【ライブレポート】R指定、47都道府
県ツアーへ「元気でいてください。い
ってきます!」

今年で活動10周年を迎えるR指定が、約3ケ月半かけて全国47都道府県を廻るワンマンツアー<CLIMAX47>を行う。
初日は9月21日の埼玉公演なのだが、それに先駆けて9月12日に東京・高田馬場AREAにて<CLIMAX“0”MioKuRi>が行われた(本公演に参加する条件は、オフィシャル携帯コンテンツ「R-Shitei OFFICIAL GOLDEN MEMBERS」の入会対象者であること)。そして、ライヴタイトル<CLIMAX“0”MioKuRi>と付いていることからも分かるように、これからの長丁場をメンバーが無事に乗り切れるよう、きちんとお見送り(“0”MioKuRi)できる態勢でライヴに臨むこと、というのが必須であった。
平日公演にも関わらず、チケットは即完売。ライヴバンドとしての底力を見せ付けた。なお、このツアーは、最新シングル「CLIMAX」を中心にしたセットリストで現在のR指定を表現していくとのこと。とはいえ、この日はまだシングルがリリースされる6日前。誰も新曲の全貌を知らない。それでもメンバー全員が新衣装をまとってステージに登場した瞬間から、ファンは1曲目に何の曲を演奏するか察知したのだろう。そう、この日は本編1曲目からリードトラックの「CLIMAX」がぶちかまされた。サビ始まりの聴きやすい楽曲とだけあって、フロアも拳を上げてノッていく。なぜ、この曲を1曲目に置いたのか、それにはこんな理由がある。

彼らはこの「CLIMAX」を47ツアーのテーマ曲として考えて作ったそうだ。では、どうしてツアーにテーマ曲なるものが必要だったのか。遡ること3年前、彼らは「八十八箇所巡礼」という曲を世に出した。これは、全国88箇所のライヴハウスを廻るツアー<日本八十八箇所巡礼>を始めるにあたり、テーマ曲として用意したものである。当時、ほぼ休みのない状態で全国88箇所を約5ケ月で廻るというツアーを組むバンドはR指定の他に誰もいなかった。そんな過酷な状況でライヴをするなんて尋常じゃない、とメンバーの体調面を気遣う声も多く聞こえた。しかし、彼らは九州男児。一度決めたらやり通す性格だ。そんな自分たちを鼓舞するために、応援歌として用意されたのが「八十八箇所巡礼」だった。
本当ならば、ロックの聖地・日本武道館でツアーファイナルが行われるはずだった<日本八十八箇所巡礼>。“行われるはずだった”と書いたのは、実際にはできなかったから。いや、できなかったというより、やらせてもらえなかったという方が正しいかもしれない。というのも、R指定というバンド名を始め、これまで出してきた曲のタイトルや、歌詞の内容でNGが出てしまったのだ。挙げればきりがないとは、まさにこのこと。何か1つがダメだったわけじゃない。すべてがダメ。改善の余地すらなかったのだった。そんな揚げ足を取るかのような理由によって憧れのステージに立つことすらできないなんて。それも同期のバンドが次々に武道館ライヴを経験していく中でだ。

そのときのメンバーの悔しさは、想像するに耐えがたい。でも、彼らは腐らなかった。ツアーファイナルを急遽、幕張メッセに切り替えると共に、気持ちを前に向かせ、自分たちの背中を押してくれる力強い曲「八十八箇所巡礼」を完成させたのだ。それで結局、ツアー<
日本八十八箇所巡礼>は成功したのかって? 言うまでもなく、最高の景色をファイナルで見せてくれた。確かあのときも、初日を高田馬場AREAに設定してファンのみんなから「いってらっしゃい!」とお見送りされたっけ。彼らにとってホームといえるライヴハウスから出発すること、テーマ曲を作ること、というのは、もはや長丁場のツアーには必要不可欠なのだ。

前置きが長くなったが、どうして<CLIMAX“0”MioKuRi>の詳細を書かずに、バンドが今日に至るまでの背景を書いているかというと、毎回セットリストが異なるとはいえツアーのネタバレを避けるためというのもあるが、彼らが話題性だけでこの10年を過ごしてきたわけではないというのを言いたかったからだ。バンドが楽しさを得るためには、その何十倍もの辛酸をなめなくてはいけない。それでも、ライヴを通してファンの嬉しそうな顔を目にすれば、当然ながらメンバーだって楽しくなるし、明日への活力になる。それはみんなも同じだろう。
そうやって、お互いに切磋琢磨してきて今があるからこそ、この<CLIMAX“0”MioKuRi>公演も、終始、雰囲気が良かったのだと思う。新曲は「CLIMAX」を始め、他に「アビスカルマ」と「人生謳歌」が披露された。どちらも、既存曲に挟まれた中での演奏となったが、新曲とは思えないほど馴染みが良かった。「アビスカルマ」は七星(B)作曲によるもの。インストゥルメンタル曲を得意とする彼だけに、イントロから曲の持つ世界観に引き込んでいく。今までのR指定には見られなかった大人っぽいサビ部分も特徴的といえるだろう。もう一方の「人生謳歌」は宏崇(Dr)が作曲を手掛けたのだが、「CLIMAX」同様、ライヴで絶対的な人気を獲得できるに違いない。

