Editor's Talk Session

Editor's Talk Session

【Editor's Talk Session】
今月のテーマ:コロナ禍を
背景にしたライヴハウスの発展

音楽に関するさまざなテーマを掲げて、編集部員がトークセッションを繰り広げる本企画。今回は第五回目にも参加してもらったCLUB Que/Zher the ZOO店長の二位徳裕氏、それでも世界が続くならの篠塚将行(Vo&Gu)、そして9月からオンラインファンクラブを立ち上げた神戸のライヴハウス・ART HOUSE店長の西本昇平氏をゲストに迎え、先が見えないコロナ禍でのリアルな現状を語ってもらった。
座談会参加者
    • ■二位徳裕
    • 1988年にインクスティック芝浦に入店し、当時最高レベルのロックシーンを経験させてもらったあと、下北沢屋根裏で店長を担当。94年よりCLUB Queを運営、05年にZher the ZOOを開店。
    • ■西本昇平
    • 1996年からART HOUSEのブッキング担当として勤め、2006年に前任のオーナーより引き継ぎ独立。お酒がガソリンの超楽観主義者。
    • ■篠塚将行
    • パンクバンド・それでも世界が続くならのヴォーカリスト。メジャーデビュー以降もライヴにこだわる現場主義。コロナ禍で離職した元ライヴハウス店員。著書『君の嫌いな世界』を出版。
    • ■石田博嗣
    • 大阪での音楽雑誌等の編集者を経て、music UP’s&OKMusicに関わるように。編集長だったり、ライターだったり、営業だったり、猫好きだったり…いろいろ。
    • ■千々和 香苗
    • 学生の頃からライヴハウスで自主企画を行なったり、実費でフリーマガジンを制作するなど手探りに活動し、現在はmusic UP’s&OKMusicにて奮闘中。マイブームは韓国ドラマ。
    • ■岩田知大
    • 音楽雑誌の編集、アニソンイベントの制作、アイドルの運営補佐、転職サイトの制作を経て、music UP’s&OKMusicの編集者へ。元バンドマンでアニメ好きの大阪人。

