【インタビュー】フラチナリズム・モ
リナオフミに「最近どう?」って聞い
てみた

フラチナリズムのボーカル&エンターテイナー、モリナオフミによるBARKSでのコラム連載が2周年を迎えた。今回のソロインタビューはこれを記念した連載特別編だ。

“売れてないバンド界イチ売れてるバンド”というキャッチコピーを掲げ、優れた歌唱力、ド派手なパフォーマンス、マシンガンのようなトークを武器に、人々をあっという間に虜にするモリだが、2019年に入り、ついに売れるための活路を見いだしたという。これまでの活動を振り返ったうえで、目標とする日本武道館でのワンマンライブへ向けた今後の動き、音楽との向き合い方について話を聞いた。

※解禁前の情報が含まれているため、本文内の一部を伏せております。予めご了承ください。

  ◆  ◆  ◆

──フラチナリズムさんとご一緒した、一番最初の企画は2017年5月。ファンクラブの方が発起人となり、八王子(バンドの拠点)で行なわれていたアルバムヒット祈願キャンペーンを取材しに行くという内容でした(
)。

モリ:いろんなとこまわって飯食いに行ったやつね。街とのつながりを感じられる企画になりましたよね。

──街ぐるみで応援されていて本当に驚きました。愛されてるなあって。
▲中国料理 龍皇[ロンファン] にて
▲中華そば 松葉 にて
▲ホンダカーズ 八王子東大和田店 にて

モリ:今八王子では、街の人と絡んで流しをやったり路上ライブをやったりして、大きいホールを目指すっていう流れが若手アーティストにできているんです。「フラチナリズムはそのモデルケースになってるんだよ」ってスポンサーの方々に言われて、ああそうなんだって。若い子らも真似してやってくれているというか、そういう流れになってきてるみたいです。

──先駆者ですね。

モリ:俺らにはそれしかなかったからね。ライブハウスでライブをやってフェスに出て売れていくっていうのがバンドの主流になっていますけど、音楽大好き層とかフェス層じゃなくて、一般層に届けさせるために街と絡んでいくっていう。こないだも俺らの後輩のアーティストが、八王子にある800人キャパのホールが埋まって大成功してました。

──都心に比べるとお祭りやイベントが多い街ですよね。一般層へ届けるにはもってこいの環境だなと。

モリ:そうですね、本当に多いです。ユーロードっていうメインストリートがあるんですけど、週に1回は必ず何かしらのイベントをやってます。俺らもタイミングが合うときは呼んでいただいていて。そこらへんは八王子って恵まれてるんですよね。

──なぜそんなに多いんでしょうか。

モリ: 80万人ぐらい集まって、山車もたくさん出る<八王子まつり>っていう、年に一度のでっかいお祭りが8月にあるんですよ。八王子にはいろいろやりたいタイプの人が多いんです。商工会、商店会、自治体、青年会議所とか、そのへんもみんなやりたがり。「俺たちも<八王子まつり>みたいな祭を作りたいぜ」っていう思いがある人が集まっているので、イベントごとが多いんだと思いますね。

──お祭りと言えばなんですが、ヒット祈願キャンペーンの取材のときに、「中華そば 松葉」のご主人・松葉さんがフラチナリズムさんのライブを観に行ったことが無いっておっしゃっていたんです。それから3ヶ月後、<第38回 北野台夏祭り大会>でのライブ取材(2回目の企画)に行ったときに偶然お会いして。

モリ:360°カメラを使って撮影したライブのときだ(
)。
──ご挨拶したら「今日が初めてのフラチナリズムのライブなんです」って。それを聞いてすごく嬉しくなりました。

モリ:観れたんだ、松葉の大将。観たことないって言ってましたもんね。プライベートとか飯食いに行ったりはあるんですけど、ライブを観たこともないのに応援してくれてるってわけわかんないですよね(笑)。ありがたいことです。
──そして、3回目の企画が2018年3月。ゲストをたくさん呼んで、24時間生配信に挑戦した、『フラチナリズム 売れフェス番外編 マンションフェス supported by MUSISION』(
)。

モリ:もう二度と思い出したくない(笑)。スタッフが大変でしたよね、地獄みたいだった(笑)。俺らは喋ってたりとか、ワーワー言うてたりとか、なにかしらやってたからまだよかったけど、それを必死にカメラで追いかけて、スイッチングもして本当に大変だったでしょ。エコノミー症候群で死ぬんちゃうかなって思った(笑)。でも感動しましたね。最後歌ってるとき、なんも声とか出ーへんけど、なんかやっぱ俺らっぽいなって思ったし。
──フラチナリズムさんだからこそできた企画でした。