「えー、しれっと、来週発売しますシングル「CLIMAX」の中から3曲同時披露させていただきました。どうでしたか?」とのマモ(Vo)の問い掛けに大きな拍手で返すフロア。それを見て嬉しそうな表情を浮かべながら、「今日、味方しかいないから。ここ、仲間しかいないわけですよ。(ライヴハウスの)後ろまでパンパンに詰まってくれてありがとうございます。こんなにたくさんの人に見送られるなんて幸せでございます」と言うと、楓(G)も「これから(ツアーが)始まるんやなぁと思うと、気合い入ってくるよね」と続ける。そして、「今日味方しかいないから、好き放題やっていいからな!」とマモが言い、ライヴは後半へと入っていった。
当然、暴れ曲もいくつか用意されていたが、ハコの都合上、ダイヴなどの過度な盛り上がり行為は危険と見なされるため、絶対やってはいけなかった。だが、なぜだろう。彼らがやってはいけないと言えば言うほど、逆にやってもいいという“振り”のように聞こえてしまうから面白い。Z(G)の「お前ら、やったら殺すからな!」という愛のある説教のおかげで、その後もフロアに雪崩が起きるなどのトラブルは一切なく、ライヴは順調に進んでいった。

アンコールでは「いやぁ、すごい。今日は今年1番、個人的に楽しいです。やっぱワンマンっていいよね。最近はフェス系の対バンが多かったんだけど、R指定って嫌われてるもんで、気持ち悪い気持ち悪いって言われ続けてきたけど、こんだけ気持ち良い目で見てくれるとね、やっぱ気持ち良い! 仲間って最高!(マモ)」と本音を漏らす。そのあとで何曲か演奏すると、またしても新曲が披露された。音源化は未定という「-透明-」は、時代が動くたびに怖がらずに変わり続けてきた彼らだからこそ作り出せた曲ではないだろうか。それゆえ、R指定の新たな幕開けを感じさせる。
「AREAありがとう。名残惜しいですが、いっとき東京からいなくなります。今日もらったすべてをかけて47廻ってくるんで、元気でいてください。いってきます!」と、マモが大きな声を場内に響かせると、即座に「いってらっしゃい!」という声がフロアからステージに向かって返ってきた。こうしてお見送りを無事に終え、まもなく<十周年記念47都道府県単独公演ツアー『CLIMAX47』>が本格的に始まる。

ツアーファイナルは12月29日(日)、東京・両国国技館。会場の大小に関わらず、彼らは全箇所で良いライヴを見せてくれるだろう。その上で、活動10年を迎えたR指定が出す答えとは──。それはこのツアーを通して明らかになるはずだ。

取材・文◎水谷エリ
写真◎ゆうと。

<十周年記念47都道府県単独公演ツアー
『CLIMAX47』>

9月21日(土)埼玉県:HEAVEN'S ROCK さいたま新都⼼VJ-3
9月23日(月)山梨県:甲府CONVICTION
9月27日(金)茨城県:⽔⼾ライトハウス
9月28日(土)栃木県:HEAVEN'S ROCK 宇都宮VJ-2
10月01日(火)静岡県:LiveHouse浜松窓枠
10月03日(木)和歌山県:和歌⼭GATE
10月5日(土)山口県:周南LIVE rise
10月8日(火)佐賀県:佐賀GEILS
10月9日(水)長崎県:⻑崎DRUM Be-7
10月11日(金)大分県:⼤分DRUM Be-0
10月13日(日)宮崎県:宮崎SR BOX
10月14日(月)鹿児島県:⿅児島CAPARVO HALL
10月16日(水)熊本県:熊本B.9 V1
10月17日(木)福岡県:福岡DRUM Be-1
10月19日(土)島根県:松江AZTiC canova
10月20日(日)鳥取県:⽶⼦AZTiC laughs
10月22日(火)愛媛県:松⼭サロンキティ
10月23日(水)徳島県:徳島GRIND HOUSE
10月25日(金)愛知県:名古屋E.L.L
10月29日(火)神奈川県:F.A.D YOKOHAMA
10月30日(水)群馬県:⾼崎club FLEEZ

11月01日(金)新潟県:新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
11月02日(土)長野県:⻑野CLUB JUNK BOX
11月04日(月)福井県:福井CHOP
11月05日(火)石川県:⾦沢AZ
11月06日(水)富山県:富⼭Soul Power
11月10日(日)沖縄県:沖縄桜坂セントラル
11月14日(木)宮城県:仙台Rensa
11月15日(金)岩手県:盛岡CLUB CHANGE WAVE
11月17日(日)秋田県:秋⽥Club SWINDLE
11月19日(火)北海道:札幌PENNY LANE24
11月21日(木)青森県:⻘森QUARTER
11月23日(土)山形県:⼭形ミュージック昭和Session
11月24日(日)福島県:郡⼭CLUB #9
11月27日(水)千葉県:本八幡 Route Fourteen
11月30日(土)三重県:松阪M'AXA

12月01日(日)京都府:KYOTO FANJ
12月02日(月)奈良県:奈良NEVER LAND
12月04日(水)広島県:広島セカンドクラッチ
12月05日(木)岡山県:岡⼭IMAGE
12月07日(土)高知県:⾼知X-pt.
12月08日(日)香川県:⾼松MONSTER
12月10日(火)兵庫県:神⼾VARIT.
12月11日(水)大阪府:⼤阪BIGCAT
12月13日(金)滋賀県:滋賀U☆STONE
12月14日(土)岐阜県:岐⾩club-G

TOUR FINAL
12月29日(日)東京都:両国国技館

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