Editor's Talk Session

Editor's Talk Session

【Editor's Talk Session】
今月のテーマ:
音楽シーンの循環を救うために、
今、自分ができること

音楽に関するさまざなテーマを掲げて、編集部員がトークセッションを繰り広げる本企画。第15回目のゲストは、昨年3月26日に発足された有志団体『SaveOurSpace』の発起人メンバーであり、ライヴハウス・下北沢LIVE HAUSの店長でもあるスガナミユウ氏に参加してもらった。新型コロナウイルス感染拡大防止のために営業停止を行なう文化施設への、国による助成金を求めて活動している『SaveOurSpace』。活動初期に行なった署名活動では国内ネット署名最速となる4日間で30万筆以上を集めたが、長い戦いになるコロナ禍でひとりひとりの意識と行動が必要であることは依然として変わらない。
【座談会参加者】
    • ■スガナミユウ
    • 下北沢LIVE HAUS店長。ソウルバンドGORO GOLOのメンバー。コロナ禍での暮らしと仕事を守る運動『SaveOurSpace』の発起人のひとり。映画・音楽・演劇・美術の4者による任意団体『WeNeedCulture』のメンバー。
    • ■石田博嗣
    • 大阪での音楽雑誌等の編集者を経て、music UP’s&OKMusicに関わるように。編集長だったり、ライターだったり、営業だったり、猫好きだったり…いろいろ。
    • ■千々和香苗
    • 学生の頃からライヴハウスで自主企画を行ない、実費でフリーマガジンを制作するなど手探りに活動し、現在はmusic UP’s&OKMusicにて奮闘中。

