©2017 『おじいちゃん、死んじゃったって。』製作委員会
1.『おじいちゃん、死んじゃったって。』
あぜ道に広がる緑と、すかん、と抜ける青。
空に映りそうなくらい鮮やかな、生きている景色たち。
とある夏の地方都市で、とある家族のおじいちゃんが死んだ。
孫は、セックスしていた。中断して、二階から、父に声をかける
ー 『おじいちゃん、死んじゃったって。』
それぞれの事情を抱えて、それぞれの日常を生きている家族たち。
おじいちゃんの死を悼むために集まったのに、なんでそうなるかなあ?
集まれば集まるほど、腹立たしくて、煩わしくて、やっぱり可笑しい家族の物語。
どうしてか家族って、シリアスなシチュエーションでこそ、とんでもなくコミカルなことが起こったりする。
そして同時に、家族の誰かから吐いて出た一言に、そこにいる誰もが胸を締め付けられた時、ああ私たち、家族なんだなと、やけに素直に思ったりする。
自分の実家でもあったことや、あり得ること。
回想したり、追体験しながらスクリーンの11人を観ていた。
家族にしか、できないこと。家族だからこそ、できないこと。
家族って、そういうものなんだ。ややこしいけれど。
だけど、なんだかんだで有り難く、愛おしいものなのだ、ということに帰結していく物語の流れが、とても優しい。
それは、何でも言えるわけじゃないけど、何を言っても結局どこかでつながっていられる家族というものへの安心感そのもののような気がした。
「関係なくないと思うよ」この映画で、私が一番好きなセリフだ。
そう、どれだけそう振る舞おうとしたって、家族って、関係なくない。
死を前にすると、生きていることが急に生々しく浮き彫りになる。
そして、時に誰かの不在は存在よりも、その人の輪郭を色濃く強める。
そんな風に、生と死はいつも交錯していて、
生きているのなら、生きていくしかない。多分、家族と家族の隙間で。
▼あらすじ
彼氏とのセックスの浅中に祖父の訃報の電話を受けた春野吉子。そのことにぼんやりとした罪悪感を抱きながらもあわただしく進んでいく葬儀の準備。久しぶりに集まった家族たちもなんだか悲しそうじゃない。
失業を秘密にする父・清二、喪主を務める叔父・昭男、
その元妻・ふみ江とひきこもりの従兄、高校生の娘・千春。地元を離れた独身の叔母・薫、東京の大学に通う吉子の弟・清太も駆けつけ、祖母は家族の顔もわからないほどボケている。葬儀が進むにつれ、それぞれのやっかいな事情が表面化し、親たちの兄弟ゲンカがはじまると、みっともないほどの本音をぶつけ合いはじめる家族たちに、呆れながらも流れに身を任せていた吉子はーー。
▼Information
『おじいちゃん、死んじゃったって。』
テアトル新宿(東京)、テアトル梅田(大阪)、Denkikan(熊本)ほか全国公開中
監督:森ガキ侑大
原作・脚本:山崎佐保子
出演:岸井ゆきの、岩松了、美保純、岡山天音、水野美紀、光石研ほか
 
©2017映画「オトトキ」製作委員会
2.『オトトキ』
さようなら、きっと好きだった。
そう最後に残して去っていったTHE YELLOW MONKEYが帰ってきた。
同じ歌の、「卒業おめでとう」という一節とともに薄幕が落ちて、眩いスポットライトの中、確かに、確かに、4人の姿が輪郭を持ったあの時、「ああ15年生きていてよかった」と思った人間が、一体何人いただろうか。
その誰もが、かつてを卒業して、今を生きていた。2016年5月11日。
ああ、そこにいる。今そこにまた、THE YELLOW MONKEYが存在している。
プライマル。から、楽園に誘われていく最中、私たちは発熱の心を抱きしめながら、何よりも、“ここでこうしてることの奇跡”を噛み締めた。
何よりもここでこうしてることが奇跡と思うんだ
命はいつか絶えるだろう だけど最高の出会いが
月日は流れて 力を集めて ひとつに集めて
「ALRIGHT」
映画『オトトキ』は、15年ぶりに再集結・再始動したTHE YELLOW MONKEYの復活劇。この怒涛の1年を追った、ドキュメンタリーだ。
私たちが燃えるような心で焦がれた舞台の裏に、別れがあり、痛みがあり、絆があり、愛があって。そして、それら全てが音楽で物語られていることを、ただただ目の当たりにするのだった。
—4Pしようぜ。
THE YELLOW MONKEYがどれほど素敵なバンドで音楽かなんて、誰がどこで語るまでもないから、もうファンレターだと思って書いている。
再集結してくれて、本当にありがとう!
かっこよくて、色っぽくて、愛おしくて、切なくて、嬉しくて、まぶしくて。
一瞬も見逃せない、ロックンロールプレイ。
▼Information
『オトトキ』
絶賛公開中
出演:THE YELLOW MONKEY / 吉井和哉 菊地英昭 廣瀬洋一 菊地英二 
監督:松永大司
 
