Quubi、錚々たるメンツを迎えて開催
された初の自主企画『KiTSUNE Party
2023』にみた現在地

Quubi Presents KiTSUNE Party 20232023.06.11(sun)GORILLA HALL OSAKA
6月11日、GORILLA HALL OSAKAにて4人組アイドルグループQuubiによる初主催イベント<Quubi Presents KiTSUNE Party 2023>が開催された。Quubi以外の出演者は、yosugala、On the treat Super Season、INUWASI、Kolokol、Axelight、NightOwl、キングサリ、Ringwanderung、#2i2という錚々たるメンツ。鉄壁の布陣。Quubi初の自主企画ということも大きなポイントでありながら、ひとつのアイドルイベントとしてもすでに相当豪華な内容だ。Quubiの現在地を如実に表していると言っていい。
yosugala
なんせ1組目からyosugalaである。結成からまだ1年も経っていないが、最近の急成長ぶりがエグい。「こんなに来てくれると思わなかった!」とMCでメンバーは驚いていたが、フロア側としては「いや、当然でしょ」ってなもんだ。メンバー全員が卓越した歌唱力を持ち、AliAのメンバーがほとんどの作詞作曲を手掛ける良曲を真っ直ぐに歌い届ける。笑顔たっぷりに歌う「夜明けの唄」や「四葉のクローバー」など、丁寧で優雅な振付で魅了した。
Ringwanderung
それに続いたのはRingwanderung。狂騒的かつ印象的な鍵盤フレーズが牽引するトラックを武器に5人のメンバーがくるくるとフォーメーションを変化させ、楽曲に劣らぬめくるめく展開でフロアに迫る。手拍子を煽ったり、観客と積極的につながろうとはするものの、コンセプチュアルなショーを観ている気分にさせられる。特に、ポニーテールを激しく揺らしながら切実さを感じさせる歌唱を「Flash Back」でみせた増田陽凪と、まるで野生児のような自由さで己の生き様を表現したみょんの存在感が際立っていた。
Axelight
強烈な4つ打ち曲でありながら、4人の美しいカノンにハッとさせられる「ACID」から、イントロ1秒で大歓声が上がった「RISE OF FRONTIER」と、今年春に発表された新曲でテンションを高めていったAxelightは、フロアの反応を見ているだけで最近の好調さが伝わってくる。EDM的でアグレッシブなサウンドで攻めながら、王道アイドル的な「オドレルンダロ?」を挟んだり、後半はロック色が濃い「アンドロップガール」でエモーショナルな展開を見せるなど、多彩な魅力で盛り上げた。
INUWASI
フロアの熱がさらに高まったのはINUWASIの6人がステージ現れたから。冒頭からメンバー全員が一斉に前方に出てきたり、積極的にお立ち台を使って観客へ訴えかけたり、フロアとの融合を図ろうとする姿勢がゴリゴリに伝わってくる。ライヴ後半でこの日初めてモッシュが起こったのも必然と言える。特に目を引いたのはすずめの歌唱だ。癖がなく真っ直ぐで、かなりキーの高いメロディでも裏声を使わずに難なく歌いこなす姿には唸った。
#2i2
この日のメンツで最もQuubiと並んで最もロック色が強かったのは#2i2。彼女たちの場合はさらに硬派だ。それが単純にサウンドから感じるものなのか、それともアティチュードから感じるものなのかはわからないが、4人の発声にはそれに通ずる力強さが明らかにある。特に、十味のロングトーンは最高にカッコよかった。しかし、髪を振り乱して歌いながらも、ターン時にフワリと広がるスカートの裾が美しかったり、ハッとさせられる場面が多々あり、とても印象的なパフォーマンスだった。
キングサリ
キングサリは個性豊かな楽曲の応酬でフロアをやすやすと手玉に取り、最後はがっしりとユナイトさせた。この日、最もリフトの数が多かったのもこの時間帯だったかもしれない。「狂喜乱舞」ではフロアで花いちもんめが発生。上手下手と観客が移動する光景を2階から見るのはとても楽しいものがあった。楽しいと言えば「生生しろよ」のマイクリレーも圧巻だったな。ステージ、フロアともに様々な展開があったからこそ、ラスト「CRAZY KING」での肩組みがより映えたんだと思う。
NightOwl
折原伊桜を筆頭に類まれなる存在感で場内の空気を変えたのはNightOwlだ。のっけから歌のパワーを見せつけたのは「ロンリー・ナイトパレード」。ゆったりとしたオープニング曲から打って変わってキレのあるダンスで魅せた「夜想歌」、ダイナミックな動きでステージを狭く感じさせた「La La Lullaby」など、流れではなく1曲1曲の強度の高さでフロアを牽引。これらの楽曲の積み重ねが「All Night Long」での一体感につながった。ただそこにいるだけで感じられる強さが4人にはある。
Kolokol
大阪ナンバー1の実力派Kolokolは完璧なセットリストでフロアを魅了した。キラーチューンの数々をこれでもかというエネルギーでぶっこみ、なおかつ流れでも魅せるという高度なパフォーマンスができるのは4人の個性豊かな歌声と鉄壁の世界観があるからこそ。自分はライヴ写真を撮りながら彼女たちのパフォーマンスを観ていたのだが、シャッターを切ることを忘れてただ頭を振り続ける瞬間が何度もあった。
On the treat Super Season
トリのQuubiにバトンを渡すという大役を務めたのは、彼女たちの盟友On the treat Super Season。Quubiよりも少し前の2021年8月にデビューし、この2年弱の間に何回もステージをともにし切磋琢磨してきたが、現体制での活動が今年8月に終了することが発表されている。どのグループにも勝るテンションで駆け抜けたが、メンバーの胸に去来していた想いはどんなものだっただろうか。そんなことに思いを巡らすと、目の前で繰り広げられる彼女たちの豪快な一挙手一投足がさらにグッとくるのだった。
