ユナイトゆきみ卒業!ラストステージ
で完全燃焼

最早恒例になりつつあるメンバーフィーチャーイベントだが、寒い冬も終わって迎えるこの日、彼の人柄のようなハートフルで笑顔溢れるライヴが展開されるだろうと思われていた。しかし先日この日をもって持病の腰痛の悪化により、ゆきみがユナイトから脱退することが発表されると一転彼の最後の勇姿の場となってしまったのだ。“終わらないバンド”という大きな目標を掲げるユナイトにとってメンバーを一人失うことがどんなことを意味するのか?会場に集まったファンはその答えを求めて、ここに集まっているように感じてならなかった。
祝福と悲しみ。
相反する2つの感情が入り交じる異様な雰囲気を吹き飛ばすように、オープニングはゆきみ作詞作曲の『Chronus』でスタート。パワフルなバンドサウンドを浴びると、まだ出来るよ!とどうしても思ってしまう。こんな想いが今日何度訪れるのだろうと考えるとやはり寂しさを感じずにはいられないが、そんなことはお構いなしにライヴは進んでいく。

「久々の曲を」という結(Vo)のMCから『提案』『ハイスピードフェイスレスネス』『3rd Blue』とアップテンポな曲を次々と投下する。ともすると少しでもドラムに負担の少ない楽曲を、と考えてしまうかもしれないが違うのだ。ユナイトがユナイトらしくいること、何よりもファンを楽しませることが第一に考えられたこの流れは紛れもなくユナイトのゆきみが確かに存在している証なのだ。ライヴそのものをもって彼に存在意義を与えているその姿はユナイト流の祝福に見えて仕方が無かった。
そんな熱気溢れる展開から『青と白のコトバ』『答え無いコトバ』というゆきみ作詞作曲の2曲へと続いていく。彼の作る繊細で人の記憶を抉る楽曲はユナイトの持つ幅広い楽曲達の中でも異質であり、秀逸だ。自然に会場に響き渡った大きな拍手が何よりもそれを物語っていたように思う。
しっとりと、どこかふわふわした空気に包み込まれたがそれも束の間。彼らのライヴがこれで終わるはずがないし、ファンもそれを望んでいない。本編最後のブロックは正に嵐の選曲。『FCW』『Love_Duck_Core_Nothing』『world wide wish』とここまで体力を温存していたのか!と思う程に暴れ狂うメンバーの姿がそこにあった。本当に会場を壊してしまうのでは?と感じる程のファンとの一体感は、(こんなことを言うと怒られてしまうかもしれないが)今まで見たどのライヴよりも鬼気迫る、狂気に溢れた光景であった。
そんなぐちゃぐちゃな本編が終わっても尚巻き起こるにアンコール応えて再度メンバーが登場する。ここまで来ると誰しもが意識する別れの時。会場中がゆきみのメンバーカラ―である水色のライトに染まる中、しかし彼は最後まで“ユナイトでいること”に徹した。
『絶望クリエイター』で最後の爆発を見せると『starting over』で運命の日に幕を閉じた。
きっとファンは分かっていたと思う。悲しむことはゆきみの本意で無いことも、何よりバンド自身が一番辛く、悩ましい選択をしていることも。けれど好きだからこそ止められない感情の行き場を探していたのではないか。そしてこの日ユナイトとファンはお互いが持つ、行き場の無い想いをライヴという場でぶつけ合ったのだ。全ての楽曲を演奏し終わった時、リーダーである椎名未緒から「ゆきみくんはやるべきことをすべて全うしてユナイトを卒業します」と、ゆきみへ卒業証書が手渡された。それは、これから先もユナイトとして歩み続ける4人の決意表明、そしてゆきみとファンがその想いを改めて強く彼らに託した瞬間だったように思う。
3周年を無事終え、8月に目標としてきた渋谷公会堂でのライヴに挑むユナイト。彼らはそのライヴを“あの日見た、奇跡の先に”と形容している。
大袈裟なと思う方もいるかもしれない。しかし今からこのワンマンが楽しみで仕方無いのは私だけであろうか。何故ならば沢山の強い想いを受け取って、ユナイトが普通でいられるはずがない。4人は今も来るその日に備え、あなたを楽しませる策を練っているのでは?

当日彼らはきっと奇跡を信じ続ける者が何を掴むのかを見せてくれるはずだ。“終わらない”バンドという形の無い最終目標を据えるユナイトにとって、この日のライヴは長いバンド活動の中のある一日だったかもしれない。しかし彼らがそれを叶えたとしたら…?この日も紛れもなく奇跡の記憶の1ページとして刻まれる。
「これからのユナイトは1日1日を奇跡にしながら活動していくんだ」そんなことを感じさせてくれる素晴らしいライヴであった。

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