三宅弘城、ともさかりえ、倉持裕に聞
く、“完璧なる執事” 鎌塚氏シリー
ズの面白さとは? 

2011年の『鎌塚氏、放り投げる』で演劇界に彗星のごとくデビューした“完璧なる執事”、鎌塚アカシ。その後、2012年『鎌塚氏、すくい上げる』、2014年『鎌塚氏、振り下ろす』、2017年『鎌塚氏、腹におさめる』と、いまやすっかりシリーズ化され、さまざまな主人に仕えながら活躍を続けてきた鎌塚氏を演じているのは三宅弘城だ。ナイロン100℃の旗揚げメンバーにして、グループ魂では“石鹸”名義でドラムを叩き、劇団☆新感線の舞台では“準劇団員”として類まれなる身体能力を発揮、NHK Eテレ『みいつけた!』では体操のお兄さんとして登場、NHK大河ドラマ『いだてん』では黒坂辛作役で主人公のために足袋でランニングシューズを作り、昨年の舞台『ロミオとジュリエット』では50歳にしてロミオを演じるという、まさに八面六臂の活躍ぶりを見せてきた三宅。そんな彼の個性を活かす“あて書き”で鎌塚氏というキャラクターを誕生させた、作・演出を手掛ける倉持裕、鎌塚氏のパートナー的存在のメイド・上見ケシキ役で今シリーズにはこれが3度目の出演となるともさかりえ、そしてもちろん三宅に、今シリーズの魅力や2019年11月より上演される、最新作『鎌塚氏、舞い散る』に関するヒントなどを大いに語ってもらった。
ーー鎌塚氏シリーズも今回で第5弾です。今のお気持ちは?
三宅:単純に待ち遠しくて仕方がないです。個人的には僕、舞台に出るのが去年の『ロミオとジュリエット』以来なもので。
ともさか:そうでしたっけ。
三宅:そう。だから、ほぼ1年ぶりなんです。
倉持:それは、久しぶりだね。
三宅:だからもう、早く稽古したくて仕方ないですよ。
ーーともさかさんが鎌塚氏シリーズへ参加されるのは、5年ぶりですね。
ともさか:5年? 5年も経つんですか?
三宅:『鎌塚氏、振り下ろす』から、もう5年も経つんだ?
倉持:2014年か。そんなに経ったんだね。
ともさか:うわ、ちょっと数字で聞くとビックリ。
三宅:年取ったせいか、ついこの間みたいな感じがしちゃうよ(笑)。
ともさか:本当ですよね。私は、この鎌塚氏シリーズに出させていただくのは3作品目になるんですが。自分が出ていない回を見ると、毎回非常に悔しい気持ちになるんです(笑)。自分でもすごく愛着のある作品なので。そして私は個人的には、とにかくこの『鎌塚氏~』に出ることを目標にここ1年がんばってきたようなところもあるので、今回はご褒美みたいな感覚もありますね。
ーー倉持さんは現在、脚本執筆中ですか?(取材は8月下旬)
倉持:そろそろ書き始めるところなので、僕も楽しみですよ、本当に(笑)。だけどこれだけ長くやっているとだんだん、アカシやケシキが実体化してくるというかね。また今回も、彼らに会えるんだなあという気持ちになるんです。架空の、しかも自分が書いた登場人物に対してそんな気持ちになるのは、この芝居だけですね。
(左から)倉持裕、三宅弘城、ともさかりえ
ーーこのシリーズでは毎回、三宅さんが何かに“チャレンジ”するシーンがありますが。
倉持:今回の肉体的なチャレンジとしては、スキーをやってもらいたいなと思っています。
三宅:ハハハ、スキーですか!
ともさか:雪山ですからね(笑)。
倉持:雪崩が起きて、誰かを救いに行くみたいなことで、スキー板を履いて。
ともさか:OO7みたい!
