよりも、“こういうの好きでしょ?”という遊び心が強かったんですよ(笑)。転調だったり、ちょっと歌いづらいメロディーだったり、サビで開けていく感じだったり。

すごく俯瞰してますね、自分の曲を。

人間的に俯瞰タイプなんですよ(笑)。人に対しても“もっと踏み込みたい”と思うけど、それができない…傷つきそうになると自分から離れちゃうし、なかなか人を信頼できなくて。ちょっと冷めてるところがあるんですよね。

自分を冷静に見られるのはソングライターとしての大切な資質だと思います。

そうだと思うんですけど、テレビの音楽番組などでシンガーソングライターの方を観てると、すごく主観的だなと感じることがあって。人前で歌うこと、曲を作ることを主観的にやっている人は本当にすごいなと。

ヒグチアイさんもそのひとりだと思いますが(笑)。「劇場」も素晴らしいですね。人にはそれぞれ舞台があり、そこで生きていくしかないという。

人生の歌ですね。《ステージの上 一本のスポットライトがさす》から作り始めたんですよ。朝の4時か5時くらいだったんですけど、寝る前にスマホにメモしていたら“曲が書けそうだな”と思って、横になったまま2時間くらいで一気に書き上げたんです。あまり経験したことがない瞬間でしたね。

《もう会えない人よ/もう会わないと決めた人よ/あなたの劇場でしあわせでいて》というフレーズが印象的でした。

2020年、2021年は人との別れがとても多かったんですよ。レーベルの移籍もあったし、祖父がふたり亡くなったし。当たり前のようにいてくれた人、私を大切にしてくれていた人と会えなくなって、自分と人の人生が交わるのは本当に一瞬だと感じた時期だったんです。私にかかわってくれた人たちがどう思っているかは分からないけど、それぞれに人生があるし、一瞬を大切にしなくちゃいけないなと。さっき“人に踏み込むのが苦手”と言いましたけど、例え踏み込んだとしても、自分の陣地から出ることはできないし、それぞれの劇場で生きるしかないんだなと。

まさに《さみしいけど孤独じゃないの》ですね。そして、「ハッピーバースデー」は別れた恋人に対して《でも 一年に一度  誕生日ぐらいは/連絡してもいいよね》と思う“ぼく”が主人公で。

“あっ、今日はあの人の誕生日だ”と思い出すことってあるじゃないですか。私にもそういうことがあって、それをもとに書いた曲ですね。

《きみんちにいる猫の名前はぼくがつけて》のあたりは?

そこはフィクションです。猫を飼いたいとは思ってますけど(笑)。

想像を膨らませて書いたパートのリアリティーが素晴らしいですよね。アルバムの初回盤には書き下ろしの小説が入っていますが、やはりストーリーテラーとしての才能があるんだろうなと。

好きなんですよね、いろいろ考えるのが。人に対しても誰にも似ていない個性や好きなところを見つけるのが好きだし、得意なんですよ。例えば、道に落ちてるネギを見て“どういう状況でこうなったんだろう?”と想像したり(笑)。それが創作に活かされているのかもしれないです。

OKMusic編集部

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