自分たちが国や行政を
動かさないといけない

千々和
この記事を読んで『SaveOurSpace』を知る方もいると思うので、まずはスガナミさんが同団体に関わるようになった流れからおうかがいしたいです。
スガナミ
新型コロナウイルスの感染が拡大する前は、2019年12月まで下北沢THREEで4年くらい店長をしていて、THREEとBASEMENT BARはもともとテナント契約が終了する予定だったんですよ。今は再契約ができるようになって、営業継続のためのクラウドファンディング『BASEMENTBAR / THREE CONTINUE PROJECT』(支援受付締切:2021年2月22日 23:59)をやっているんですけど、僕はなくなるのが決まっていた時にチームで独立をして、下北沢LIVE HAUSを立ち上げる準備をしていたんです。コロナの影響が広がっていく中、周りの店もライヴハウスを営業するだけでクレームが入るような状態で…LIVE HAUSも2020年4月から6月までオープニングイベントを90本くらい組んでいたのがどんどんキャンセルになってきて。4月初旬にオープン予定だったところに緊急事態宣言がぶつかってしまい、結果的にガイドラインを遵守して客数を半分にするかたちで8月1日に縮小営業にてスタートしました。
石田
3月はちょうど他のライヴハウスも営業を自粛し始めた時ですよね。
スガナミ
はい。そんなムードの中、3月25日に音楽関係者の有志で国会議員に陳情へ行く機会があったんです。最初は日本共産党の小池 晃さんと吉良よし子さんが話を聞いてくれて、その日に衆議院議員の寺田 学さんにも話しに行ったんですね。特に寺田さんは国内のDJにも詳しく、現状も知ってたので、すぐに要望書を作って内閣に持って行こうという話になって。その場で当時の菅内閣官房長官に連絡をしてくれたので、僕らは喫茶店で要望書を作り、旗となる言葉があるといいってことで“SaveOurSpace”と名前をつけたんです。そこに集まってたメンバーは俺みたいなライヴハウスの人間やDJ、レコードショップの店長とかで、業界団体ではなく、有志で集まって困ってることを伝えに行こうっていう感じだったので、最初にどう活動をしていくかを決めていたわけではないんです。
石田
『SaveOurSpace』という団体を作って議員に陳情しに行ったという流れではなかったんですね。
スガナミ
そうなんです。要望書を作って菅さんに持って行ったあと、その後の記者会見で菅さんが、“音楽関係者からの窮状も届いている、何かしらの支援策をパッケージに加える可能性がある”と言及していたから、後押しで民意に訴えようと思って署名を始めたんです。あの混乱している状況も相まって、4日間で30万筆くらい集まり、DOMMUNEで記者会見を行いました。その後、4月2日に、政府・与野党連絡協議会っていうコロナ対策のために発足しているチームの各会派に要望書と署名を持って行ったのが活動の始まりでした。
石田
『SaveOurSpace』の発足からかなりの短期間ですね。
スガナミ
ここまでの流れが一週間くらいですね。『SaveOurSpace』は誰が主体でもないところから立ち上がったので、あとから考えるとそこが乗りやすかったんだと思います。行き場のない不安をぶつけやすい署名だったのかなって。
千々和
今年の3月で『SaveOurSpace』の発足から一年が経とうとしていますが、一年前と今ではお気持ち違いますか?
スガナミ
まず一年もやるとは思わなかったです。こういった活動って長くやればやるほど複雑化していくんですよね。最初は勢いでいけていたところが、活動が広がっていくことにより慎重になって意思決定が遅くなったり。どんどん参加してもらわないと困るんですけどね、バランスが難しいなと感じる時もありました。これだけ長く続けているということは、それだけ大変なことが続いているってことですよね。今も緊急事態宣言が出ていますけど(2月3日時点)、普段は仕事があるので、半ば休業状態になってしまう時だからこそ力が注げるというのもあって、昨年の4月、5月は『SaveOurSpace』のことばっかりやってましたね。とにかくこの大変な状況を世の中と行政に伝えないといけないと思ってました。
千々和
今のライヴハウスの状況は、その都度SNSやクラウドファンディングでも知ることができるんですけど、言葉にできない部分もありますし、昨年は特に発信してくれている言葉の奥にどんな大変さがあるのかってことを自分は全然分かっていない感じがしていて。そんな中、『SaveOurSpace』の活動を通して署名の数であり、音楽ベニュー関係団体へのアンケート結果で現実を知ることが多かったです。“ライヴ配信での売上げは通常時の売上と比較して何パーセントくらいか?”というアンケートに対して“10パーセント未満”って答えが一番多かったのは、意外ではないですけど、やはり実際に結果を見て心にずっしりきました。今まではテレビで国の動きを知ることばかりだったので、それだけではいけないなと。
スガナミ
それはありがたいですね。今までは政治家ってなんとなく声の届かない存在な気がしていて、選挙には行くし、おかしいと思ったらハッシュタグを付けてSNSで自分の意見を発信することもあるけど、どう変わっていくのか、何で状況が変わらないのかがあんまり分かってないというか。『SaveOurSpace』の活動で議員の方に会ってやりとりをするようになってからは…これは側から見ての意見ですけど、“こうだから変えられないのか!?”って知ることもありました。でも、政治家は自分たちで選んでるんだから、結局は自分たちがその政治家を動かさないといけないんですよ。政治家や国、行政を自分たちで動かしていくっていう意識を持っていないと何も変わっていかない。
石田
自分が投票した人ではない人が当選しても、“こうしてくれ!”って意見や要望を言う権利はあるわけだから、そこは言っていかないといけないってことですよね。
スガナミ
そうです。悲しいですが、多くの官僚や政治家は僕たちの状況を把握しに来てくれません。彼らの仕事なんですけどね。だから、こちらから行くしかない。僕らはたまたま議員の知り合いがいたから会いに行けたけど、ちゃんと陳情の申し入れをすれば会えたりするので、要望があったら申し入れするのが普通になっていくといいなと思いますね。間違っていると感じたら政権の批判をすることも大事ですが、しっかり政策の中身の批判をしたり、直接要望を伝えたりすることも大事だと思います。国を動かしてる人たちの意識を変えないと、何も変わらないんですよ。今のピンチを乗り越えるには彼らに意識を変えてもらわないといけない。今はとにかく時間がないんです。
石田
議員を引きずりおろしたら次の選挙までまた時間もかかるから、だったら考え方を変えさせたほうがいいと。
スガナミ
与党の中身から変えていくのと、野党に政策の批判をしっかりやってもらって、ちゃんと国会で追及してもらう。それが世の中に広まることも重要だし、どっちの後押しも重要だと思いましたね。
石田
この状況を国民が知っていかないといけないですね。こんな状況だがら国会中継を観る人が増えたと思いますけど、自分を含め今までは観てなかった人も多いと思いますから。
スガナミ
今はSNSで国会中継の要点が動画で流れてきたりもしますけど、あれは観やすいですよね。答弁と質疑でその人の感じが伝わるし。ちゃんとしている議員は、質疑を作る時にも現場の声を細かくリスニングして作っていますよね。実際に現状を伝えられるのは当事者だけなんですよ。

OKMusic編集部

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