倉持:舞台上でスキーをどう表現するかは、まだ考え中ですけど。それから精神的な面では、ケシキとのドラマですかね。つかず離れずとやってきたアカシとケシキの関係が今回、ある決着をみることになるので。この二人の間の感情の振り幅という意味では今までで一番大きくなるはずなので、そこをがんばって書くつもりです。
ーー今回は、初めて冬の時期に上演するということですが。 
倉持:今まではほぼ、夏の時期に上演していたので。初めてだから楽しみですよ、雪山の設定ならスキーも使えるし、雪も降らすだろうし、風情もいいんじゃないですかね。これまでもずっと大きいお屋敷の閉鎖的な空間を舞台にしてきましたが、この設定でより説得力が出てくるというか。雪が降っているから自然と外には出られないということにもなりますからね。
三宅:お屋敷って暖炉があったりするから、冬という季節が似合いますしね。
ともさか:ね! 本当にそう。
三宅:そんなこともあって、僕もこのシリーズは冬の設定でもやってみたいなと思っていたんです。
ーーアカシとケシキ、二人の関係が進むというのも楽しみです。
倉持:それに関しては、プロデューサーのリクエストもあったんです。「そろそろ、あの二人を進展させたい」と。僕は、つかず離れずでこのままダラダラいってもいいかなとも思っていたんですが、でも言われてみればそれもそうかなと思ったので、ここである決着をつけさせてみようかと。でも上見ケシキというキャラクターを退場させたくはないので、どんな結果になろうともなんだかんだ理由をつけて今後も出てくるとは思います。ケシキはどうするの、どうするのとアカシの尻を叩いて追い詰めてきたはずなので、いよいよ逃げられなくなってきたということなんですかね。
三宅:なんだかもう、想像は出来るんですけどね。ケシキさんがスーパールーキーの小柳友くん演じる佐双ヨウセイのほうに気持ちが行きかけて、それを見るとつい手が震えてしまうんだけど、でも平静を装っている鎌塚アカシの姿が目に見えるようです(笑)。アカシなりに、どう決着をつけるんだろう。堅物のプライドでポーカーフェイスを装いながら、でも内心ドキドキしながら。まあ、倉持さんの頭の中にあることなので、まだどうなるかわからないですけど。
ーーアカシとしては、やはりケシキさんといつか一緒になりたいと思っていたんでしょうか。
三宅:それはそうだと思いますよ。でもなんだかんだと理由を付けて、結局どうしたらいいのかはわからないんだと思う、たぶん。女性とお付き合いした経験も少ないだろうし。だから「いや、私には仕事がありますので」って言って、逃げているんですよ。それで失いかけた時に、きっと初めてわかるんでしょうね……。
ーーなんだか、三宅さんのお友達の話を聞いているみたいです(笑)。そんなアカシさんのことを、ケシキさんは全部わかっているんでしょうね。
ともさか:そういう煮え切らないアカシさんの態度も含めて、ケシキは愛おしく思っているんだろうけれど……「とは言ってもね?!」ってことですよ。「わたくしもいい年齢ですし」って、ね。前回の『鎌塚氏~』を観に行った時、プロデューサーから「次はロマンチックなのをやりたい」って言われて、ああ、そうなんだぁって思いつつ、私も倉持さんがおっしゃっていたみたいに、この二人はずっと煮え切らないまま、くっつくようでずっとくっつかないままで行くのかなと思っているところがあったので。今回はそれが何かしらの形で決着がつくという話を聞いて、二人が一体どういう関係におさまるのか楽しみなんですが……いや、それよりも私は去年、三宅さんが出ていらした『ロミジュリ』を観て、三宅さんのキスシーンにひどく腹を立てているんですよ。
(左から)倉持裕、三宅弘城、ともさかりえ
三宅:ハッハハハ!