モリ:ほかのアーティストではああいう感じにはならなかったんじゃないかなって思います。ミュージションも含め、BARKSも含め、フラチナリズムも含めすごいチーム感があった。規模めっちゃちっちゃいけど本当の24時間テレビみたいな感じになって、なんかあの感じがすごい良かったですね。終わったあと電車で帰ったんですけど、ほとんど意識無くて、乗換駅で完全に死んでたから。あの24時間で1番喋ったの俺やと思う。日本中で。

──間違いないです。

モリ:3日間でオファーして、来てくれた40組のゲストをイジってまわして歌ってもらったこと、あの経験はすごくタメになりました。仕事でMCもやらせてもらってますが、あれから変わってきたって感じがあります。二度とやりたくないですけど。
──どんなお願いをしてもちゃんと応えてくださるので、いつも感謝しています。それでですね、今日は「最近どうですか?」って聞きたくて。

モリ:2018年は「売れてないアーティスト界から売れてるアーティスト界へ行こうぜ、みんな!」のリーダーになるっていうテーマで、<売れフェス>(※自主企画の対バンイベント)をメインに活動してきたんですが、そのなかで気づいたことがあったんです。

──それは?

モリ:2019年に入ってから、今年はどういうふうに、来年はどういうふうに動いていこうか、実際に武道館にはいつ行くんだっていうのをみんなでしっかり話したとき、「俺たちの答えはライブハウスには無い」という結論にたどり着いたんです。というのは、俺らのファンに多いのは一般層なんですよ。音楽好きでもなければフェス好きでもない。俺たちはライブハウスが大好きだから、ずっと八王子Match Voxをホームにやってきたんですが、世間はそこに本当に行きたいのかどうかっていうところまで考えきれていなくて。
──なるほど。

モリ:年明けに、俗に言う売れてるバンドのボーカルと飲んだんです。単独で武道館を埋められるアーティストだし、ソロでやってもすげえみたいなやつだから話聞いてみようと思って、「俺らどうしたらええかな」って相談したら、「本当にお客さんのことを考えられているのかどうか」っていうことをすごく言われました。例えば、俺らは2000人キャパのライブハウスでやったことがあるけど、そんな俺らが八王子のちっちゃいライブハウスでライブをしたらお客さんがどう思うか考えたことある?って。ちっちゃい会場が悪いって言いたいんじゃないんですよ。2000人キャパの会場でド派手な演出を観たあと、200人キャパの会場で最低限の演出のライブを観たらどう感じる?って。

──あれ?ってなりますよね。

モリ:そう、「これぐらいのアーティストだったんだ」って、お客さんの気持ちが離れていっちゃう。それを言われたときに、自分たちが楽しいこと、おもしろいことをやるのはいいけど、それを商売としてやっていきたいって思っているんであれば、極限まで客観的に考えて楽しいことをやった方がいいっていうところに行き着きました。なので、◯◯◯を◯◯◯◯◯◯◯ます。

──なんと。

モリ:マジで武道館に行くために、やっていかなきゃいけないことをやっていく。お客さんから「フラチナリズムすげえな」って思われるようなこと、無茶してでも派手なことをやってる方が盛り上がるからね。俺ら◯◯◯◯が◯◯◯◯◯◯。それで◯◯◯からは◯◯◯。
──すごい。楽しくなりそうです。

モリ:あとね、2019年はタイアップの数がやばいんですよ。「なんで今さら? おっそ! デビュー時にこいや」っていう。フラチナリズムとスタッフと、みんなで蒔いていた種の芽がやっと出てきました。

──どんなタイアップが決まったんですか?

モリ:◯◯◯の◯◯◯。

──あはは!(笑)

モリ:あとは◯◯◯◯、◯◯◯とか。

──バラエティ豊かすぎます。

モリ:活動としては◯◯◯から◯◯◯◯◯があって、武道館っていう流れを目指しています。そのために◯◯◯をやっていくのが今年と来年ですね。俺たちが今までやってきたことをないがしろにはしたくないから、それも絡めてうまくやっていきたい。

──今話してくださった内容って解禁前ですよね?

モリ:そうっすね。いっこも使えないっすね(笑)。文字にモザイクかけておいてください。
──そもそもの話なんですが、いつから人前で歌っているんですか?

モリ:15歳ですね。高校生のときに友達に誘われてバンドを始めて、300人キャパの高知のキャラバンサライっていうハコで。ハードコアバンドのボーカルでした。FISTっていうバンド名。こぶし……だっさ(笑)。

──初めて曲を作ったのは?

モリ:詞を初めて書いたのは小学校5年生のときです。

──きっかけは?

モリ:小2のときにB’zを聴いて歌を歌い始めたんですけど、そっから稲葉さんの書いた歌詞をノートに書き写すっていうのが俺の趣味になったんですよ。書いてるうちに自分でも書けるんじゃないかなって思って、小5のときに歌詞ノートみたいなやつを買って書き始めましたね。

──曲にはなったんですか?

