水瀬いのり

水瀬いのり

【水瀬いのり インタビュー】
ライヴが出来上がっていく過程や
何かを集めていく過程を観てもらう

みんなの声出しで
やっと「僕らは今」が完成

観どころについて伺っていきますが、1曲目の「スクラップアート」はまるでMVを再現したような映像ですごかったです。まさか1曲目にやるとは思っていなかったし。

今思うと、歌詞の歌い出しが《どうしてここにいるの?》ですからね。いきなりファンのみなさんに問うという。きっとみんな“会いたかったからですが…”と思ったと思いますけど(笑)、今までと違う切り口でスタートできました。ステージセットも何かモチーフとなるようなオブジェもなく、ボックスがあってそれがせり出したり壁に戻ったりするだけで、巨大なLEDビジョンに映し出される映像で世界観を切り替えていくかたちでした。床もミラーシートを張っていてライトが反射したりビジョンの映像が映るようになっていて、舞台上もまさしく“スクラップアート”というテーマを意識したものになっていました。一見無機質ですけど、“これってどうなっているの?”と客席から観ると不思議に映る演出ばかりなので、今回の映像作品で観ていただくとカラクリがちょっと分かると思います。

「アイオライト」では紗幕に映像を投影して操り人形のようになっていて、ハイチェアーに腰をかけてパフォーマンスをされていました。映像とのシンクロは、すごく練習されたんでしょうね。

実は映像とのシンクロまでは意識していなくて、偶然そう観えたらいいなくらいだったんですけど、他の公演でやったことがたまたま映像にハマって、“ここでこう動くとエモいかも!?”という感じで取り入れました。なので最初から細かく振り付けが決まっていたわけではなかったんです。

そうだったんですね。そういうツアーで成長した部分や気づいたことはありましたか?

私、音の反響とかがあまり得意ではなくて、なるべくステージの後ろにいたほうが音の反響が少なくて歌いやすいんです。そうすると客席との距離がすごく離れてしまうから、なるべく前に出るように意識していたんですが、それもツアーを通して気づいたことでした。地面の反響とか会場の壁の反響を受けると歌いづらくなるので、会場ごとに音響チームのみなさんに相談して対応してもらっていました。だから、「アイオライト」の時みたいに高いところで歌うほうが、実は歌いやすかったりするんです。特に初日はすごく大きな会場で、リハーサルスタジオとはまったく環境が違うから戸惑いました。

ライヴではイヤモニが必需品だと思いますが、最初のライヴからずっと同じものを使っているのですか?

何度も耳の型を取り直して新しくしています。でも、私の耳は小さいので、歌っている間に浮いてきちゃうんですよ。その対応策として、耳に入れる部分に絆創膏みたいなものを巻いて浮かないようにして使っています。他のアーティストさんで可愛くキラキラにカスタマイズされているのを見ることもありますけど、私のイヤモニってテープがグルグル巻いてある地味なベージュで可愛くないんですよ。でも、それが縁の下の力持ちになってくれています。

以前ライヴの時の楽屋の差し入れが、お名前にちなんでお稲荷さんだったという話を聞きましたが、横浜の時は何でしたか?

横浜名物の全部セットみたいなものでした(笑)。崎陽軒のシウマイとか横濱ハーバーとか、サンマー麺のカップ麺を食べました。各地でご当地ものをケータリングで用意してくださって、北九州では自分で湯切りをしてゴボウ天うどんを食べましたね。温かいものを置いてくださっているのが、とてもありがたかったです。さっき話したみたいに、本番前は手足が冷えちゃうので(笑)。あと、ツアー後に打ち上げもできました。打ち上げをしたのは、2019年の『Inori Minase LIVE TOUR Catch the Rainbow!』以来で、バンマスのミッチー(島本道太郎の愛称)さんの中では私は24歳で止まっていて、“もう27歳ですよ”と言ったらすごく驚いていて(笑)。そういう楽しい打ち上げができたことも思い出になったツアーでした。

ライヴの観どころの話に戻りまして、“WWW”シリーズの3曲(「Well Wishing Word」「While We Walk」「Winter Wonder Wander」)を連続で歌ったゾーンは絵本の世界に入り込んだようで素敵でしたね。

ありがとうございます。演出的にも3曲でプリセットされたゾーンで、初めて「Winter Wonder Wander」を歌わせていただいた時は、まさか三部作になるとは思っていなくて、それがこういうかたちで披露できたことは感慨深かったです。本当に“この世界観が好きだなぁ”と思える夢のような時間で、私自身もその世界に入り込んで童話の主人公になることができました。アツいライヴもいいけど、みんなと同じ歩幅で歩いていると思える時でもあって、すごく心地良い時間でしたね。