ともさか:私だってというか、ケシキだってまだアカシさんにキスしてないのに! って、今までに感じたことのない感情が湧き上がってきて。全然違う作品の役柄なのに(笑)。たまたま倉持さんと同じ日に『ロミジュリ』を観ていたことと、それに『ロミジュリ』も貴族のお話だから、ちょっと鎌塚氏を連想してしまって、なんだかすごく許せなくなっちゃったんです。ですから「今回の『鎌塚氏』ではなんとしても三宅さんとキスがしたい!」というのが、私だけのひそやかな野望です(笑)。本当に倉持さんがそんなシーンを書いてくれるのかは、まったくわかりませんが。
倉持:いや、それ、すごくいいなと思いましたよ。ともさかさんの、あの話のテンションを受けて僕も鎌塚の世界でキスシーンがあってもいいなあと思うようになったので。
ともさか:そう、あの時はすごく怒ってましたからね。楽屋で「許せない!」って(笑)。お芝居を観ながら、キスの回数を数えたりもしていましたし。「何回キスするのよ……しすぎじゃない?」って。
三宅:アハハハハ!! これ、女優さんが言っているから許されるけど、逆の立場では言えませんよね。
ともさか:女優が言っているのも、どうなんだろうと思いますけど(笑)。
ーーでは、果たしてどんなキスシーンになるかは見どころですね。
倉持:いいですね、そこは売りにしていいんじゃないですか。何回もするかもしれないし。
ともさか:こうなったら『ロミジュリ』越えを目指しましょう(笑)。
ーー笑えるキスシーンにはなりそうですね。
倉持:両方、描いたほうがいいでしょうね。何回かのキスの中でも笑える瞬間と、切ない瞬間と。
ーーそれにしても珍しい作品ですよね、8年という期間に第5弾まで手を変え品を変え、メンバーも入れ替わりつつ、お馴染みのキャラクターもしっかりいて。出る側としては、このシリーズのどんなところがお客様に響いたのだと思われますか。
三宅:やっぱり、間口が広いところでしょうか。老若男女みなさんが楽しめる作品ですし。あと舞台装置が、盆(回り舞台)を駆使してスピーディーに展開するところ。そしてシリーズを観たことがある人はもちろん、もし観ていなくてもしっかり楽しめるところ。舞台を観慣れない方でも演劇をイヤにならず、好きになれる作品だとも思います。それでいて玄人の方にもすごく受け入れてもらっているし。あと、これは倉持さんの作と演出だからだと思いますが、ちょっと恥ずかしくなりがちな展開が、微妙なラインで素敵にとても可愛らしい作品になっているところ。そこはやっぱり、センスですよね。衣裳さん、照明さん、音響さん、美術さん、スタッフみんなの力だとも思います。まさにピンポイントで絶妙にうまくハマっているというか。だからこそ「出たい」と言ってくる人も、いっぱいいますし。
ーーやっぱり同業者からも声がかかりますか、「出してよ」って?
三宅:よく、かかりますね。前回出てくれた二階堂ふみちゃんなんて、プロデューサーに直訴していたくらいでしたから。
(左から)倉持裕、三宅弘城、ともさかりえ
ーーそうでしたね。ともさかさんは、このシリーズのどこに魅力を感じますか?
ともさか:第1弾の『~放り投げる』の上演は、2011年の震災直後のタイミングだったんですね。あの時期にこの公演をやれたということが、ものすごく記憶に残っていて。演劇なんてやってていいのかな……という雰囲気がある中でこの作品が上演できたことは、自分の中にもすごくパワーとして残りました。三宅さんが言っていた通り、『鎌塚氏~』にしかない力ってあると思うんですよ。そうじゃなかったらここまで続かないと思いますし。私は毎公演出ているわけではないですが、でもこうしてひとつのキャラクターが全体を通じてつながって出て来られることもすごくうれしい。みんながそれぞれに『鎌塚氏~』のことを大切に思っているということが感じられる、とても幸せなシリーズだなと思います。
ーー倉持さんはこのシリーズを書く時、特にどんなことに気を遣っていますか。
倉持:コメディ作品だと一応言っていますから、やはり笑いには一番気を遣いますね。絶対笑わせていかなきゃな、と。でも第2弾、第3弾あたりまでは1ページに1回は絶対ギャグを入れなきゃ、みたいな枷があったんですが、第4弾では無理にギャグを入れたりせず、もうちょっと気楽にやれていた気がします。だけど笑いというものは、ともすると下品な方向にいっちゃったりもするから、その点は守りたい、品は保っていきたいと思っているんですけど。こうやればたぶん笑いは来るだろうけど、でも大事なものを失ってしまうみたいな罠が、笑いにはいっぱいありますからね。そこに加えて“可愛らしさ”というものも押さえておいたほうがいいかなと意識しているんですが、それも笑いと一緒で匙加減が本当に難しいんです。「可愛いでしょ?」ってやっても「うわ、こいつ可愛いって思われたいんだー」って思った瞬間には憎らしく見えちゃうだろうし(笑)。
