藤田千章

藤田千章

【藤田千章 インタビュー】
“多次元的”な音楽の
愉しみを味わえる
ソロ第2作を味わい尽くせ!

時代の気分として、ある程度、
感情を抑えて聴こえたほうがリアル!?

もうひとつ気になったというか、印象的だったのは、2曲の歌モノのヴォーカルにはどちらもイコライジングというか、手を加えていますよね?

そうですね。

音楽の要素の中で、人間の声こそがヒューマンな要素の代表みたいなところがあると思うんですけれども…

そうだと思いますよ。

その扱い方が今回のような扱い方だった時に、じゃあ音楽全体がすごく人工的なものになるかというと、むしろ逆の場合もあるというか、歌詞で歌われている、すごく微妙な感情がそういうかたちで届けられたことで、人間関係の機微みたいなものがいっそう浮き彫りになるんだなと感じたんですが、そこは意図されていたことでしょうか?

そんなふうに聴こえたとしたら、それはとても嬉しいことなんですけど、それは歌ってくれている彼らの解釈が素晴らしいということがひとつあるとは思うんです。僕自身は加工はしているけど、生声も分かるっていう程度を目指していたりするので。完全な、流れるようなピッチ合わせとか、そういうエディットはしていないです。エディットしたのはサウンドのアレンジメント的なことだけだったりするので、仰ってくださったような感じが残ったのかもしれないとは想像します。ただそれは、僕が主だって意図しているところではないですね。僕が意図していたことは、時代の気分として有機物感っていうか、人間的な部分が伝わるより、むしろある程度、感情を抑えて聴こえたほうがリアルが増すというか…。

なるほど!

それは時代の気分だと思いますけど、そんな時代なんじゃないかなっていう…時代感に対する僕の個人的解釈ですね。フィジカルな要素をすごく押し出して物事を表現するっていうのは、例えばライヴやパフォーマンスはもちろんそういう熱量みたいなものがすごく重要だとは思うんですけど、こと創作物に関しては感情的な部分に人工的な要素を混ぜることで、つまり感情部分を抑えることによって、反動で人間味が強く浮き出ることがあるように思うんです。逆に言葉が乱暴でも、それが柔らかく…というか妙に面白おかしく聴こえたりしますよね。それと似たような話で、例えば2曲目「multidimensional」というタイトルチューンは西村智彦がギターを弾いてくれてますが、やっぱり西村くんってすごく上手なので。

そうですね。

音色も素晴らしいし。僕らSing Like Talking の音楽表現…フィジカルというか、ヒューマンというか、すごくエモーショナルな、でもグルービーなそういうプレイじゃないですか。それが、あのメカニカルな…リズム・セクションは更にメカニカルな構造にしてあって、なおかつ淡々と曲は進んでいくわけですよね。アンサンブル的にさっき言っていた要素、ちょっと厚くしてみたり、ちょっと動きを入れてみたりとかはしていますけど。それにしても、そのメカニカルなトラックとの対比が、西村くんの弾いてるギターをより感情的に聴かせるような気がします。その矛盾が、僕にとっての“multidimensional”なんですね。

最後に、今後のことも聞かせてください。1枚目を作った時にはもう次のことを考えていたというお話が最初にありましたが、こうして2枚目が出来上がりました。今の時点では、次に向けてどんなことを考え、どんな気持ちでいますか。

実は、もう次のものに取り掛かっていたりするんですよ。それが出来上がるのがいつになるのかは分からないですけど。でも、ある程度の曲数が溜まったら、どんなかたちにせよ…デジタルになるのか、それともフィジカルなのか、分からないですが、また出したいと思っていますので、それはやっていこうとは思っています。

取材:兼田達矢

アルバム『multidimensional』2024年2月28日発売
    • 【CD+MUSIC CARD】
    • POCE-12206/¥4,000(税込)
    •  
    • 発売:ユニバーサル ミュージック アーティスツ合同会社
    • 販売:ユニバーサル ミュージック合同会社
    •  
    • ◎ストリーミング&ダウンロード
    • https://umj.lnk.to/multidimensional
SING LIKE TALKING プロフィール

シングライクトーキング:1988年にシングル「Dancin' With Your Lies」でデビュー。ロックやソウル、ファンク、AORのエッセンスが漂うポップスが魅力で、メンバーはソロ活動も行なっている。2015年より2018年のデビュー30周年に向けた“カウントアップ・スペシャルライヴ”企画を展開。デビュー35 周年となる23年には、9月に多数のゲストを迎えて『Sing Like Talking 35th Anniversary "FRIENDS!"』を、東京と大阪で『Sing Like Talking 35th Anniversary "OFF THE CHAIN"』を開催し、35 周年記念EP『Blue Birds』をリリース。SING LIKE TALKING オフィシャルHP

【Chill Beats】「multidimensional」

『multidimensional』
アルバムダイジェスト

OKMusic編集部

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