© 2016 SATORI FILMS, LE SOLEIL FILMS Y LE PACTE
©Pascale Montandon-Jodorowsky
3.『エンドレス・ポエトリー』
この映画は、われわれを取り巻く世界に潜むマジック・リアリズムを探求します。観た人が真の自分を発見する手がかりになる、まさに“生きること”への招待ともいうべき作品です。──アレハンドロ・ホドロフスキー監督
チリで育った自身の少年時代をモチーフにした幻想的な前作『リアリティのダンス』から3年。88歳のホドロフスキー監督が観る者すべてに贈る、その言葉通り、“真なる生”への招待状。魂の自叙伝が、再び始動する。
—青年となったアレハンドロは、自分への自信のなさと抑圧的な両親との葛藤に悩み、この環境から脱し何とか自分の道を表現したいともがいていた。
父親からの抑圧やいじめ、そんな苦悩と戦いながら少年が生きる日々を映し出した前作を経ての今作、そんな一筋縄ではいかない、自己の“解放”と“確立”へと物語は進む。
父との軋轢、葛藤、恋と友情、何ものにも縛られない若き芸術家たち。
それら全てがあらゆる形で昇華する時、囚われていた檻から解放され、アレハンドロの詩人としての自己は確立される。
現実と空想とが交錯した、どこを切り取っても超芸術的な描写や、そうでありながらも深いところで調和する、圧倒的な世界観。
この映画は、「生きること」を全肯定する。苦しみも悲しみも切なさも愛しさも嬉しさも。全感情を肯定する青春映画の傑作であり、すべての人に捧ぐ魂の叙情詩だ。
エンドレス・ポエトリー。そう、人生はいたって、詩的だ。
▼あらすじ
物語は、ホドロフスキー一家が故郷トコピージャから首都サンティアゴへ移住するところから始まる。ある日、アレハンドロは従兄リカルドに連れられて、芸術家姉妹の家を訪れる。そこでは、古い規則や制約に縛られない、ダンサーや彫刻家、画家、詩人など若きアーティストたちが共に暮らしていた。彼らと接していく中でアレハンドロは、それまで自分が囚われていた檻から、ついに解放される。エンリケ・リンやニカノール・パラといった、後に世界的な詩人となる人物たちとの出会いや、初めて恋に落ちたステジャ・ディアスとの邂逅によって、アレハンドロの詩的運命は、新たな世界へと紐解かれていく。
▼Information
『エンドレス・ポエトリー』
2017年11月18日(土)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク渋谷ほか全国順次公開
監督・脚本:アレハンドロ・ホドロフスキー
出演:アダン・ホドロフスキー、パメラ・フローレス、ブロンティス・ホドロフスキー、レアンドロ・ターブ、イェレミアス・ハースコヴィッツ
 