ーー難しいですね(笑)。
倉持:しかもこのシリーズってだいたい、おじさん、おばさんが多く出ているんで(笑)。というのも笑いを演じるのって技術がいるから、ある程度のキャリアを積んだ役者じゃないとできないので、自然とそうなってしまうんですけどね。となると、ますます中年を可愛く見せなきゃいけなくなるという(笑)。
ーーワザが必要になってきますね。
倉持:いいトシして純愛なんて? って、思われちゃってもいけないから。なぜそこで純愛を貫いているのかという、説得力を持たせなきゃいけないし。だけど、そこで共感は得られているようにも思いますけどね。世の中年というか大人たちも、じゃあ大人の恋愛ができているのかというと、そうでもなかったりするので。いつまでたっても大人になりきれず、いつまでも子供っぽかったりする部分はいまだにあるわけですよ。そんなところが、人間らしいな、いとおしいなと思えるように作れていれば、お客さんも喜んでくれるんじゃないですかね。
ーーお馴染みのレギュラーメンバーも3人、登場します。
倉持:その中でも本当のレギュラーは、玉置孝匡さん演じる宇佐スミキチなんですけどね。スミキチはシリーズ全作品に出ていますから。ただ、なんかだんだんいい人になってきているから、ここでもう一度ゲスな人に戻そうかと。
三宅:ああ、それはいいですねえ(笑)。
ともさか:そうですよ、昔は相当ヒドい人でしたよ。第1弾の時は私の婚約者だったんですから、元カレになるんですけど(笑)。
倉持:そう、当初はムチャクチャだった。
(左から)倉持裕、三宅弘城、ともさかりえ
ーーそれが、だんだん常識人になってきた?
倉持:アカシをサポートしたり、叱咤激励したり。
三宅:そんな人じゃなかったのに。
ともさか:おまえに言われたくないって、みんな思っていますよ(笑)。
倉持:では、スミキチは原点回帰する方向で(笑)。それから、片桐仁さん、広岡由里子さん演じる堂田男爵夫妻も今回は出てきます。
ともさか:私、お二人とは毎回一緒に出ています。
倉持:この人たちに関しては毎回変わらないです。パターンです、これは。いつも悪役として出て来て、改心して帰っていくというね(笑)。
ーーせっかくですから、新しく参加される面々についてもお伺いしたいのですが。アカシが仕える北三条伯爵家の女主人マヤコ役は、大空ゆうひさんです。
三宅:大空さんには、心おきなく無理難題を私に言いつけていただきたいです。アカシも女主人に仕えるのは初めてですし。
ともさか:そうですよね。
倉持:ご主人が女性になるのは今回が初めてです。
ーー堂田男爵家に雇われている若い執事を演じるのは、小柳友さんです。
三宅:友くんはヴィジュアル撮影の時、ものすごくカッコよかったんですよ。身長があって、ビシッとしていて。
ともさか:イタリア人みたいでしたよ。
三宅:そうなんだよ、かっこよかったー。
ともさか:三宅さんと並んだ時の、あの不思議なギャップも素敵(笑)。
三宅:絶対、こっちが見上げると、友くんに見下ろされて、指差してなんか文句言うようなシーンがありそうですよね。
ーーそういうヴィジュアルが目に浮かびます。それから北三条家若い女中の円子ミア役の岡本あずささん。
三宅:僕、共演させていただくのはこれが初めてなんです。
ともさか:月刊執事のグラビアとかやっていそうじゃない?
三宅:ああ~、なるほどね! やりそうだな!!
倉持:それでケシキは嫉妬するというか。
ともさか:たぶんそう書かれるんだろうなって、予想していました(笑)。
倉持:女中が定時に上がったりする、働き方改革みたいなことになるのかも(笑)。
三宅:こういう、今までにない現代っ子っぽい執事と女中が現れるというのも、とても面白いことになりそうですよね!
(左から)倉持裕、三宅弘城、ともさかりえ
■ともさかりえ 衣装クレジット
イヤリング bae bae(ディプトリクス)
問い合わせ先 03-5464-8736
スタイリスト:チヨ(コラソン)<三宅>、清水けい子(SIGNO)<ともさか>
ヘアメイク:北一騎(Permanent)<ともさか>
取材・文=田中里津子 撮影=池上夢貢

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