本編最後の「僕らは今」も胸がアツくなりました。

MVでは目の前にお客さんがいることを想像して歌っていたので、それが実際にお客さんがいて、声出しもできた「僕らは今」になりました。曲を作っていた時はコロナ禍を想定していたわけではなく、偶然コロナ禍の想いに重なる曲になりましたけど、一緒にドラマを重ねてきた曲なので、改めて満員のみなさんとひとつになれて、やっと「僕らは今」が完成したというか。これが観たかったし、これが聴きたかった。足りなかったピースをみんなから集めて、やっと完成したのが嬉しかったです。みんなもそれに応えてくれて、その熱とか表情をすごく感じました。コロナ禍で声出しができていなかった曲がまだまだたくさんあるので、それらもいつかみんなと一緒に完成させたいですね。

衣装も6パターンで、ダメージデニムっぽいものはすごく似合っていました。

あれは可愛かったですね。友達の大西沙織ちゃんも一番似合っていたと言ってくれて、すごく評判が良かったです。ぴーちゃん(赤尾ひかるの愛称)は“WWW”ゾーンで着た赤いメルヘンな衣装と、そのゾーンが好きって言っていました。ぴーちゃんは小説や物語を読むのも好きなので、物語が進んでいく感じにワクワクしたって。

このBlu-rayでしか観られない映像も満載ですね。

ライヴは後日に配信もあったのですが、Blu-rayでは配信の映像とは別カットを使っているので、配信で観てくださった方でも楽しんでいただけるものになっています。あと、特典映像として「Making of SCRAP ART」と「幕間Short Movie(全会場分)」が収録されています。「Making of SCRAP ART」にはリハーサルの映像や打ち上げは入っていませんけど、ご当地の差し入れを食べているシーンとかも収録していて観どころが満載だと思います。

「幕間Short Movie」では各回でアート作品制作にチャレンジしました。横浜では“いのりマーメイド”の絵を完成させていましたね。

はい。思っていたのとちょっと違って心が折れかけましたけど(笑)、深海にいるとかいないとか言われている伝説の“いのりマーメイド”の絵を完成させることができました。他にもいろいろ作ったので、素晴らしい作品の数々をぜひ観ていただきたいです(笑)。自分もアートをやってみたいと思ってもらえたら嬉しいです。

春休みにでもじっくり細部まで観てほしいですね。

発売される3月はもうすぐ新生活が始まる時期でもありますし、環境によってこのライヴや『SCRAP ART』に込められたものも違って感じられると思うので何度でも観てほしいですね。これを観て、“またライヴに行きたいな”と思ってもらえたら嬉しいです!

取材:榑林史章

Blu-ray『Inori Minase LIVE TOUR SCRAP ART』2024年3月6日発売 KING RECORDS
    • KIXM-578〜9
    • ¥8,800(税込)

ライヴ情報

★ 2024年ライブツアーの開催が決定!
9/15(日) 兵庫・ワールド記念ホール
9/21(土) 広島・上野学園ホール
10/05(土) 愛知・名古屋国際会議場 センチュリーホール
10/12(土) 福岡・福岡サンパレス ホテル&ホール
10/19(土) 北海道・カナモトホール(札幌市民ホール)
11/02(土) 千葉・LaLa arena TOKYO-BAY
11/03(日) 千葉・LaLa arena TOKYO-BAY

水瀬いのり プロフィール

ミナセイノリ:2010年に『世紀末オカルト学院』(岡本あかり役)で声優デビュー。中学⽣の時、オーディション『アニストテレス』に参加し、第1回⽬のグランプリを受賞。その後、2010年にTVアニメ『世紀末オカルト学院』(岡本あかり役)で声優デビューを果たす。2013年に出演したTVアニメ『恋愛ラボ』をきっかけに演技⼒の⾼さや役幅の広さが⾼く評価されるようになり、10代にして話題作のメインヒロイン役に次々と抜擢されるようになる。そして、キャラクターソングやアニメ・ゲームイベントでのパフォーマンスで、ジャンルを選ばずあらゆる楽曲を歌いこなす歌唱⼒が多くのアニメ/声優ファンを魅了し、歌⼿としての活動にも⼤きな期待が寄せられていた中、15年12⽉2⽇、⼆⼗歳の誕⽣⽇を迎えた記念すべき⽇に、シングル「夢のつぼみ」で待望の歌⼿デビューを果たす。日本武道館、横浜アリーナ、ぴあアリーナMMなどアリーナクラスの大会場で単独公演を成功させ、音楽活動の面でも常に大きな注目が寄せられている。水瀬いのり オフィシャルHP

「Million Futures」ライブ映像
(Inori Minase LIVE TOUR SCRAP ART)

「スクラップアート」ライブ映像
(Inori Minase LIVE TOUR SCRAP ART)

「Winter Wonder Wander」ライブ映像
(Inori Minase LIVE TOUR SCRAP ART)

「運命の赤い糸」ライブ映像
(Inori Minase LIVE TOUR SCRAP ART)

『Inori Minase LIVE TOUR SCRAP ART』
ダイジェスト

OKMusic編集部

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