Quubi
Quubi 撮影=松本いづみ
実は、Quubiのライヴが始まる前、少し心配をしていた。この日のイベントは歴戦のツワモノや同世代の強豪だらけ。まだデビューから2年も経っていない彼女たちが、バンドセットとはいえ堂々とトリの役割を果たすことができるんだろうか、と。結論から言うと、それは杞憂に終わった。むしろ、これまで観ていたQuubiとは別物に感じた。これは変化というよりも脱皮と表現するほうが近いかもしれない。
オープニングは「Ragnarok」「Still Walking」「Three」「Pump It」という定番曲を連ね、安定の走り出しを見せていたのだが、この時点で心地よい違和感を覚えた。なんというか、これまではメンバー一人ひとりの個性が積み重なってQuubiという集合体になっていたのだけど、この日は「メンバー一人ひとりがすでにQuubiだった」のである。かつては各々の役割がはっきりしていただけに各メンバーの個性がより突出していて、それがQuubiというグループを印象的にしていたけど、今やそのフェーズにいないと言える。貫禄があるし、余裕も感じられる。
鈴猫りさ 撮影=松本いづみ
もちろん、それぞれに成長を感じさせる部分はある。まず、鈴猫りさは相変わらず歌が上手いのだが、そこにカッコよさが加わっているように聞こえた。そして、立ち姿が堂々としている。技術的な成長は当然ありながらも、そこにはメンタルの成長も影響を与えているのではないだろうか。
藤宮紬のラップもキレ味はそのままに、そこに色気のようなものが加わったし、緩急で聴かせるようになった。川原みなみはシンプルに歌が上手くなった。話は飛ぶが、終盤に披露した「Change my life」のサビにおける藤宮と川原のボーカルは、鈴猫と村上華花に決して引けを取っていなかった。余談だが、ライヴ後に川原に聞いたところ、最近の彼女は自分本位に踊るのではなく、グループ全体の調和を意識しているそうだ。こういったことはほかの3人もそれぞれに考えているのだろう。それが<一人ひとりのQuubi化>の要因なのかもしれない。
村上華花 撮影=阿刀"DA"大志
村上はこれまで以上に歌における感情表現が豊かになった。それでいてコテコテ関西弁MCはそのまま。成長した彼女の口から「まだ声出せるやろがい!」なんて煽りが出てくると笑ってしまうが、そのギャップが大きくなればなるほど面白い。
でも、こうやって各メンバーのパフォーマンスについて個別に書くことは最早Quubiのライヴレポートを書く上では正しくないのではないかとすら思う。それぐらい4人の存在が溶け合っているし、Quubiというひとつの生き物として話をするのが適切な気がするのである。少なくとも、それぐらいの存在感を放っていたのは確かだ。
川原みなみ 撮影=松本いづみ
もうひとつ気付いたのは、新たなライヴの流れの構築である。こういった大きなライヴだと問答無用の激アゲ曲「DIVE YOURSELF」はライヴ終盤に配置されがちだが、この日は6曲目というライヴのちょうど真ん中で披露された。これには思わず「おお!」と声が出た。強気な攻めと言ってもいい。言い換えると、新しい勝負をしている。さらに、この日のラストを飾ったのは「Dear my…」と「Take me now」という今年配信されたふたつの新曲。まだファンの間でも馴染みの薄い曲を重要な流れで披露するのは、「今」の自分たちに対する自信の現れとも言える。活動2年目で徐々に持ち曲も増えていくにつれて、当然セットリストも変わっていく。そこで初期の人気曲に頼りっぱなしになるのではなく、こういう日だからこそ、この日集まってくれたファンを信じて敢えて挑戦をするという姿勢は高く評価するべきだ。
この日は久しぶりの5月のMAWALOOP以来約ひと月ぶりのバンドセットだったが、ライヴを重ねるごとに一体感が増している。シンプルに演奏とパフォーマンスのバランスが非常にいい。これみよがしにバンドっぽい爆音をぶっ放すのではなく、あくまでもQuubiとしてベストな音像を描いていく。最初からQuubiの音楽と生バンドの相性はいいと思っていたが、今後もっとミラクルを感じさせてくれそうだ。
藤宮紬 撮影=松本いづみ
個人的に、規制緩和後にQuubiのライヴを観るのは初めてだったが、フロアの盛り上がり方も最高だった。「Legendary」ではどでかいサークルピットが生まれていたし、とにかく混沌としていた。これによってようやくQuubiというグループの完成形を見た気がした。「ああ、これがQuubiなのか……」とぐっちゃぐちゃのフロアを見ながら思った。このフロアはもっと育っていくはずだ。
新曲「Dear my…」はなんだか別人が歌っているような気分にすらなった。新たな曲が生まれるたびに、4人は新たな表現を獲得していく。もうすぐ3年目を迎えるQuubiはデビュー直後と変わらぬスピードで七変化を続けていくのだろう。
Quubi 撮影=松本いづみ
そんな彼女たちの新たなステージはすでに用意されている。まず、9月に新EPの発売が決定。それに伴って自身初の全国ツアーが9月17日のKYOTO MUSEを皮切りに全国10箇所で行われる。対バン編とバンドセット編が混在する変則的なスケジュールで、ツアーファイナルは来年1月7日に大阪BIGCATにて開催。Quubiが次の目標として掲げていた会場だ。もちろん、今のままでソールドできるような会場ではないが、今のQuubiには伸びしろしかない。この先、半年以上の間に彼女たちの熱が全国にもっと広まることを願っている。

取材・文=阿刀"DA"大志

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