【LUNA SEA】
スティーヴ・リリーホワイトが語る
LUNA SEA新作『CROSS』の誕生秘話
若い世代に彼らのエナジーを伝えたい
「それぞれ個性があって、作っている曲はロックなんだけれど、スタイルが大きく違います。まずJ(Ba)はアメリカンロックポップ。INORANはイギリスのインディーロックっぽい感じで、U2や80年代のUKものを少し彷彿させる。SUGIZO(Gu)はプログレッシブで非常に複雑な音楽。でも、ちゃんとメロディーもある。この3人の個性あるソングライターたちが書いた曲をフランク・シナトラ的なRYUICHIが歌うと、本当にスペシャルなLUNA SEAの音楽になるんです」
アルバムは始まりに相応しい、光に満ちた「LUCA」でスタートする。スティーヴはこの曲のアプローチを花が咲く様子に例えた。
「最初は蕾だったものが徐々に開いて大きくなっていく。盛り上がってマーチングバンド、ドラムが入っていたりして、最後ワーッと盛り上がっていく。この出来には満足しています」
2曲目は「LUCA」の煌めきを引き継ぎつつドラマチックな「PHILIA」。
「原曲はSUGIZOなのでプログレッシブですけど、すごくエナジーがある。パワーとエナジーを感じられる曲を特に前のほうに持っていきたかったんです。やはり若い人たちに“この年齢になっても、まだこれだけエナジーを出せるんだぞ”といったことを知ってほしかったので。「PHILIA」はとてもドライヴ感のある曲ですが、これに限らず、アルバム全体にドライヴ感がある。車を運転している時に聴くには、非常に打って付けなアルバムではないでしょうか」
次の「Closer」はJが作曲を手掛けた。火花が散るような熱いサウンドが炸裂する。
「INORAN、SUGIZO、Jと続く中、全部違うんだけれど、そこにはエナジーのこもった曲という共通点がある。「Closer」は楽曲的にはシンプルではありますが、非常にライヴ映えのする曲で、特にロックキッズたちの心に響くのではないかと思います」
曲順についてもスティーヴはメンバーと意見を交換し合った。
「最初バンドが“こういう曲順で”と提示してきたんです。私がこの順番でいいなと思ったのは、1曲目(「LUCA」)と最後の曲(「so tender…」)の選択。最初からこうなっていたんですよ。その間の曲順はいろいろ変えましたけれど」
メンバーのインタビューでは“スティーヴはすこちらの意見をすごく聴いてくれる”と、バンド側の意思をとても尊重していたことを語っている。
「最初から“やり取りはこうしよう”という取り決めがあったわけではなく、自然なかたちで始まりました。おそらくそれは信頼関係があったからだと感じているんです。バンドのほうも何でも私の言うことを聞くというスタンスではなかったですし。本当の意味でコラボレーションできた。いつもだったらLUNA SEAのメンバー5人でやっているところを、今回は私が加わって、まさに6人で作ったアルバムだと言えると思います」
5曲目の「You’re knocking at my door」は、それぞれのサウンドが自由に暴れ回りながらも不思議と調和が取れているのが印象的だ。
「実はこの曲はとても難しく大変でした。やり方によっては耳障りな曲になってしまっていたかもしれなくて。あくまでも耳にやさしくしたかったのですが、そちらにばかり気を取られると、今度はパワーが失われてしまう。そのバランスの一番いいところを目指して、試行錯誤を重ねました。この曲に限らず、全般的にINORANの曲は難しかったです(笑)。逆にSUGIZOは最初からきっちり作り上げられているので比較的スムーズでした」
ちなみにスティーヴはアーティストにニックネームをつけるのが得意だそうで、SUGIZOのことは“本当に細かいことにこだわりを持つ人”という意味で“Mr.detail”と呼んでいたそうだ。ちなみにINORANは“Mr. Rock 'n' Roll”とのこと。
「SUGIZOはすごくテクニカルである一方、INORANは本当にフィーリングに長けています。それぞれ違った個性の持ち主であるのがいいですよね」
メンバーはもう1度恋に落ちたと思う
「過去に他のミュージシャンのレコーディングでやったことがあって、それを提案しました。本当に真矢のドラムは素晴らしくて。ビートの組み方が創意工夫に富んでいて、子供が叩いているような非常にエキサイティングな感じがして。私自身とても満足していますし、真矢も“満足した”と言っていたので良かったと思います」
7曲目の「anagram」はミドルテンポのナンバーで、《幽玄の時は》《雅な風》といった歌詞が入っていて、どこか和の匂いも感じる。
「もともとはRYUICHIが作って、そのデモをSUGIZOに渡し、そこに彼のアイデアを加えたんです。ただ私はRYUICHIのバージョンが好きだったので、仕上がったものもそれに近いかたちにしました。これはおだやかで少しデヴィッド・ボウイを彷彿させる。アルバムの中間点でホッとさせる役割を担っていると思います」
アルバム後半は“いかにもJっぽくて、いい曲ですよね。かなりライヴ向けじゃないですか”とスティーヴも太鼓判を押す、ポジティブなエネルギーが込められた「Pulse」、そして「静寂」と続く。「静寂」は重厚かつ幻想的な曲で、LUNA SEAらしさが詰め込まれている。
「本当にSUGIZOの最高の部分が詰まった曲だと思います。SUGIZOは本人も言っていますが、曲を作る時にオーケストラのパーツを作るように曲を作っていく。私自身は「静寂」がアルバム最後の曲でもいいかなと。アルバムを締め括るに相応しいような曲だと思いました」
実は今までのLUNA SEAのアルバムのイメージだと、こういった重厚な曲は中盤に来るような気がした。だが、スティーヴの“この曲が最後でも良かった”という視点が加わったおかげで、従来とは違った場所に配置され、新たな魅力が引き出されたように感じる。
そして、11曲目は切なさが漂いながらもやさしく包み込む「so tender…」。
「ウワー!という感じで前の「静寂」が終わり、そのあとにそっと入っていて。聴いた時にしみじみと“これはいいアルバムだったな”と余韻に浸れるような曲ではないでしょうか。「so tender…」を最後に持ってくるというのはバンドのアイデアだったんですけれど、これはこれでとてもいいと思います」
スティーヴはLUNA SEAとの仕事は、お互いに“スペシャルなものを作りたい”という想いを共有でき、ハッピーで真剣に取り組めたと語る。
「私が今回手掛けたことによって、LUNA SEAはメンバーお互いがまた恋に落ちたと思うんです。私はバンドと結婚生活はすごく似たところがあると感じていて。LUNA SEAは30年もやってきたバンドです。そこまで長くやっていると、やはり少し心が離れたりすることがある。だけど、LUNA SEAの5人は人生の半分以上、ともに過ごしてきた仲じゃないですか。“自分たちはやっぱりお互いが本当に大好きなんだよ”ということを改めて再認識してもらうことができたのは、自分がいたからじゃないかなと自負していて(笑)。それによって、また新しいバンドのLUNA SEAが生まれたんじゃないかと思うんです」
“メンバー同士だけでなく、長年聴いてきたリスナーも改めて恋に落ちると思います”と話したところ、スティーヴは大いに喜びながら、茶目っ気たっぷりにこう付け加えてくれた。
「今までLUNA SEAを知らなかった若い世代の子たちも、新たに恋に落ちるんじゃないかな。だって、彼らの心はみんな若いからね!」
取材:キャベトンコ
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