【LUNA SEA】
スティーヴ・リリーホワイトが語る
LUNA SEA新作『CROSS』の誕生秘話

L→R INORAN(Gu)、真矢(Dr)、SUGIZO(Gu&Violin)、スティーヴ・リリーホワイト、RYUICHI(Vo)、J(Ba)

結成30周年を迎えたLUNA SEAの最新アルバム『CROSS』。この作品はU2等のプロデュースで世界的に知られる巨匠スティーヴ・リリーホワイトが初めて日本のバンドをプロデュースしたことでも話題になっている。これまで他から手を借りずに自分たちの唯一無二のオリジナルを作り上げてきたLUNA SEAがロックの真髄を知るスティーヴとともに仕事をすることで、どのような化学変化が起きたのだろうか。

ライヴを体感してプロデュースを決意

 そもそもスティーヴとLUNA SEAの出会いは、INORAN(Gu)がきっかけだった。4年前に共通の友人を介してINORANと知り合い、ふたりは意気投合。それから約2年後、今度はLUNA SEAのバンド本体から“今度30周年記念アルバムを作るので、ぜひスティーヴにプロデュースをしてもらえないか”という依頼を受けた。スティーヴは40年間プロデュースの仕事をしてきたが、日本のバンドを手掛けたことはない。一方、LUNA SEAも30年のキャリアの中でプロデューサーを起用したことがなかった。このコラボレーションは、両者の歴史にとっても初めてのチャレンジとなった。

 プロデュース前にLUNA SEAの音楽を聴いて、スティーヴはどのような印象を持ったのだろうか?

「最初にCDを聴きましたが、やはりCDだけではバンドの全ては分かりません。CDはあくまでも他の人のビジョンで作られたものですから。僕はバンドの真髄・本質といったものを知るためには、ライヴを観なくてはいけないという想いがあるんです」

 中でもCDを聴いた時に気になったのは、RYUICHI(Vo)のヴォーカルが自分のプロデュースに合っているかということだったという。

「もちろん彼は素晴らしいシンガーですが、CDだけでは自分の方法と果たして合っているのか分からなくて。アルバムを作る上で、特にこういう歌モノはヴォーカルがすごく大事ですから」

 しかし、その懸念はライヴを観たことによって見事に払拭された。

「この声だったら自分が加わることで、さらに良く聴かせることができると確信しました。ぜひ私のプロデュースでやってみたいと、その時に思ったんです」

制作で掲げた4つのビジョン

 スティーヴはメンバーとの話し合いで、ニューアルバム制作について4つのビジョンを考えたという。

「ひとつ目は“エナジー”。LUNA SEAのライヴを観た時、エナジーにあふれた盛り上がる曲でお客さんが非常に楽しそうにしているのを目の当たりにして、このエナジーをそのままアルバムに閉じ込めたいと感じたんです。そして、もっと若い世代に彼らのエナジーを教えてあげてほしいという気持ちになりました。ふたつ目は“メロディー”。このバンドにとってメロディーは非常に重要で、特にRYUICHIは決してシャウトするようなロック系のシンガーではなく、どちらかと言うとバラード系が得意で、素晴らしいメロディーを奏でます。3番目は現代を意識した“モダンなサウンド”。そして、最後は“オールドスクール”…つまり、彼らが築き上げてきたスタイルのことです。モダンなサウンドを取り入れつつも、LUNA SEAがこれまで培ってきた、彼ら独特のエッセンスを失ってはいけない。これは私のビジョンだったのですが、メンバーとも共有できたと思います」

 LUNA SEAはこれまで自分たちで自らの音を育ててきた。そんな彼らのサウンドに対し、スティーヴはどのような考えを持って関わったのだろうか。

「彼らはテクニック面では申し分ないので、演奏に関してこちらから何かを言うことはありません。そうではなくて、別のアプローチで良くすることができるはずだと思ったのです。例えばドラムだったら、ドラムの叩き方というよりも空間の使い方でもっと広がりのある音にするとか。ヴォーカルはいかに全体のミックスの中でしっくりおさまるかとか。そういうことを模索して、音楽全体のクオリティーを上げていくというスタンスで取り組みました」

 もともと音に対するこだわりが強いLUNA SEA。そこにスティーヴの手が加わることによって、サウンドがさらに立体的に聴こえる。最初にこの『CROSS』を聴いた時は五感が刺激されて、風景が見えるだけでなく、手触り感や匂いといったものまで心に浮かんでくるようだった。改めて音が生み出す力のすごさを感じさせられた。

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