花澤香菜に密着取材 ドキュメンタリ
ー番組『Real Folder』で語った、“
最大のギフト”に気づいた瞬間

花澤香菜が出演した、Paraviのドキュメンタリー番組『Real Folder』のレビューが公開された。同番組は、『情熱大陸』を手掛けたスタッフが贈る、今の時代を牽引する若きスターたちに密着取材したドキュメンタリー番組。花澤はその第1回目に出演し、人生初となる密着取材にこたえた。
花澤香菜が“最大のギフト”に気づいた瞬間
これまで300本以上のアニメ作品に携わり、女性声優の人気ランキングでトップに立つ花澤。透明感があり何にでもなれる妖精のような声。その活躍は今や、声優業のみにとどまらず、メディアへのゲスト出演もひっきりなしで、自身がパーソナリティーを務めるラジオ番組から歌手活動まで多岐に渡る。花澤が自身の最大のギフトであり武器であり何よりの魅力である「声」にどうやって気づき出会い、それを磨いていったのか語られるシーンがある。
(c)MBS
「好きだけどあまり向いてない」「ずるずる子役を続けていた時代」を経て、高校卒業時に芸能活動を辞めようと決意したこと。その際に初めて声について褒められて声優の仕事に賭けてみようと思った時のことを花澤はこう振り返った。「今まで『君の代わりはいくらでもいるから頑張りなさい』と言われてきたものを『君の声は特別だよ』って初めて認めてもらえたのが嬉しくて」と。
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彼女は自身の「声」によって自分の居場所を獲得していったからこそ、声のお仕事を通して聞いてくれる誰かと新しい世界を、また聞き手同士を繋げられる“入口”、”タッチポイント”になれる感覚を大切にしており、そこには聞き手にとってほんの束の間の癒しや居場所になれるようにという祈りに近い想いが込められているように思える。
転機となった映画『言の葉の庭』
彼女の「声」の可能性に賭け、飛躍の後押しをした人物として、アニメーション監督の新海誠監督のインタビューも収録されている。彼女自身も「転機となる作品」として名前を挙げていたアニメーション映画『言の葉の庭』での雪野百香里役抜擢の裏側が聞ける。
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新海監督はオーディションの様子を「自分にないものに熱心に手を伸ばそうとしているような花澤さんの気配を感じ、僕自身も何か違うものが欲しいと思っていた時に、お互いが持っているもの同士を教え合えるかもしれないと思った」と語り、花澤の起用はある種の賭けだったと明かす。心のバランスを崩している不安定な雪野を演じるにあたり、彼女が靴を左右反対に履いて役作りに臨んでいた姿を「それがお芝居の中に微かな違和感を入れていたのかもしれない」と回想したが、「雪野がどんな女性なのか最後には花澤さんに教えてもらえた」という言葉に、いかにして彼らがこの賭けに勝ち、最初の直感を正解に変えていったのか、その裏にある努力や模索に想いを馳せ、この化学反応に胸を熱くさせられた。
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今、声優人気は爆発的に高まる一方で、その志願者も増加の一途を辿っているが、プロの責任感、厳しさを見せつけられる場面もあった。外部の音が全て遮断されるアフレコブースは声一つで勝負する声優の舞台でもあり、戦場。そこに一人で立ち、たった一行、ワンフレーズの台詞に込められた感情が何に対してなのか、その感情を引き起こす事象は何なのか前後の文脈や行間から読み解き、音響監督と突き詰め、すり合わせていく様子は、きっと創作現場でしか起き得ない偶発的なアウトプットの楽しみや作品を作り上げていく一体感と同時に緊張感、孤独感が紙一重で存在する過酷な過程でもあるだろう。

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アフレコが終わるまでは逃げ出せず、キャラクターを通して何より今の自分自身と向き合わざるを得ない密室空間「精神と時の部屋」。常に自身の限界を試し、向き合うタフさ、これまでの実績や常識、経験値を適宜チューニングしていくような柔軟さが容赦なく求められるシビアな世界だ。台詞への、そしてキャラクター自身への深い理解と解釈を要する終わりなき探究は、どこまでいってもゴールのない表現の世界の可能性とともに溺れそうにもなる果てしなさ、迷い込んだら抜け出せないような苦しみをも想起させるが、やはりトップである彼女はそれこそをおごることなく中毒性のある楽しさだと誠実に受け止める。「アニメの中に広がっている世界を自分で想像してその中で喋ってるようにしないと分かる人には分かってしまう油断ならないところ」こそが声優の楽しさだと言い切る。
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常に闘い、自分自身を疑いながらも自らが獲得していった「自信」を今度は人を楽しませるために惜しげもなくどんどん還元していこうとする彼女がこれから新たに漕ぎ出す先にどんな景色が広がっているのか、やはりワクワクさせられる。
文=佳香(かこ)

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