「泣いて笑って笑って泣ける」久本雅
美、梅垣義明、渋谷天外、藤山扇治郎
『松竹新喜劇 新秋公演』開幕!

『松竹新喜劇 新秋公演』が新橋演舞場にて​2017年9月7日より開幕した(同月24日まで上演)。この公演では、渋谷天外、藤山扇治郎をはじめとした松竹新喜劇のメンバーに加え、ワハハ本舗の久本雅美と梅垣義明も参加。開幕前日の6日(水)には、渋谷、藤山、久本、梅垣の4名が取材に応じ、夜の部で上演される『お染風邪久松留守』の稽古も公開された。
<演目>
昼の部(午前11時30分開演)
一、『新・親バカ子バカ』
二、『帰って来た男』
夜の部(午後4時30分開演)
一、『鼓(つづみ)』
二、『お染風邪久松留守』
名作喜劇と新作喜劇が、今年も新橋演舞場に
梅垣義明、久本雅美、渋谷天外、藤山扇治郎
松竹新喜劇に、ワハハ本舗の久本雅美が参加するのは今回で5回目。同じくワハハ本舗の梅垣は、今回が初めての参加となる。渋谷天外は「この2人が入り、舞台の雰囲気が異様に変わりました(笑)。自分が横で観ていたいような面白いお芝居になっております!」と自信をのぞかせる。
久本は「今回は梅垣義明という、本当にゴミみたいな男とふたりで呼んでいただきまして(笑)。『出てくれてよかった』と言っていただけるように頑張ろうと梅ちゃんと2人で励まし合っています!」と意気込みを語る。
『松竹新喜劇 新秋公演』より(公演制作 松竹株式会社)
藤山扇治郎は、『鼓』で久本と夫婦漫才コンビの役をつとめる。「すごく緊張しています! お姉さん(久本)は笑いのプロですから。本物の漫才師ですからめっちゃ緊張しています」とコメント。久本が「私は漫才師じゃないっつーの。女優やっつーの!」とツッコみ、はやくも夫婦漫才のような掛け合いで盛り上げた。
梅垣義明、久本雅美、渋谷天外、藤山扇治郎
梅垣は「昔テレビで観て憧れていた松竹新喜劇に、出演するチャンスをいただけるとは思いませんでした」と語る。ワハハ本舗では女装しての出演が多いことから「男役としてのメイクをしていただいたのは何年ぶりやろうな!」と新鮮さを楽しんでいる様子だった。『新・親バカ子バカ』では、おかまの《ユミちゃん》役をつとめることから「そっちが本来の姿です」と昼の部もアピールした。
『松竹新喜劇 新秋公演』より(公演制作 松竹株式会社)
一線も越えてないしね!?
渋谷と久本は、『お染風邪久松留守』で夫婦役を演じる。お互いの印象を聞かれ久本は、しおらしい口調で「もう、私は天外兄さんのお胸をかりて遊ばせていただくだけで……」と切り出し、「あ、遊ばせてって変な意味じゃないですよ? 一線も越えてないしね!」と満面の笑み。渋谷が「その一線だけは越えたくないわ」とこぼし、一同を爆笑させた。
会見の最後は、渋谷と久本が「こんなメンバーでやっています!」「泣いて笑って笑って泣ける素晴らしい舞台です!」と締めくくった。
『お染風邪久松留守』公開舞台稽古レポート
舞台は江戸時代の大坂。〝お染風邪〟は、今でいうインフルエンザ。貧乏長屋に暮らす大工の松吉は、お染風邪よりも借金取りが怖いと言って、巷に蔓延する〝お染風邪〟にかこつけて借金取りを欺こうとするが……。
『お染風邪久松留守』は、久本と渋谷の掛け合いが見どころ。松吉(渋谷)の家では、女房のおそめ(久本)が借金取りの対応に追われている。そこに松吉が、易者の順斉(江口直彌)と左官の熊五郎(曾我廼家寛太郎)に抱えられて帰宅。お染風邪にかかった“ふり”をしながら帰ってきたため、借金取りは驚いて退散する。
『松竹新喜劇 新秋公演』より(公演制作 松竹株式会社)
お染風邪にかかった“ふり”が上手くいったのをいいことに、一同は、松吉が死んだことにして、香典を集めようと計画を立てはじめるのだった。荒唐無稽な計画にも、素直に納得し協力する女房《おそめ》(久本)が、可笑しくも可愛らしい。
『松竹新喜劇 新秋公演』より(公演制作 松竹株式会社)
会見では、「久本さんは日本髪がよく似合っている」との話題も上がった。久本が「頭が小さくて床山さんは大変だったみたいなんですが…、松田聖子さんと同じサイズだそうです♪」と得意気に明かしたとおり、新橋演舞場の舞台に立つと本当に顔が小さい!けれど、存在感は抜群。後半に向けてテンポが上がっていく、松吉とおそめのドタバタは、笑わずにはいられない。
『松竹新喜劇 新秋公演』より(公演制作 松竹株式会社)
安定のドタバタ喜劇は職人芸
1948年に旗揚げされた松竹新喜劇は、まもなく70周年を迎える。長く受け継がれてきた脚本の世界のおおらかさは、劇団が愛され続けてきた魅力のひとつだろう。
『松竹新喜劇 新秋公演』より(公演制作 松竹株式会社)
たとえば『お染風邪久松留守』は、香典詐欺のお話だ。死んだふりをして、平気で嘘をつき、恩があるかつての奉公先を騙し、お金が手に入れば悪びれもせず両手ばなしに喜び合う主人公たち。現代の感覚だと「けしからん」「不謹慎だ」と波風が立ちかねない。しかし『お染風邪久松留守』では、なぜか笑って許せてしまう。
『松竹新喜劇 新秋公演』より(公演制作 松竹株式会社)
失敗が目に見えている計画といい、のんきなメンバーといい、怒る気になれないし、「けしからん」と思うより先に、物語はドタバタと笑いに落ちていく。コントではなくあくまでお芝居だが、同時に、あくまでも喜劇。大阪弁の柔らかさや、ベテラン俳優たちによる職人芸ともいえる絶妙なテンポ感が、年齢を問わず観る者を楽しませてくれる。笑って許す気持ちよさを味わえる『松竹新喜劇 新秋公演』は、新橋演舞場にて9月7日から24日まで上演される。
取材・文・撮影=塚田史香
公演情報

松竹新喜劇 新秋公演

■日程:2017年9月7日(木)〜9月24日(日) 昼の部:11:30~ 夜の部:16:30~
■会場:新橋演舞場
■演目
【昼の部】
一、新・親バカ子バカ 三場
二、帰って来た男 四場
【夜の部】
一、鼓(つづみ) 三場
二、お染風邪久松留守 四場
■出演:渋谷天外、藤山扇治郎、曽我廼家八十吉、曽我廼家寛太郎、曽我廼家玉太呂、江口直彌、川奈美弥生/髙田次郎、小島慶四郎、井上惠美子/久本雅美、梅垣義明/曽我廼家文童、大津嶺子 他
■公式サイト:http://www.shochiku.co.jp/shinkigeki/

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