 
©2017「火花」製作委員会
4.『火花』
原作は、言わずと知れたお笑いコンビ・ピースの又吉直樹の初純文学作品で、第153回芥川賞受賞作「火花」。
初出の雑誌「文學界」が驚異的な売り上げを記録したことが記憶に新しい。
漫才の世界に「夢」を持って身を投じるも、結果を出せず底辺でくすぶっている青年【徳永】と、強い信念を持った先輩芸人【神谷】が出会い、「現実」の壁に阻まれ、「才能」と葛藤しながら歩み続ける青春物語だ。
Netflixでのドラマ化を皮切りに、NHKでの連続ドラマなど、ますます注目を集めている本作。満を持しての映画化のメガホンを取るのは、又吉の大先輩でもある板尾創路。又吉が創造した<芸人>の世界を、その観察眼で映像化できるのは、同じ芸人であり、又吉からの信頼も厚い板尾監督しかいない。そんな声に本人が快諾し、まさに、芸人の、芸人による作品が、新たな形で生まれたのだ。
【徳永】を演じるのは、若手随一の演技派・菅田将暉、先輩芸人【神谷】を演じるのは、個性派俳優・桐谷健太。「火花」という唯一無二の青春を映像にするにあたって、こんなにもスペシャルな揃い踏みはないんじゃないだろうか。
夢と現実の狭間で葛藤する主人公と、奇妙で愛おしい先輩、そして、その芸人の師弟関係の在り方が、夢を追う人間がもつ独特のジレンマやユーモアを生々しくあぶり出していく。
自分にとって、絶対的な存在がいるということ。それは、自分の心を強くしてくれる。
こんな時、あの人だったら、どうするか? なんて言うだろう?
憧れ、敬意、葛藤、信念、挫折、愛。
この人に追いつきたいとその背を追いながら、心のどこかでは、この人にはずっと前を歩いていて欲しいと思う存在。その存在は、時に心をかき乱す。
才能って何だろう、芸って何だろうか。
 “真の笑い”を追求しながら2人の背中が揺れているのを見つめていた。
▼あらすじ
若手コンビ「スパークス」としてデビューするも、まったく芽が出ないお笑い芸人の徳永は、営業先の熱海の花火大会で4歳上の先輩芸人・神谷と出会う。神谷は、「あほんだら」というコンビで常識の枠からはみ出た漫才を披露。それに魅了され、徳永は神谷に「弟子にしてください」と申し出る。神谷はそれを了承し、「俺の伝記を書いて欲しい」と頼む。その日から徳永は神谷との日々をノートに書き綴ることに。その後徳永は、拠点を大阪から東京に移した神谷と再会。毎日のように芸の議論を交わし、神谷の同棲相手である真樹とも仲良くなり、仕事はほぼないが才能を磨き合う充実した日々を送るように。しかし、いつしか2人の間にわずかな意識の違いが生まれ始める―。
▼Information
『火花』
11月23日(木・祝)全国東宝系にてロードショー
原作:又吉直樹著「火花」(文藝春秋 刊)
監督:板尾創路
脚本:板尾創路、豊田利晃
出演:菅田将暉、桐谷健太、木村文乃、川谷修士、三浦誠己、加藤 諒、高橋 努、日野陽仁、山崎樹範
 
©2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
 
5.『gifted/ギフテッド』
恋と愛の悩ましさと素晴らしさを甘く苦く描いた『(500)日のサマー』。
センセーショナルなデビューを飾ったマーク・ウェブ監督が、今度は“家族”を描く。
ヒューマンドラマが自身の原点だと語るウェブ監督が、「映画を愛する純粋な気持ちに返りたい」と願っていた時に、めぐり会ったのがこの脚本だった。
フロリダに暮らす、ちょっと変わった2人と1匹の家族。
何気ない仕草、何気ない1日。
朝起きて、一緒にご飯を食べて、ふと同じことで笑ったりするような、ささやかな日常。
7歳の生意気ざかりのメアリーと、彼女の叔父でシングルのフランク、そして猫のフレッドの毎日は穏やかで幸せだった。
しかし、メアリーには類稀に見る才能があった。
Gifted=生まれつき著しく高度な知的能力を持つ人、またはその能力。
天から非凡な才能を与えられた1人の少女の育て方をめぐって、対立する祖母と叔父。
変わってしまう生活。変わらない絆と愛。
チャーミングな2人の掛け合いと愛おしい時間が、本当の幸せは何かを問いかける。
しかめっ面、知的な横顔、素直な笑顔、心から溢れ出す涙。
マッケナ・グレイス演じるメアリーの表情ひとつひとつが、胸をいっぱいにした。
“いちばん大切なのは、<愛する>才能”
それは、日常を剥き身の心で<愛する>ことかもしれない。
朝起きて、一緒にご飯を食べて、ふと同じことで笑った朝。
そして、そのエネルギーこそが強くて熱い、愛の力だ。
▼あらすじ
7歳の生意気ざかりのメアリーと、彼女の叔父でシングルのフランク、そして“歴史上一番すごい猫”のフレッド。互いがいるだけで、毎日が記念日のように楽しい時間は、メアリーが学校へ行くことになり揺らぎ始める。彼女には、生まれながらにして数学の天才的な才能(ギフテッド)があった。フランクはメアリーの英才教育を頑なに拒むが、そこへ縁を切ったはずのフランクの母親が現れ、彼からメアリーを奪おうとする。歴史を変える才能の開花か、愛する者と生きる人生か──果たして、メアリーにとっての本当の幸せは? 悩めるフランクには、メアリーの母である亡き姉から託された“ある秘密”があった──。
▼Information
『gifted/ギフテッド』
11月23日(木・祝) 全国ロードショー
監督:マーク・ウェブ
出演:クリス・エヴァンス、マッケナ・グレイス、リンゼイ・ダンカン、ジェニー・スレイト、オクタヴィア・スペンサー
公式サイト:http://gifted-movie.jp/
Text/Miiki Sugita
出典:She magazine

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