“ライヴハウスで働いてる”
と言えなくなった

千々和
もともとは編集部のスタッフで音楽シーンについて話す企画だった『Editor's Talk Session』ですが、コロナの影響が音楽業界にまで及んだ4月からゲストを招いて実施するようになって今回で第六回目になります。二位さんと篠塚さんはその第一回目の時にも参加していただいたのですが、前回から約半年が経とうとしている今、状況はどのように変わりましたか?
篠塚
僕が一番状況が変わったかもしれないですね。4月に座談会に参加した時は吉祥寺 Planet Kで働いていたんですけど、クビになりました。
西本
えー!
二位
実は今、うちを手伝ってもらってるんです。
千々和
いつ頃から状況が変わったんですか?
篠塚
コロナで売り上げが立たなくなって、給料が出せないってことになり…店長たちもいろいろ気にしてくれたんですけどね。申し訳ないけどもう雇えないと。でも、だからと言って僕が諦めてしまうと、僕が今まで担当してきたバンドたちが苦しいままなので。これは僕の考えですが、まず苦しんでいるバンドの状況をどうにかしなきゃって思いながらも、どうにもなっていないのが今です(苦笑)。
石田
それがリアルな現実ですよね。ライヴハウスだけじゃなくて、飲食店とかでも同じ状況だろうし。
千々和
前回はライヴハウスが通常営業できないという状況に直面しての気持ちを話してもらっていて、行動に移す直前のタイミングだったと思うんですね。二位さんはCLUB Que/Zher the ZOOでの新しい取り組みとしてYouTubeチャンネル『QueTube』で定期的に動画を配信していて、九州のロックシーンにスポットを当てたコアな企画や、映画『BECK』のトークライヴなど、さまざまな企画をしているのもライヴハウスの色だなと感じました。
二位
YouTubeを始めるにあたって、音楽だけに特化して考えるとすごく狭まってしまうと思ってて。前回の座談会に参加した時は、違う畑のYouTubeチャンネルを観始めた時だったんですよね。そしたら音楽以外のコンテンツにすごく面白いものとか、エネルギッシュなものがあって。逆に音楽関係はMVを流したり、全盛期の良かったものを踏襲しているだけな感じがしましたね。これじゃいけないと。音楽が好きな人は今後も音楽を聴き続けるだろうけど、今から何かに興味を持つ10代の子とかは、このままだと音楽離れすると思ったんですよ。だからって、僕らがやってることが今の10代に向けているとはまったく思わないですけど、それでも他ジャンルの人にも興味を持ってもらえることとか、音楽をやっている人間でも視野を広げられる要素があったらいいなって。
千々和
確かにライヴハウスへの関心はどんどん薄れていっている気がします。最初はクラスターが起きたとか、良くない印象を与える情報が多かったけど、今は配信とか新しいコンテンツを取り入れて活動しているライヴハウスはどんどん増えていっているのに、知られていない印象はありますね。
二位
この間ね、子供連れて遊んでたら職質を受けたんですよ(笑)。職業を尋ねられて“音楽関係です”って答えたら、今までは“レコード会社?”とかそんな感じの反応だったのが、“えっ、もしかしてライヴハウス?”って(笑)。
篠塚
“ライヴハウスで働いてます”って言えなくなりましたよね。地元のライヴハウスで高校生のバンドと一緒に配信ライヴをする予定だったんですけど、前日に親方から反対されたみたいで来れなかったことがありましたし。昔だったら“不良”とか邪悪なイメージがあるからって止められてたのが、今だと“ライヴハウスに行くと感染する”っていう印象があるんでしょうね。
二位
数の原理からしたら感染者は出てないほうだと思うんですよ。これだけ神経質に真面目に取り組んでいる業種もないってくらいにやっていると思いますけどね。
篠塚
西本さんから見て、関西はどんな状況だったんですか?
西本
特に関西だけが特別扱いされているっていう実感はなかったものの、大阪のライヴハウスで感染者が出たって報道されて…ライヴハウスのオーナーはうちにも出てもらったことがあるバンドマンだったりして身近な存在なので、ニュースで取り上げられているのを観た時は他人事じゃなかったというか。関西圏のライヴハウスからもいっぱい連絡がきましたし、やり取りすることは多くなりましたね。
石田
そこでライヴハウス同士の結束が強まったっていう実感はありますか?
西本
そうですね。神戸のTHE LIVE HOUSE CHICKEN GEORGE、VARIT.、MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎とうちの4会場で連絡を取り合って、『ライブハウス ジャッジメント in 神戸』というオンラインだけの無観客配信サーキットを4月に開催しようとしたんですけど、その前日に休業要請が出てしまったので中止したんですよ。“何を考えてるんですか?”っていうメールも山ほど来たし…(苦笑)。
篠塚
観客はいないけど、出演者がいっぱいいるから感染リスクがある、ってことですよね?
西本
そうそう。演者同士とスタッフの接触とか、会場に行くための移動に対してのセキュリティーだったりとか、それらを“どう責任取るんですか?”っていうメールがめちゃめちゃきました。
石田
人が集まること自体がダメになりましたからね。
西本
そうなんですよね。イベントのテーマが“ライヴハウスは良いところですか? 悪いところですか?”だったのに、“悪いところです!”って言っているような風潮になってしまって。他のライヴハウスにも迷惑がかかっちゃうので中止にしたんです。で、改めて6月21日に開催したんですけど、イベントが終わってからもずっと4会場で1組ずつバンドを出してイベントを回していたりと、コミュニケーションは取っています。神戸のライヴハウスって全国的にも仲悪いって言われているので(笑)、コロナのお陰でとは言いたくないけど、それをきっかけに毎日連絡し合うようにはなって、それはそれで前向きに取り組む動きにはなってます。
二位
東京はね、仲悪そうな感じはないけど、なかなか仲良くはならないですね。腹を割って話せる人というのは限られるというか。
全員
あはは。
二位
みんな“どうしてます?”って訊きたい感じはあるんだけどね。腹を割って話すっていうところまではまだ…これは関東の癖かもしれないですけどね。関西っていい時はバチバチしているイメージがあるけど、いざとなるとタッグを組むような感じがあるじゃないですか。東京は距離が近いから会って話しはするんだけど団結って感じではないですよね(笑)。この状況が長引くと、一旦結束してみても考え方に差が出たりするかもしれませんが、少なくとも今仲良い人たちと、ずっと仲良くしていたいですね。
篠塚
それは東京の文化独自の考え方かもしれないですね(笑)。

OKMusic編集部

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