モリ:中学校2年生とか3年生くらいかな。「森へ行こう」っていう曲で、アコースティックギターで作りました。
──このインタビューにあたって、いろいろ調べていたらフラチナリズムの前身バンド・マニフォルシェイク(のちのマニシェ)のライブを観ていた方のブログを発見したんです。10年前ぐらいのもので、「ボーカルは日によってかっこよかったり気持ち悪かったりする」って書いてあって笑いました。

モリ:ははは!(笑)それは今も一緒っすね。そのとおりだと思います。日によってかっこよかったりそうじゃなかったりで。

──先日、ライブを拝見したとき、すごくクールに1曲目の「いきなりステキ」が始まって、イケメン俳優ばりの表情をしていたので「モリさんがカッコいい……どういうこと?」って驚いたんです。雰囲気が全然違った。そのあとにいつものモリさんに戻ってましたけど。

モリ:自分って一体何者なのかが、まったく理解できていなくて。こないだ大衆演劇やったんですが、女形をやったら俺もう女なんですよ。あとから映像で見たら「こいつ誰! しなやかー!」ってビビって。今から歌う曲とか、髪型ひとつでキャラクターが変わる。多分、完全憑依型なんですよね。「いきなりステキ」のときも意識的にやっていたんじゃなくて、曲がそうだからそうなっちゃってたんだと思うんです。いいことか悪いことかわかんないんですけど、ある意味、自分というものが無いんですね。アルバムを作るときもそうですけど、この曲に一番合う歌い方をしようって心がけてるんで、「モリナオフミじゃなくてもいいな」って同時に思ってます。

──だからモノマネもお上手なんですね。

モリ:そうだと思います。入り込んじゃうんですよね。
──改めて、フラチナリズムにとっての「売れる」の定義を教えてください。

モリ:やっぱり「認知されること」。CDが売れるとか、ライブに人がいっぱいいるとかじゃなくて、たくさんの人が知ってくれているっていうのが俺にとっての「売れる」だなって。もちろんセールスとか動員は大事ですけどね。

──ちなみに、2017年9月のコラムでは「日本国民の半分がフラチナリズムを知っていること」って書いていました。

モリ:「日本で一番有名な芸能人は誰だ」っていう企画を以前テレビで見たんですけど、一番はタモリさんで、98%くらいは知ってるんですよ。バンドで50%知られてたら相当ですよね。全年齢が知ってくれている、「あの兄ちゃん達でしょ」っていう存在になることがフラチナリズムにとっての売れるってことだと思いますね。

──武道館でのワンマンライブを観せてもらえるまでは死ねないので、よろしくお願いします。

モリ:ほんとだよ、全員でボロ泣きしよう。24時間テレビみたいに、静岡辺りからメンバーの誰か走らせよう。ライブに全然間に合わへんってやつやるわ(笑)。あと、武道館でやるなら、<売れフェス>で一緒にがんばったやつらも全員バックコーラスで入れて「武道館立てたな!」って言いたい。

──期待して待ってます。

モリ:最近、周りのアーティストがバタバタ辞めていくんです。一週間に1回、二週間に1回、「モリさん、話したいことがあるんで飲みに行きましょう」って連絡が来て、大体が解散、活休、卒業。そんななかで、こいつらがおらんかったら俺はバンドを辞めてたっていう存在でもある大切なバンドが8月で解散するんですよ。解散の発表ツイートのリツイート数を見てたら、彼らが今までに出したツイートのなによりも、メジャーデビューの発表のときよりもリツイート数が多い。日本って生まれてくる瞬間より死ぬ瞬間の方が伸びる文化なんや、死ぬことがひとつのエンターテインメントになるんやなって思ったけど、俺はそれが好きじゃなくて。生まれるものを喜びたいんです。

──たしかに解散、活休、卒業はニュースで取り扱いがちですね……。

モリ:最近甥っ子が生まれたんですけど、めっちゃかわいいんです。生後2週間くらいのときに会いに行って初めて抱っこした瞬間、このために生きてた気がするって思った。Instagramに甥っ子の写真をあげたらイイネ数が今年一番で、生への感謝ってやっぱりあるなって感じましたね。ミュージシャンにとって曲は子どもみたいなものですから、それもみんなで同じように喜べたらもっとハッピーになるし、音楽業界もハッピーになれると思うので、そういうことも発信していきたいです。そして、「辞めたやつら全員見とけ、俺は死ぬまで辞めんぞ」って見せつけたい。売れずに辞めていったアーティストたちも、「フラチナリズムはがんばれ」って言ってくれてるやつらばっかりなんで、そいつらにも武道館観せてやりたいし、BARKSにも観せてやりたい。絶対行きますよ、約束します。
取材・文◎高橋ひとみ(BARKS)

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